あらすじ
国内外の過酷なレースでその名を高めた「王者」土井陵。その土井を取材し続けてきた著者によるアスリートの真髄が凝縮した1冊。
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Posted by ブクログ
千葉弓子さんの取材は、土井さんの人柄やこれまでの歩みに丁寧に寄り添っていて、TJARを2連覇した実績の裏にある努力や想いがリアルに伝わってくる。彼が「王者」と呼ばれる理由も、読み進めるうちに自然と見えてきた。
仕事をこなしながら、練習やレース、イベントにも取り組む生活の中で、ご家族との時間はどうしているのかなと気になっていたけど、今はとても良い関係を築かれていると知って安心した。
土井さんを取り巻く環境や、人との強い絆が伝わってきて、さらに応援したくなった。
Posted by ブクログ
TJAR(日本アルプス)最短記録保持者で2連覇中の土井陵選手のドキュメントだ。自著ではなくインタビュー記事で、本人はもちろん家族やライバル選手にもインタビューを重ね、土井陵選手のレースに対する考え方や人となりを明らかにしている。
UTMB(モンブラン)を走った時に、ペースが上がらず思い通りに進めなかったが、レースを諦めるのではなく 「今日の調子はこれだから、この出力で行くしかない」 と状態を受容れたと答えている。年齢を重ねた選手がロングディスタンスのレースで強いのはおそらくこのあたりにあるとも分析されているが、手を挙げて 「はい、僕もそう思いました!」 と土井選手に伝えたい。舞台のレベルに雲泥の差はあるが、自身の日本縦断サイクリングの時、ペースが上がらない時は、あせるのではなく自身の状態を受容れるよう思考が切替わった。「出力」という単語を使っているのも同じで、少しうれしい。
取組んでいることのレベルや内容は違えど、内心を顧みて気づくことは自身の感受性によるところが大きいんだなと感じる。
今後も土井選手の活躍を応援していきたい。
Posted by ブクログ
一公務員という立場でありながら、その傑出した競技成績を中心とする半生にスポットが当てられ、このように一冊の書籍の形になることがまず、凄い。
国内トップカテゴリーにいるトレイルランナーの中でも、一段上のステージに独り立っていると言って差し支えないだろう。
丹念に集められたインタヴューやプロフィール等を本書で読み、土井陵という人が決して気取らず偉ぶらず鼻にかけることもなく、誰とでも気安く接する親しみやすいキャラクターであることを改めて知るとともに(私もお話させていただいたことがあるが印象は本書から受けるものと相違ない)、その姿とこれまで残してきているあまりに人間離れした実績との間に、大きなギャップがあることもまた、素直に感じられた。
現代のスーパースター像とは、彼のような存在なのかも。
トレイルランナーとしての土井陵と深い交流がある人たちや、それ以外の面も含め熟知する家族から聞き取った声が本書を構成する大きな一本の柱となっているが、特に興味深かったのは妻に対するインタヴュー。
著者によると、妻に話を聞くべきかどうか迷ったということだが、間違いなくこのブロックがあることにより、本書の厚みは大きく増している。
家庭の中では夫であり父である人が、生業とは別の何かに多くのコストを割いて献身するという日々は、一体どういうことなのか…これぞまさしく、土井家のリアル。
周辺からでももう少し具体的に踏み込んで取材、描写し、さらに立体的かつヴィヴィッドに仕上げる余地はあったように思う。
市民アスリートの底辺である私も走り始めた頃にアドヴァイスを頂いたことがある三浦"オラオ"誠司さんと土井さんとのエピソードが紹介されていることに、個人的にはぐっときた。