あらすじ
カメとクレインは「あの日」を生き延びた奇跡の子。離れることなく育った2人だが、小学校卒業を前にクレインは寝込むことが多くなり学校に行けなくなってしまう。「あの日」に支配され続ける現実にカメは…!?
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Posted by ブクログ
この話には「承認欲求」と「体験者の語り」の二つが裏テーマとなっている
「承認欲求」は、主人公がどうしても這い上がりたい、周りからよく思われたいということを燃料に、過去の戦争体験さえも自身の糧としていく。今までの「可愛そうな戦争漫画」という範疇では決して登場しないキャラクターではあるため、それを受け付けない読者もいるかもしれない。
そして「体験者の語り」。これは作者がラジオのインタビューで語っていたが戦争体験者の語りを聴く会に参加した際、最初は喋りなれた方が登場して、それを聞くと周りの人も涙していたが、その後に出てきた人は喋りなれておらず感動はなかった。
伝え方で何が伝わるのか、そして今でいう「バズること」で体験者さえも自身の記憶が変わっていく。これは2025年の今、受けている政治家が、その信念や政治信条よりも、喋り方や容姿が重要視されてしまっていることからも非常に身近なテーマとなってしまっている。
戦争を描き、その虚しさをちゃんと描きながら、漫画のなかで生きることをここまでえぐってくるのは純文学であるといってもいい。「cocoon」のようにわかりやすさはないが、多重的であり、その全ての層にサビたナイフが隠されており、読者は気付かないまに傷口に錆をぬられていく。
まぎれもない傑作です。
最後に、別のレビューで「フルカラーのイラストのようじゃなかった、簡素だった」というものがあったが、それにこのレビューで反論しておくと、あのイラストの密度で漫画にすると読みづらくでしょうがなくなる。カラーにすると情報量が多くなり、絵は止まってしまうことが多い。総カラーのアメコミが日本で受けなかったことや、今でも漫画は基本モノクロが多いのもその理由だ(あとから作者以外が彩色したものがあるが、あれは超売れた作品だけの例外)。 しっかりと読み込めば伝わってくる。
Posted by ブクログ
原爆の日の当時の様子と、まるで現代かのような舞台にて「あの日」以降が進行していく。テクノロジーは変化しても、人間の本質は変わらないのだと思う。
タイトルである「おりずる」の意味が判明した時は鳥肌が立った。今も変わらない人間の闇に思いを馳せる。