あらすじ
「教場」映画プロジェクト原作!最新刊!
第一話 会意のトンネル
郷村秀初は、体格に優れた14歳年上の同期、岩国禾刀に何かと助けられていた。岩国は、郷村の母の中学時代の後輩だという。
第二話 不作為の鏡
成瀬幹人は、醜形恐怖症のため、一度鏡を見てしまうと離れられなくなる。招集に遅れることも多く、連帯責任を取らされる同班の若浦と宝条から苦情を言われていた。
第三話 遺恨の経路
木下百葉は、同じ教場の真鍋辰貴と交際している。真鍋は一月前まで同期の洞口亜早紀と付き合っていた。真鍋と百葉はクリスマスに会う約束をしているが、その前に犯罪捜査のペーパーテストがある。
第四話 犯意の影法師
南郷玲司と来栖研心は「警察学校生研究発表会」の予選にT県警代表として出場することになった。全国大会に進めれば卒配後はAランクの署に配属される。
第五話 黒白の極性
細沼理仁は、パチンコに大ハマりして同期に借金までしてしまった。軍資金を吐き出した土曜、ひったくり事件に遭遇する。
第六話 金盞花の迷い
卒業式が近づき警察学校では総代争いが激化していた。追掛冬和子はそのトップを走っているが、ライバルで新聞ベタ記事マニアの戌塚に図書室へ呼び出される。
(底本 2025年8月発売作品)
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Posted by ブクログ
長岡弘樹さんの『教場』シリーズ、まだ続くようである。前作同様、帯にでかでかと木村拓哉の名前があるのはともかく、オーソドックスというか、シリーズ初期に原点回帰したような印象を受ける。
第一話「会意のトンネル」。同期入校してきたある2人の、知られざる関係とは。何だか無理矢理な感があるが、こんな凝ったメッセージに風間はしっかり気づいた。同期に詮索好きがいなければ、とは思うが、彼は退校だけでは済むまい。
第二話「不作為の鏡」。精神疾患により、鏡の前から離れられないという学生。ある同期が、彼のサポートを申し出た。その裏にある真の目的とは。純粋な正義感のみで入校してくる者ばかりではない現実。風間には見抜かれたが。
第三話「遺恨の経路」。連帯責任で同期全員がクリスマスに外出禁止とされ、恨みを買った女子学生。一見理不尽な風間の真意とは。こういう内容を女子学生に向かって淡々と話す風間と、彼が見抜いた企みに苦笑せざるを得ない。
第四話「黒白の極性」。警察官がパチンコをしても違法ではない。だが、ほどほどで済ませる客などいないのでは? 同期に借金をするほど困っていた彼。こんな機会に遭わなかったとしても、いずれ破滅していただろう。
第五話「犯意の影法師」。研究発表会の全国大会を控えた、成績優秀な2人。その関係性の歪みとは。こういう趣味の同期が偶然いたため、こんな手段を思いついた。彼のこの趣味は、警察官として武器になりそうな気がする。
第六話「金盞花の迷い」。この期にも卒業が迫ってきた。総代の座を争う成績優秀な女子学生に、ライバルの男子学生が囁いた。彼女のそもそもの志望理由とは。一見稚拙な、入校時の抱負の意味とは。風間が情で裁く珍しいパターンか。
風間を狙う脅威は前作までで去ったはずだが、エピローグによると、まだまだ難題は多い。法廷まで続く、長い長い戦いに、風間が関与することはない。門下生たちが最後までやり遂げることだろう。こちらの経緯も読んでみたい。
Posted by ブクログ
【収録作品】プロローグ/会意のトンネル/不作為の鏡/遺恨の経路/黒白の極性/犯意の影法師/金盞花の迷い/エピローグ
各話に十崎を逮捕した、風間道場門下生たちによる特別講義が入る。
「会意のトンネル」 文字遊びとトンネル現象。関係者の名前がかなり個性的なので、わかりやすい。特別講義は、隼田聖子。
「不作為の鏡」 醜形恐怖症とサイコパス。講師は下津木崇人。
「遺恨の経路」 薬物の摂取方法とアレルギー。講師は大里翔子。
「黒白の極性」 ギャンブル依存症とひったくり。講師は中込兼児。
「犯意の影法師」 犯意の推定と毒キノコ。講師は紙谷朋浩。
「金盞花の迷い」 他人の夢と隠しごと。講師は平優羽子。
エピローグ 風間の今後。
丁寧な伏線のおかげでわかりやすい。
卒業生たちのその後も垣間見え、頼もしく感じられた。