【感想・ネタバレ】百年前の日本語 書きことばが揺れた時代のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

 今から約100年前の日本語は、現代の日本語と比べどのような相違点があり、現代に至るまでにどのような変化を遂げてきたかを、明治期の日本語をもとに述べられている。また、副題にある「揺れ」というのは「豊富な選択肢があった」ことを意味しており、この時代の日本語はこのように称される通り、手書きによる一つの文章の中で書体が混在したり(夏目漱石『それから』の自筆原稿が具体例として挙げられる)、外来語に対する表記の仕方に対しても様々な選択肢(漢字をあてて書くか、仮名で書くかなど)があった。しかし現代においてそれらの「揺れ」は見られず、むしろ様々な選択肢を内包していた表記体系は排除され、一定の規定(平成3年に内閣告示された「外来語の表記」や、平成22年に同じく告示された「改定常用漢字表」など)のもとに成り立っている。明治期の日本語を具体的に様々な用例から推測し、どのような変遷をとげて現代に至るのか、そのルーツをたどり現代の日本語のすがたを改めて見つめ直すことを目的とした内容になっている。

 明治期の日本語は様々な選択肢を内包していたという点についてだが、それは漢字の字体や書体、語形やその書き方においてにまで及ぶ。例えば、手書きのみならず活字においても、楷書体・行書体・草書体が混在しており、これは明治期の活字印刷において手書きの文章を印刷においても再現しようと意識されていたことが示されている。室町時代末期から江戸時代初頭にかけて行われた「古活字版」は、手書き文字を精密に再現しようとした技術がみられるが、それらの意識は明治時代までも受け継がれており、現在の「印刷されているように手書きする」(本書、p.2)といった印刷物を手本の文字として捉えている考えとは正反対のものであると考えた。また、外来語の書き方においても明確な規定はまだ無く、様々な方法(外来語に漢字をあて、片仮名による振り仮名を施す方法や、片仮名のみで書かれたものがあった)でそれらを書き表しているが、一つの文章の中で書体が混在しているように、外来語の書き方においてもそれは同様に行われることを学んだ。

0
2022年02月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

祖父母の家で本を漁ると、
出版社謹製の栞やら広告やらが、頁の間にはさまっていた。

そこにイロハ番付なんかが書かれていて、
たしかそこに「し」が「志」として記されていた。
これは一体なんとよむ字なの?
なぜひらがなではないの?なんて、聞いたことがあったのを、
些細な思い出で忘れていたのだけれど、なんとなくふっと思い出した。

著者は云う、
何かを得て何かを失っているわけではない、
どちらが良く、どちらが悪いなどということはない、
そうなんだろう。時間の経過、時代の変化に罪はない。

しかし、使わない文字や言葉など、
記憶とともに忘れられ消えていくことは、
自然なこととはいえ、なんだか色々な知識や機会を
日々失っていくようで、気惜しくかんじる。

語彙が増えて、分かる字も増えて、漢字が得意になった気がして、
せっせと辞書を持ち歩いては
難しい言葉をつかってみた、などという記憶が蘇る。

若年寄のただの感想。

0
2016年09月14日

「学術・語学」ランキング