【感想・ネタバレ】空が、赤く、焼けて 原爆で死にゆく子たちとの8日間のレビュー

あらすじ

原爆投下直後の広島、その克明な記録が甦る。

瀬戸内の島で原爆投下の8月6日を迎えた著者の奥田貞子さんは、その翌日、広島に入り、8日間にわたって兄の子どもたちを探して市内を駆け巡ります。その間、市内で会った多くの子どもたちの死に立ち会うことになり、死を前にした子どもたちの様子を克明に日記に残しました。戦争の悲惨さにどう自分が居合わせたか、そして何も出来なかったか。戦後80年が経ったいま、その真実を忘れるな、という著者の悲痛な叫びが甦ります。

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Posted by ブクログ

記録を残してくださり、そしてこのような形で出版してくださったことへの感謝の念を抱きました。

内容については、まだ言葉になりません。。
この深い悲しみが二度と起こらないことを、戦争がこれ以上繰り返されないことを、心の底から願いました。

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2025年08月06日

Posted by ブクログ

    『空が、赤く、焼けて』
   原爆で死にゆく子たちとの8日間



こちらは 奥田貞子さん という方の作品

原爆が投下された翌日から八日間、三十一歳の奥田さんが兄の子を探して広島の町をさまよい歩いた記録です


八日間のなかで目にしたことや、会話したことなど 奥田さんは日記に書きとめていてそうです


このお話は 十一の短編 と ニ編の詩
で構成されています
それと…巻末には 重松清さんによる寄稿
「ささやかでなければ、伝えられないこと」が
掲載されています



読んでいて……
どうしても気になってしまったのが

『待っていた兄と妹』というお話の中で



ちょうどわたしの前を、少年が小さな女の子を自転車に乗せて、フラフラ押して歩いていた。
突然、女の子が落ちた。
アッ!わたしが走って行くと同時に、少年は自転車を投げてすぐ女の子を抱き起こした。

「大丈夫か、ケイコ、ケイコ」と呼んだが、
返事はなく、目もあけなかった。
私は少年から女の子を受け取って
「ケイコちゃん、ケイコちゃん」と頬をたたいてみたりゆすってみたが、目をとじたまま
動かない。脈を見たら、かすかに打っているので、私はすぐその子を抱いて自転車の荷台に乗った。さあ早く、早く、急いで。早く私の家に…。

……って、この文なんです 気になるのは
何故 あなたが荷台に? 
あなたは歩けない?って思ってしまったの


少年は一生懸命ペダルをふんだ。ときどき足を止めて、ハアハアと苦しそうな息をする。
私は後ろから夢中で声をかけた。
急いで、急いでと、心ばかりが先走る……。

半分も行かないうちに少年は自転車を止めて
「すみません、おりてください、僕もうだめです。ああ苦しい、苦しい、水が飲みたい…水が……」
「しっかりして。苦しいの……?」


って…この文が気になっちゃって。
茶化してるわけじゃないんです。
ごめんなさいm(._.)m



この言葉が心に残ってます
「おじさん、戦争は終わったの?日本は負けたんでしょう。僕、もうどうだっていい」と言った。「負けてもいい、戦争が終わった方が……」

少年が亡くなる前に言った最期の言葉
これには胸が痛くなりました
切なくって 言葉が出てきませんでした



奥田貞子さんの経験してきた8日間
水とおにぎり、治療薬を持って歩き回った8日間
ただ、この本を読んでるだけの私が
80年前にタイムスリップしたとしたら
同じことができるだろうか
腰が抜けて歩けないんじゃないだろうか
何にもできないんじゃないだろうか


今も戦争は起きている
もっと きちんと考えなくてはダメね


最後に重松清さんが寄稿した小文が添えられていて…それが良かったです

「プロフェッショナルの書き手ではないだけに、文章に拙いところがないわけではない。
だが、それを補って余りある強い思いが、深い一冊にしている……」と書かれている。

私は信仰もしてなく 奥田さんの考え方とは違う部分もあるけれど…
戦争のことは きちんと知っておかないとって
読んだ以上、伝えていかないとって
改めて感じました


戦後八十年
…自分が生活できて、こうして本を読めてることを 当たり前と思わず大切に暮らさなきゃ
もっと 日々を大切にしようって
そんなふうに 感じた一冊 でした

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2025年08月10日

Posted by ブクログ

今年はちょうど戦後80年という節目の年。
戦争は無惨にも多くの命と多くのものを奪った。
特に原爆は人類史上に残る悲劇。
原爆の日の前に読んでおきたい、もっと知りたいという思いで本書を手に取りました。

本書は著者が原爆投下された翌日から八日間、
兄の子二人を探して広島の町をさまよい歩いた
ときに見聞きした子供達の生の声とそのときに感じたことを日記として、その一部を本にしたものです。

著者が目にしたものは、破壊し尽くされた街に負傷していたり、ひどい火傷をした人、手足や顔の皮が垂れ下がったまま歩いている人、周囲は死体の山まるで地獄絵図のようです。
以前マンガ『はだしのゲン』で見た惨状そのままで実際は文章以上に恐ろしく悲惨な状況だったのではないだろうか。
泣いている子供やケガをしている子供がいれば声をかけ、水を与えて、ケガの治療、抱っこしてあげたりと著者の優しさとあたたかさに心救われますが、殆どの子供は天国へ行ってしまいます。
少年の言葉が頭から離れません。
「僕たちは大人にだまされた。大人と戦争を恨んでいる」
何故子供達がこんな辛い思い、酷い死に方をしなければならないのか。
いったい誰のための、何のための戦争なのか。
子供達を犠牲にして何が得られるというのか。
無邪気で幼い子供達の死は身につまされる思いです。どんなに悲しくて苦しくて悔しかったか。
戦争がなければ子供達にも明るい楽しい未来がと何度も思ってしまいます。
 
戦争体験者は2040年には皆無になると言われています。
だからこそ本書のような戦争体験者の生の記録が大切なのだと感じます。
戦争の悲惨さや残酷さを風化させないように動画や文章として残し語り継いでいくことが大切なのだと。
特に体験者の記録はリアルで一人ひとりの過去やあったかもしれない未来、想いが伝わってくるので説得力が強く感じられました。
この本は小さいですが著者の想いと平和の尊さが詰まっているので読んだ後、重さが増したように感じました。

今の平和の世に感謝しつつ戦争や原爆が遠い昔話で終わることのないように戦争関連の本を読んでいきたい。
幸い娘も戦争に興味があるようなので本書を読んでもらい、リレーのバトンを渡したい。

8月上映の「長崎 閃光の影で」を娘と見に行く予定です。

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2025年07月25日

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