あらすじ
ヘッケとココアが去った町田家に、また一頭、二頭とやって来た猫たち。目が合えば威嚇され、世話をすれば激怒され、平謝りの暮らしが始まった。決死の爪切り大作戦、ケージ移動のために考案したインド風ラジオ体操、「一平ちゃん」をかき込みながらの徹夜の看病。今日もまた生きていく、人間と猫の日々。(講談社文庫)
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Posted by ブクログ
笑えて、泣ける。猫との生活を味わえる。猫好きの人は深く味わえる。猫を飼ってる人ならもっと深く味わえる。
軽妙な文体だけど、本当に著者が猫を愛していることが伝わる。読んだあと優しい気持ちになれる一冊。自分は3回泣いた。
Posted by ブクログ
町田康の猫エッセイ2冊目。
前著『猫にかまけて』同様カラー写真も満載で、「食パンみたいな顔の猫」ってこういうことかーと納得できる稀有な書であります。
14ヶ月で夭逝したヘッケを悼み、未だ路上生活を送っているヘッケの兄弟猫を保護せんと保護団体にコンタクトするも、連れて来られるのはヘッケとは似ても似つかぬ他猫ばかり。
それでも「この子は助けるけどこの子は助けない、というのは人間の傲慢ではないか」といった思想から、町田夫妻が仕事場に寄寓させる事になさったニューフェイス達がシャア、ニゴ、トラ、ウメチャン、エル。
「ウルトラマンニゴ」とか「インド風ラジオ体操」とか、笑いどころも相当あるのですが、やはりどうしても猫たちとの別れに落涙すること頻り。
ただ、人間共の身勝手に振り回される小動物たちに対して「かわいそうに」と心を痛めるのとは別に、ちょっと心配な事も。
新たにやって来た猫のためにケージを新調し、具合が悪くなれば病院に連れて行き、高カロリーの餌やサプリメントを買い与え、インターネット等で情報収集し、最期の瞬間まで寄り添い続ける。身も心もぼろぼろになって。
町田氏も御内儀も、大丈夫なんでしょうか。
目の前で小さくか弱い生き物が苦しんでいたら、助けたくなるのは人情。
でも、個人で助けられる数はどうしたって限られているし、それ以上にこの国では小動物が捨てられ過ぎている。
今こうしている間も殺処分され続けている命と、それを本能的に救わずにはいられない夫婦と、そのご主人が書いた本を読みつつ何もしない自分と。凹みます。
シリーズ第3作『猫とあほんだら』、早く文庫化しないかなあ。
Posted by ブクログ
町田さんの文章にはよく「例えば」とか「もし」の話でだだだーっと1文が超長い虚構のような名文が出てくるのだが、今回読んだ中の神文↓
『自分はちっとも悪くないのに襟首をつかまれ怒鳴られた猫は、もっと怒って、
「なにが、なにさらすだ。シャアアアアア」と言って怒って全力で抵抗、意外な抵抗にあって虚を衝かれ、呆然としているおっさんの額を引っ搔いて逃走したのである。
おっさんの額がざっくり切れ、鮮血がほとばしった。』
これは町田さんが幼少のころ、とある家の前に憤怒の表情で立っていたおっさんの額にある赤くて太い1本の傷と、玄関から走り出てきた1匹の猫を見て推測した状況を書いたものなんだが、この最後の1文を読んだ瞬間タリーズで吹いた。今も書いてて吹く。
辛いときに思い出すようにしようと思う。