あらすじ
『サイコーの通知表』『だれもみえない教室で』など学校における子どもたちの生きづらさに寄り添った作品を生み出し続ける児童文学作家・工藤純子。書き下ろし最新作のテーマは、加熱する「中学受験」!都立中学の受検(適性検査)、私立中学の受験、AO入試。三者三様の動機と道のりから、受験のリアルを描き出します。
──「学歴」というのは、ゲームでいう「武器」のようなものだ。いい学歴は最強の武器になる。だったら、ゲームオーバーにならないために、そのアイテムを獲得するのは当然のことだ。中学受験は、そのために必要なこと。ステージをクリアしていくため「魔法の鍵」。そう感じ取って、「ぼくも中学受験する!」と、その場で宣言した。(本文より)
小学6年生の新は、都立中学合格を目指し、進学塾に通いながら勉強漬けの日々を送っている。かつて夢中だったサッカーを辞め、中学受験にすべてをかけてきた。しかし模試の成績が下がり、塾の先生からも私立受験の提案を受け、ふがいなさに心が揺れる。そんな折、あこがれだった従兄が有名高校を中退したことを知り、「進学校に行けば成功するわけではない」と思い知らされる。なんのために、誰のために受験をするのか? 悩む新。
一方、クラスメイトから軽く扱われがちな広翔は、自分の意見をうまく言えず、自分のことを透明人間のように感じていた。広翔にとって学校とは「楽しくない場所」なのが当たり前。しかし私立中学の見学に行き、「ここなら友だちができるかもしれない」と自分なりの受験を決意する。
バレーボールに打ち込むつむぎは、勉強が得意とはいえない。近所の公立中学にはバレーボール部がなく、中学生になったらバレーをやめなければならないと思っていた。だが、憧れのバレーボール選手の言葉をきっかけに、ペーパーテストではない「AO入試」があるということを知る。6年生の12月という遅い時期から、家族一丸となり合格を目指し……。
「中受」を考えている方、「中受」真っ最中の方、「中受」を終えた方、そして保護者の方にも読んでいただきたい一冊です。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
6年生3人の中学受験の物語。高学歴を得るためと思われがちな中学受験ですが、広翔やつむぎのような受験もあるんだと知りました。そして何のために受験するのかをタイムリミットぎりぎりまで悩み続けた新にもエールを送りたい気持ちです。
ミナミ先生や、塾の先生、新の父のように、見守る大人たちもよかった。こんな大人でいたい。
小学生では、どんな将来を望むのかなんて、まだまだ考えられない人も多いと思うけど、中学生活はすぐ先の未来。どんな中学生活を送りたいのか、6年生みんなに読んで考えてもらいたい。
Posted by ブクログ
すげータイトル、流行ってるよな受験テーマくらいで読みましたが、大した力作でした。トップ高狙いの子だけではなく自分に合った中学に行くことを自分で決める子、どたん場でAO入試に挑戦する子と、読者の方の精神が削れそうなほど受験勉強する系の話とはまた毛色が違って大変よかったです。
Posted by ブクログ
普段はほとんど手に取らない児童文学。子どもが中受真っ只中ということもあり、タイトルに惹かれて手に取りました。
いろいろな中受、賛否両論ある中受、好き嫌いの別れる中受。こんな風に中受ができたら素敵だなと思わされました。子どもたちの純粋で、ふとしたら壊れてしまいそうな思い。それを支える周りの友だちや、素敵な大人たち。南野先生。自分もこんな大人でいたいな思いつつ、現実とのギャップに情けなくなりました。
中受経験者、今、挑戦している子どもたち、そして、その周りにいる大人たちに、ぜひ手に取ってもらいたい一冊でした。泣ける。
Posted by ブクログ
中学校受験に向き合う3人の物語。3人が中受する理由はそれぞれで、中学校への進学は一つの節目、親の言いなりになって何となく選ぶものではないことを改めて考えさせられた。自分で悩んで考えて目標を決め、懸命に頑張ろうとする3人は、受験を通して大きくたくましく成長していく。中学校受験に関わる人には特におすすめです。
Posted by ブクログ
3人の6年生がそれぞれの中学受験をする話。
各章でそれぞれが主人公として中学受験と向き合うところは「君の鐘がなる」に似ているけれど、受験内容は「中受」の方が様々だ。「君の〜」は塾の友だちで、こちらは学校の友だちという設定だからかな。
1人目の稲葉新は偏差値65の都立中高一貫校を目指し勉強を続けているが、何の為にその学校に行きたいのか目的を見失ってしまう。そんな中、その学校に行っているはずのいとこのお兄さんに会うと意外な話を聞かされるという話。その後も、最後まで進学に迷いながら進路を決断する。
2人目は深谷広翔。のんびりやで下に見られがちな広翔だったが、塾の先生に偏差値は低くてもよい学校があると勧められ半信半疑で見学に行き、受験を決めるという話。受験は必ずしも偏差値が高いところを目指すためだけではない。
3人目の小野寺つむぎも同じ。つむぎが受験を決めたのはなんと12月。好きなバレーボールを続ける為AO入試での受験を決める。
それぞれ、同じクラスでお互いに関わり合いながら話がすすんでおもしろかった。