【感想・ネタバレ】ダーリンはネトウヨ――韓国人留学生の私が日本人とつきあったらのレビュー

あらすじ

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期待を胸に日本で留学生活を始めた韓国人のうーちゃん。サークルで出会った日本人の先輩いっしーと付き合うことになった。
付き合って一ヶ月、いっしーが「きれいな日本語」を喋ってと言ってきたのだけど…積み重なるモヤモヤの先にしたうーちゃんの選択とは?

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Posted by ブクログ

ネタバレ

――わたしはあなたの望む「外国人」になろうとした――(本書帯より引用)

韓国人留学生であるウ・ユンスルさん(通称:うーちゃん)が日本で過ごした11年間に体験した様々な出来事を、ゆるふわタッチの可愛いイラストで描くコミックエッセイです。
特に何と言ってもカワイイ! と思ったのは、124ページの髪の毛を持ち上げるうーちゃん。内容が重いので、並んでいるイラストに癒しを貰って相殺している感じがします。

「ダーリンはネトウヨ」という衝撃的なタイトルで、読む前のイメージは「ゴリゴリのヤバイ思想の彼氏がいて、その彼氏に嫌なことを沢山言われる」みたいなものでした。

しかし、実際に読んでみると少し違っていて、恐らく「いっしー」(主人公の彼氏)というキャラクター性を持った人物は日本の少数派などではなく(いっしーが特別ヤバイやつなのではなく)、ごく普通に日本で生活をしている日本人の多くが多かれ少なかれ、いっしーと似たような思想をしていたり、同じような発言をしているのだろうな、と感じました。
「まだ訛りがあるけど、歌うときは完全に日本人だね」
「うーちゃんはもう日本人だね」
「海苔を消化できるのは日本人だけなんだって」
「日本語は世界一難しい言語。それを話せるうーちゃんはすごい」
などなど……悪意があるとは断定できないものから、いっしーの潜在意識のなかにある日本人(である自分)の優越感がみえみえの発言まで、バリエーション豊富な展開()に目を白黒させながら読みました。

いっしーがつき合ったのが日本人女性だったら、いっしーの差別の片鱗は片時も露見することがなかったのだろうか? と考えたりもしました。

(発言した本人からすれば)他愛のない言葉が、言われた人を傷つける(=差別発言)わけですが、残念ながら我々は日常的に、常にそのことに対して万全の注意を払っているわけではありません。
だからふとした瞬間、そうした無意識の差別発言が外へ飛び出し、相手を傷つけてしまう。
まさに「差別をしない人なんていない」のです。

「差別」と聞いて我々が思う、過激で、誰にでもそれとわかるもの(=故意的な差別)とは違って、「悪意のない差別」(=無意識的な差別)というようなものが存在していて、それらがうーちゃんを苦しめる様子が、本書ではリアルに描き出されています。

それから、この本を読んでひとつ思ったのは、この主人公が「うーちゃん」ではなく、エリザベスやカロリーナや、アンナだった場合はどうだろう? ということです。
いっしー(日本人男性)たちは彼女らに「訛りがある(から直した方がいい)」「もう日本人みたいだね」と言うのでしょうか?

そう考えた時に浮上してくるのは、うーちゃんが「日本人にとても似ている風貌の韓国人」だから受けている被害というものの存在です。
これが、個人的には日本では顕著な差別の正体ではないかと思っています。

こういう話をネット上に(特にSNS)書くと、「韓国が好きなのか?」と言われる現象も含めて、これらは「差別」ではないかと思います。
よく、韓国と絡めて政治的軋轢があるから……という人がいますが、両国間に政治的な問題があることと、その国籍の人を冷遇することは全くの別物でなければならないのです。冷静に考えれば、分からない人の方が少ないことです。

また、本書には「フェミ(ニスト)」について「いっしー」が拒否反応を示す場面も出てきます。
「韓国への拒否反応」「フェミへの拒否反応」両者に共通していることは「敵対意識(時にマウント行為)」と「無理解」です。

差別をすぐにゼロにすることは難しいですが、個々が意識することで、延々と繰り返される「〇〇人なんだね! 鼻が高い!(目が青い! 肌が黒い!)」といったような会話は終わらせることができます。

その為に必要なのは「知ること」「コミュニケーション」そして「互いの尊重」。

この本を読んだことで、私もひとつ、差別について認識を深めることができたと感じています。

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2024年06月05日

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