あらすじ
雨の夜。伸也はバー「シンシナチ」で店番をしていた。看板間際にその男はやってきた。マスターの辻本を訪ねてきたという。翌日、伸也は見知らぬ男に、昨晩大杉という男がやってきたかと問い詰められた。一方、北友会の組員も必死に大杉の行方を追っていた。そんな時、伸也は辻本の女である恵子に、大杉に渡してほしいものがあると頼まれる……。一人の男が街に還り、止まっていた時が動き出す。ゆずれないものを心に抱える男の生を、陰影溢れる筆致で謳い上げた、ハードボイルドの極致。(解説・小梛治宣)
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Posted by ブクログ
北方謙三『二人だけの勲章』ハルキ文庫。
再読となる。北方謙三の初期ハードボイルド小説が5ヶ月連続で再刊されている。第1弾は『友よ、静かに瞑れ』、第2弾が『過去 リメンバー』、第3弾が『黒いドレスの女』、そして第4弾が本作『二人だけの勲章』で、第5弾は『逆光の女』ということで月1冊の刊行予定になっている。
1986年刊行ハードボイルド小説。自分を取り戻すために闘う男たちの姿を描かれるのだが、北方謙三のハードボイルド小説の中では最も過激ではないだろうか。
終盤までの展開は非常に面白いのだが、結末を端折り過ぎたようで、消化不良だった。大杉良二は復讐を果たし、自分を取り戻したのか。宮古島で刺されて重症を負った『シンシナチ』のマスターの辻本礼助はどうなったのか。辻本の女の水野恵子は、滝沢伸也は……
雨の夜、滝沢伸也が店番をするバー『シンシナチ』の閉店間際に1人の男が、マスターの辻本を尋ねて来る。男はジャック・ダニエルを2杯飲み、店を後にする。
翌日、伸也は背の高い見知らぬ男に昨夜、店に大杉という男が来なかったかと問い詰められる。背の高い男は刑事で宇佐美誠一郎と言い、大杉良二の大学時代の後輩だった。
一方、北友会の組員も必死に大杉の行方を追っており、『シンシナチ』にも押し掛けて来た。そんな中、伸也は、辻本の女である水野恵子に大杉に渡して欲しい物があると頼まれる。
5年前に敏腕新聞記者として、ある企業と政治家の収賄事件を追っていた大杉良二は、実の兄と両親を殺害され、何かから逃げるようにアメリカに渡っていたのだ。大杉が帰国したことで、政治家やヤクザの黒幕、刑事の宇佐美が動き出す。
本体価格800円
★★★★