あらすじ
周囲に白眼視され孤独に生きる自動車整備士ラリーは、ある事件を契機に疎遠だった少年時代の親友、人種も境遇も超えて友情を育んだサイラスと再会するが……。英国推理作家協会賞ゴールド・ダガー(最優秀長篇賞)受賞作!ホラー小説を愛する内気なラリーと、野球好きで大人びたサイラス。1970年代末の米南部でふたりの少年が育んだ友情は、あるきっかけで無残に崩れ去る。それから25年後。自動車整備士となったラリーは、少女失踪事件に関与したのではないかと周囲に疑われながら、孤独に暮らす。そして、大学野球で活躍したサイラスは治安官となった。
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Posted by ブクログ
風変わりなタイトルは、ミシシッピー(Mississippi)の綴りを覚える時に、アメリカの子供が歌う歌詞の一部だということ。
アメリカ南部を舞台に殺人容疑をかけられている白人と、野球の夢を諦め地元に帰ってきた黒人下っ端警察官の、元同級生がおりなす物語
最後のあっと驚く仕掛けもあり、ミステリーとしても評価できるが、どちらかというと人間ドラマとしての読み方をしてしまう。二人の主人公と周囲の人間たちの悲哀と少しばかりの癒しが、ジワジワ心にしみてくる。読み終わった後の余韻がたまらなくいい。
友情、人間の信頼関係って簡単に崩れるけど、時間をかけてじっくり癒せるものでもあるんだなぁ。
主人公の一人ラリー・オットの生き様を読むにつけ、優しく正しく生きねばなぁ。と子供みたいなことを切々と思ってしまう。
Posted by ブクログ
ミシシッピ州の田舎町で40代の自動車修理工が銃で撃たれる事件が起きた。被害者のラリーは瀕死の重傷。しかし、ラリーはちょっと特殊な人物だった。というのも彼がまだティーンエージャーだった25年前。同級生のシンディが行方不明になり、ラリーはその事情を知っている重要参考人だったのだ。
そして、つい最近も女子大学生が行方不明になり、ラリーは再び容疑者とされていたのだ。
その街で治安官をしているサイラスはラリーと幼馴染だった。一度街を出て、治安官として戻ってきた彼は、疎遠になっていた筈のラリーの身辺を調べ始めるうちに、少年時代のラリーとの記憶が徐々に蘇り始める。そこには、当時は気づかなかったサイラスとラリーの以外な関係が隠されていた…。
ミステリーではあるが、読後感の気持ちよさはミステリーとはまた異なるものを感じさせる。40代の青春小説という感じか…。いやぁ、ポケミスは面白い!
Posted by ブクログ
人種の壁を背景にした南部アメリカが舞台のほろにが友情ストーリー。
序盤が入り込めなくて辛く感じた。
が、物語が見えてくれば、ラリーに沁みついた悲哀、サイラスの抱える罪悪感と、2人が年期に直面した人種の壁をめぐる微妙な葛藤が読みごたえを与えてくれる。必ずしも「黒人=虐げられる対象」ではないところも興味深い。
物語の発端となっている事件自体はご都合主義的にとってつけられた展開で幕を閉じるが、要するにそこは推しのポイントではなく、過去の事件に端を発するラリーとサイラス、2人の心理をめぐる展開が読みどころと感じた。
■このミス2012海外8位
Posted by ブクログ
親友同士だった二人の少年。
長じて疎遠となった二人は、ある事件を機に運命の再会をとげる――
ホラー小説を愛する内気なラリー(白人)と、
野球好きでまわりの子どもよりどこか大人びたサイラス(黒人)。
ふたりの少年が育んだ友情は、ある出来事で喪われてしまう。
そして25年後―
まるで周囲の環境ががらりと一変した彼らが運命の再会を果たし…
というお話。
物語は中年のラリーが何者かに襲われ、サイラスがその事件を担当することになります。
主に昔の回想をラリーの視点で、現在の事件をサイラスの視点で綴られるのですが、
衝撃の展開ってわけでもなくミステリの要素はあるものの、青春小説でしょう。
特にラリーの方に感情移入したために孤独感を味わいました。
差別と偏見は過去も未来も在り続けるのでしょうが、この二人ならば。
そう思わせる作品でした。