【感想・ネタバレ】叢書パルマコン・ミクロス10 〈ていねいな暮らし〉の系譜 花森安治とあこがれの社会史のレビュー

あらすじ

羨望と同時に嫉妬をもかきたてる〈ていねいな暮らし〉は、現代日本特有の文化なのだろうか。あるいは近代化におけるリスペクタビリティや現代のSDGsなどと比較される普遍的・世界的な傾向なのだろうか。戦前戦後と一貫した美意識をもち『暮しの手帖』を創刊した花森安治の足跡から、松浦弥太郎や無印良品の中華圏における流行、コロナ禍における生活スタイルの見直しまで、連綿と続く〈暮らし〉へのあこがれの社会史を追う。

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Posted by ブクログ

「ていねいな暮らし」に少しあこがれて、でも少し経ったら「なんだそれ」って思いだしたこの気持ちはなんだろうと思って手にとった。読んでよかった。

花森安治という人間はこの本読むまで知らなくて、どちらかというと「ていねいな暮らし」のキーワードからこの本を読んでみた。コロナ禍もあって「ていねいな暮らし」がやたら目に入ったし、一つ一つに時間をかけることがなんかいいなと感じたけど、自分が続くわけないよなと思ったし、また「ズボラ〇〇」「雑に生きてる」といった、ていねいな暮らしの逆張りみたいなブームもSNSでみてたこともあって。
想像してた以上にボリューミーで、範囲が広くて、ここ120年くらい日本(や世界)がどう動いてきたか書かれていて、教科書に載ってるような文豪や芸術家がでてきたり、「昭和のくらしとは」「神戸の気質とは」「大田区の歴史とは」みたいなものも書かれていて、一見「脱線しすぎ」と感じそうだけど、実はタイトルどおりの中身で脱線しているわけではなくて。勉強になったし人物から土地の歴史を学ぶことってこんなにおもしろいんだなと気づくことができた。

「ていねいな暮らし」が終着点(目的化している)ということに嫌悪感があったのか。答えはまだ曖昧だけど、考えるヒントにはなった!

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2025年09月18日

Posted by ブクログ

「暮らし」の本かと思って手にしたけれど、読んでみると、全編、花森安治研究(?)という印象の本でした。
(タイトル字体や表紙絵から、察して当然、だったのかも、ですが。)
あらためて、花森安治という人を通して『暮らしの手帖』という雑誌やそれが多くの人に読まれた時代背景を知ったので、暮らしの本というより、一つの昭和史として読む本かなー?という印象。。。

P104
(1978年生まれの市川慎子(のりこ)氏の『高級で上品な(ものを志向しがちな)奥様は「ミセス」で、堅実で現実的な(ものを志向しがちな)おかあさんは「暮らしの手帖」といったかんじだろうか』という一文と出会って)若い世代には筆者と全く異なる印象があったか、と虚をつかれた。『暮らしの手帖』が「山の手」テイストの雑誌であることは、筆者には自明すぎたため、その点の検証を怠っていたのだ。

私も(『ミセス』との比較はよくわからないけれど、『暮らしの手帖』に関しては)市川氏と同じように、読むのは堅実で現実的な人なんだろうなという感覚で、一定年齢(筆者の身近な調査では1950年代以前生まれ世代)以上の方にとっては全く違うイメージなのだ、いうことに、筆者とは逆方向でとても驚きました。
筆者は、市川氏が『暮らしの手帖』文化の「中の人」だから、『ミセス』の方が「高級で上品」と奥ゆかしくも譲ったのではないだろうか、と書いているけれど、いえいえ、奥ゆかしいとかでなく、今となっては(1960年代以降生まれ世代にとっては?)、素直なイメージだと思います(苦笑)。



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2025年09月20日

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