あらすじ
不用意に撮影したからか。気づけば僕は過積載のトラックに追いかけられていた……。きっかけは「埼玉県川口市に実際に住んで、クルド人問題を取材してみませんか」という編集者からの提案。ケバブ店、クルド人御用達の朝食食堂、シーシャバー、解体業者、教育現場と市内を縦横に駆け回り、子ども、住民、市議会議員から市長にまで話を聞き、見えてきたのは「多文化共生」という理想と現実のおどろくべきギャップだった。
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Posted by ブクログ
クルド人問題が結局どういった側面を抱えているのか知らない状態でしたが、かなり理解できたと思います。結局はルールをしっかりと作りそれがきちんと施行されることが重要だと思います。中立的な立場を貫いていたのでとてもわかりやすかったです。
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埼玉県で生まれ育った身でありながら、正直川口は大宮から東京へ出る際の県境である荒川を越える前の通過駅程度の認識しか持ってこなかった身からすると、川口でどのようなことが実際に起きているのかの一部だけでもまずは知ることができる本だった。意識的か無意識的にSNSでの煽動的な情報から距離を置いていた身としては極めていずれの立場にも与しないように気をつけて中立的に書かれているように感じた。
労働力として必要だからと実質的な出稼ぎを「技能実習制度」という名前をつけて海外の方の労働力の恩恵を受けつつ居着いてもらっては困るからと3年で帰国させ、また難民条約も批准していながらも助けを求めてきた人達にさえも定住させず、裁判もなく収容するという、構造的な制度の欠陥、政策の欠如が一番立場の弱い者(地元の方、クルドの方双方)へ皺寄せを生んでいる現状はもう少し自分ごととして積極的に情報を摂取すべきだったと反省。
Posted by ブクログ
クルド人側でもなく反クルドでもない立場から、埼玉県川口市に短期滞在してみての取材から見えてきた事柄を一冊に纏めた一冊です。法に則って生活している外国人とは共生して、法を守れない外国人には母国へ帰ってもらうという当たり前の原則を市長は取材で述べていましたが、その通りだと思います。現状起きている問題を自治体任せにせず、国も積極的に関与していくことが大事なのでしょう。
Posted by ブクログ
まあこんなもんかという印象。
中立を謳っているが、クルド人社会に警戒されて親クルド勢への取材は結果的にできていない。応じない在日クルド人団体も微妙とは思うが、取材時期はヘイトスピーチが吹き荒れ反クルド勢力が蠢き炎上系YouTuberが群がる最中の2024年。許可なく車の写真を撮ったらそりゃ怒られるだろうし、取材なのを伏せる態度を取れば反クルド/炎上系と同一視されるのも無理はないと思う。
とはいえ親クルドではないルポは稀有だ(った)とは思う。事件やトラブルを問題視する市井の声、「クルド人問題」を追及する市議、そして行政へのインタビューなどが収録されている。親クルド書籍にはなかなか取り上げられない内容ではあるし、中立を謳っているだけあって、記述は反クルド書籍やネットの言説よりはマイルドな気もする。
ただその結果として、一読して物足りない印象が残る。本件が国民全体を巻き込んで大騒ぎするほどの「問題」なのかという気もしてくる。タイトルの"「クルド人問題」"に鍵括弧がついているのは正しく、"おどろき"とはある意味肩すかしのようなところもあるよなあと感じた。
Posted by ブクログ
日本の制度の抜け穴を狙って仮放免者・不法就労者が入ってくるのであれば、制度の抜け穴がないように制定していくしかない。不法就労の黙認は厳罰化、自治体と国で仮放免者の居住・就労状況を把握、犯罪や暴力行為は逮捕し再入国禁止。仮放免者は就労禁止だが、違法に働き、住民税を納めず、医療費も払わず、母国に帰る。問題は法を遵守しないことなのだから、難民申請の出稼ぎではなく、在留資格を得て働いてほしい。
Posted by ブクログ
ヘイト本との批判があるが、少なくとも特定の民族・人種(ここではクルド人)に対して罵詈雑言を浴びせる類の本ではない。ただ細部に事実誤認(「ニホンジン、シネ」発言等)があり、それをもって「デマ本」認定する人がいることも(テーマがテーマだけに)理解はできる。いっぽう解体ヤードの取材では、周辺住民の事情にまで踏み込んだ考察があり、20年近くにわたりコミュニティを形成してきたクルド人と地元住民のしがらみが、問題が複雑化する背景として浮かび上がった。
川口市近辺に住むわけでなく、取り立てて背景事情に詳しいわけでもない著者が同レベルの読者に対して概要をまとめれば、こんな形になるのだろうが、とはいえ、クルド人に批判的な議員等にはインタビューしつつ、(いくつか団体に取材を断られたとは言え)擁護側の意見や論理が全くと言っていいほど紹介されないのは、反でも親でもない中立を標榜する本としてはやや物足りなく感じる。
これも一方的にクルド人側の論理だけを報道し続ける新聞等との合わせ鏡と思えば納得できなくもないが、これだけで問題の全容がわかるとは思えないのだ。