あらすじ
「自己」とはどのように形成され、どうすれば変えられるのだろうか。実はそれは、私たちが自分自身について「物語る」ことで産み出されているのだ。そして物語がエピソードの選択・配列を伴う限り、そこからはみ出してしまうものも存在する。自己物語はそうした「語り得ないもの」(例えばトラウマ的体験)を巧妙に隠しているのであり、この隠蔽を解除する方向へと物語を書き換えることで、異なった自己を産み出すことも可能になる──。物語論を治療に用いた家族療法(物語療法)から、社会学的自己論は何を学べるか。〈物語〉をキー概念に自己の生成・変容をあざやかに読みといた刺激的論考集。
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Posted by ブクログ
「自己という現象[は]自分自身について物語ることを通して現れてくる」のであり、「その物語[は]必ず語り得ないものを含んでしまう」 (281)
結論はいたってシンプルだが、ここに至るまでに社会学や隣接分野における先行する自己論が詳細に検討されるのでついていくのは結構大変。でも読んで良かった。自己への物語論的アプローチという視点は、自分自身について考える参考になるし、テキストを読むときにも引き出しの一つになる。「文庫版あとがきにかえて」ではもう少し、本書初版刊行後25年間の学説の展開を教えてくれても良かったような気がしないでもない。