あらすじ
アリストテレスは人をバカにしまくる嫌なヤツだった! おもしろ逸話を入口に、気づけばその哲学者を深く学べてしまう、日本初の哲学YouTuberによる画期的入門書。「逸話とはその哲学者の象徴」という考えをもとに、ソクラテス、プラトンをはじめとする31人の古代ギリシア哲学を案内する。
【目次】
第Ⅰ章 哲学は逸話から始まった
タレス――「万物の根源は水」がなぜ知を愛する生き方なのか
アナクシマンドロス――無限な自然と子どもたち
アナクシメネス――小馬鹿にされた「空気」の原理
第Ⅱ章 哲学とは博識になることなのか
ピュタゴラス――なぜ数の探究が生き方を変えるのか
クセノパネス――逆張り放浪冷笑詩人
ヘラクレイトス――博識は「まやかし」、知は「ただ一つ」
第Ⅲ章 哲学が真理となった時代
パルメニデス――「ある」と「ない」の区別で生まれる倫理
ゼノン――パラドックスと政治闘争の深い関係
メリッソス――敗軍の将が語る永遠不変の「ある」
第Ⅳ章 自然探究から生まれた高貴な生き方
エンペドクレス――神を自認する史上唯一の哲学者
アナクサゴラス――忘れ去られた生き方の理想
レウキッポスとデモクリトス――「ないもある」の原子論
第Ⅴ章 ソフィストたちの跳梁跋扈
プロタゴラス――人間尺度説の真の恐ろしさ
ゴルギアス――弁論術は最高の人間支配術である
ヒッピアス――自慢話の裏に潜む、誠実な知的生き方
第Ⅵ章 哲学とは何か、ついに答えが出る!
ソクラテス――お金を受け取らないことが哲学者の生き方か
プラトン――哲人王だけが人類の不幸を止められる
アリストテレス――隙あらば他人を貶す万学の祖
第Ⅶ章 真正面から生き方を語った哲学
ストア派(ゼノン・クレアンテス・クリュシッポス)――「不動心」の真の意味を教えよう
ピュロンとティモン――懐疑主義はもっとも高潔な生き方である
エピクロス――いかにして苦痛と死を受け入れるか
コラム ピュタゴラス派とヘラクレイトス派
コラム キュニコス派 犬の生活と呼ばれた哲学者たち
おわりに 哲学との付き合い方
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
本書は読んだらすぐに面白さが伝わる本である。哲学書って難しそう、哲学者って気難しい人たちなんだろうな、そんなことを思う人にこそ手に取ってほしい一冊である。確かに、哲学者たちは気難しい。けれども本書の哲学者たちの考え(教説)をその生きざま(逸話)から読み解くというスタイルは、実に生き生きとどんな人たちがどんなことを考えたのかを、手短にかつ面白く伝えてくれるものである。ひょっとすると無味乾燥に思われてしまう断片集が、哲学者の生きざまを集めた人類の宝であるとさえ思わせてくれる本である。
ディオゲネス・ラエルティオスの『ギリシア哲学者列伝』には噂話のような逸話がたくさん描かれている。ともすれば哲学的な深みがないのではないかと思われてしまう哲学者列伝が近年哲学研究の資料としても見直されつつあることは納富信留氏の『ギリシア哲学史』からも感じ取れることである。今回の著者の『ゆる古代ギリシア哲学入門』にも書かれているように、哲学者列伝はエピクロスの教説に関しては第一級の資料でさえある。本書はその哲学者列伝の特に面白い箇所を通して哲学者たちの息遣いを感じさせてくれるものである。
本書を手にとってまず感じたのは面白さを伝えるだけでなく、資料を読み解こうとする読者への細やかな配慮である。それぞれの哲学者にまつわる印象的な証言を短い紙幅で次々に取り上げながらも実に生き生きと描き出す力技には脱帽した。本書はゆるっとサクッと読めるにもかかわらず、それぞれの原典が読者にとって身近に感じられるようにさせてくれるものである。中でも印象的だったのはアナクシメネスの空気についての箇所で、思わず本棚からカーク/レイヴンの『ソクラテス以前の哲学者たち』を引っ張り出して原文を確かめてしまった。また、ピュタゴラスの箇所では、「え?ひょっとして、ピュタゴラスってプラトン主義者なんじゃないの?」みたいなアナクロニスムを感じてしまうほどの思想的近さを考えたり、口内炎をきっかけに死を選んだクレアンテスなどなど、思いがけず学説上も深く考えさせてくれたり、哲学者を身近に(あるいは遠く?)感じさせる小話がちりばめられている。
プラトン自身の紹介のページ数は少ないものの、古代ギリシア哲学入門にふさわしく、プラトン著作の引用は豊富である。何を隠そう人間尺度説を唱えたプロタゴラスの教説はプラトンに基づいているのだから、ソクラテスの前に連なるソフィストたちの証言の大半はプラトン著作からということになる。ただ、プラトンを実際に読むと、プロタゴラスの人間尺度説が『テアイテトス』に書いてあったりと著作をまたぐことが往々にしてある。そうしたソフィストたちの鋭い問いかけを彩り豊かなキャラクターたちとのやり取りのなかで浮き彫りにすることで、プラトンが数々の著作を通して何を表現していたのかが生き生きと再現されていることもまた、本書を稀有な入門書にしている。
本書は、その叙述を通しておのずと読者はどの著作のどんな箇所にどんなことが書かれているのかを案内されてしまう、実に心憎い一冊である。本書は多分に余白を含んだ古代哲学を実に生き生きとした人物描写を通して身近に感じさせてくれる骨太な古代ギリシア哲学入門である。ぜひ手に取って読んでみて、その面白さを確かめてほしい一冊である。
Posted by ブクログ
古代ギリシアの哲学者を逸話を元に語る本。哲学者を知る上でその人の生き方を知ることは非常に本質的なことであることが深く理解できる。
哲学史ではあまり語られない哲学者も紹介され、大変興味深かった。大変面白い本で、列伝なども読んで見たくなった。
哲学に興味がある方に強くおすすめします。
Posted by ブクログ
哲学者の逸話を通して彼らの生き様=哲学を解説するというコンセプトの本。逸話のとっつきやすさとともに、著者の熱がある文章で読んでいて楽しく、わかりやすい!古代の哲学者たちは自分の哲学を体現する生き方を旨としていたというだけあって、真偽のよく分からない逸話と言えど著者がひも解いていくと意外に深く、哲学者の思想の底へと潜っていく。
逸話自体は読んだことのあるものが多かったが、そこから導き出される生き様と哲学は新鮮で読んでいて飽きなかった。壮絶な死にざまのヘラクレイトスやエレアのゼノン、逸話と生き方、哲学との接点がたくさんあるヘレニズム哲学の面々などが面白い。あと、古代ギリシアの徳/悪徳をカッコいい/ダサいで説明するのはすごくしっくりきた(笑)。YouTubeは普段見ないんだけど、著者のチャンネルもちょっと見てみたいなあ。