あらすじ
■メガトン級のアカデミズム×ジャーナリズムの一冊がついに刊行! 近い将来起こるアメリカとの戦争をシミュレーションした「日米未来戦記」は、戦前から最近まで、日本だけでなく世界でも、夥しい数の書籍が刊行されてきた。危機意識はどのように生まれ、いかに世論が醸成されていったのか? 150年の歴史を一括して分析し、その精神史に迫る。
■世論が醸成された果てが、現実の日米戦争であったこと(むろん、その要因は世論だけはない)、そして現在、日本国内の一部に近隣諸国への感情的反発や、主にインターネットを中心とした陰謀論の跋扈が見られるなか、20世紀前半の国際情勢に対する日本人のリフレクションともいうべき「日米未来戦記」をもう一度論じる意味は決して小さくない。──本書より
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Posted by ブクログ
膨大な資料を網羅しているが、乱暴にまとめると、対米戦争を描いたものでは、素人が楽観論を唱え、職業軍人は日本必敗の結論を出していた。戦争を煽るのはいつも素人。
冷静に見れば戦うべきでないとわかっていたのに、最後には戦争以外の選択肢がないところまで迷い込んでしまった。憲法問題に端を発する軍部独走が一番の原因であるが、楽観論や精神論で「日本、勝てるんとちゃうか?」と煽った作者+出版界+マスコミ、それに乗せられた大衆もまた大きな原因なのだろう。
Posted by ブクログ
タイトルが「戦争シミュレーション・未来戦記の精神史」なのだが、前半に惹かれ購入した。なにせ「昭和16年夏の敗戦」の著者なので、大きく期待して読んだが、内容はタイトル後半中心で、要は戦争をシミュレーションした書き物を総ざらえしたもの。日清日露の時代からこういった著作や論文が世界中で流行し、良く読まれていたという。第一次対戦前にはドイツ皇帝が世界征服を企んでいるかのような論調で危機感を煽ったり、日本が日英同盟を破棄し米中と組んで欧州に攻め込むSFチックなものもあったらしい。軍事情報は秘匿されているので論文と言っても推測の域を出ず、むしろ過激な論調のものが左右どちらにもウケるというのは現代も変わらない。ただ、こういうもので他国の姿勢やリーダーの印象を決めつける世論形成を図る奴がいると思うと、SNS時代の今はより注意が必要なんだろうね。
Posted by ブクログ
PIVOTで紹介されていたことをきっかけに、猪瀬直樹『戦争シミュレーション』を手に取った。
本書は、第一次世界大戦から現代に至るまで、各時代ごとに描かれてきた「日米未来戦記」を整理・分析した一冊である。読み始めはSF作品の紹介という印象を受けたが、実際にはそれにとどまらず、作品を評論(楽観型・警鐘型・文明論・誠心論・客観型)や小説(現実型・新兵器活躍型)に分類し、時代背景とあわせて論じている点が特徴的だった。
特に印象に残ったのは、日米戦記の起源が、第一次世界大戦期においては日本とアメリカではなく、ヨーロッパで生まれた思考枠組みに由来しているという指摘で、この視点は非常に新鮮だった。
紹介されている作品数は多いが、著者は重要な箇所を的確に抽出し、その時代の国際情勢を踏まえながら、日米戦記がどのように構想されてきたのかを分かりやすく示している。ただ、その分内容は凝縮されているため、時代ごとに一冊ずつまとめたシリーズ形式として読めたなら、さらに理解が深まり、より楽しめたのではないかとも感じた。
また、戦後の日米戦記の中には、現在の米中対立の文脈において、日本が巻き込まれる可能性を想起させる作品もあり、フィクションでありながら現実への示唆性の強さを改めて感じさせられた。『沈黙の艦隊』をはじめ、本書で紹介されていた作品を、今後実際に読んでみたいと思う。