あらすじ
「そうやってズレたまま生きていくの?」
たった一秒が、あなたを変える。未来へ踏み出す一歩となる。
奇跡の花と不思議な青年をめぐる再生の物語。
生きていくうちに心も世界も少しずつズレていく。
この物語は、あなたのズレを優しく整えてくれる。
――凪良ゆうさん
心の霧を晴らしてくれる、人生のヒントが詰まった物語です。
――けんごさん
綿来千晶は、息子に手を上げた夫と離婚したばかりで鬱々とした日々を過ごしていた。彼女は、偶然入った霊園事務所で日置凪という青年に出会う。
親しみやすく価値観の合う凪に、ぽつぽつと悩みを打ち明けると、「ひとつだけ、おとぎ話をさせてください。」と「うるうの朝顔」という不思議な朝顔の種を取り出した。
なんでもその花を咲かせると、現実とはほんの少しだけ変わった過去をもう一度体験でき、その瞬間から始まっていた心の「ズレ」が直るという。
その夜、千晶には、姉が父に殴られた日の記憶がよみがえり……。
第17回小説現代長編新人賞受賞作!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
うるうとは、余分な月・日・秒のこと。
うるうの朝顔は、うまく咲くと使用者の過去を追体験させ、またその過去に1秒間が挿入、または削除される花。
その「うるう」の1秒によって『ズレ』が正される花。
感想を端的に言うと、面白かったけれど、面白がりきれなかった本。
まず設定に制限が少なくて大抵のことは解決できるという点。
そして最後のエピソードも担うことになる主人公が鈍すぎて、必要以上にエピソードを重たくしている点。
特にもう一人の幼馴染への勘違いは少し考えればわかるレベルとしか思えなかった。
Posted by ブクログ
一秒だけ現実と異なる過去を追体験できるという「うるうの朝顔」の種。
悩む人たちにそれを渡す凪は、そうやって人を救うのが役目の御使的何かかと想像していたら全然違った。
彼こそ、その「うるうの朝顔」の力に縋りたい、それなのにその力を顕現できない、作中である意味一番悩んでいる等身大の青年だった。
最終章はこれまでの人々の話を凪視点で振り返りつつ、様々な伏線が一気に回収されるミステリのような構成になっていてわくわくした。
真相はやはり切ないのだけれども。
冒頭に出てきた蝶の正体が分かった時も、驚きとやはり切なさが込み上げて、いいラストだなあとしみじみ。
途中が割と辛かったり、しんどい現実を突きつけてくる話もあったから余計に。