あらすじ
「靴の紐が切れるとよくないことが起こる」本当の理由、ご存知ですか?
予兆、卜占、禁忌、呪術、妖怪、憑物……全国各地で採集された俗信、すなわち「超人間的な力の存在を信じ、それに対処する知識や技術」を体系的に整理。”非科学的で取るに足らぬもの”から日本文化の基層を明らかにする、民俗学の精華!
(解説:廣田龍平)
[本書で扱う主な俗信ーーその由来とは?]
○烏が屋根で啼くと死人が出る
○膝を絶えず小刻みに動かすと貧乏になる
○婚礼に雨が降ると縁起がよい
○一富士、二鷹、三茄子、四葬式、五火事
○厄年に生まれた子は捨子にする
○ものもらいは七軒の家から米をもらって食べるとよい
○手振水をかけられた人は死ぬ
○丙午(ひのえうま)の年は出生数激減(次回は2026年!)
……
[目次]
はしがき
第一章 俗信概論
一 俗信の概念
二 予兆
三 卜占
四 禁忌
五 呪術
第二章 信仰と俗信
第三章 厄年および年祝い
一 はじめに
二 従来の諸説
三 厄年行事の要素
四 贈答の意義
五 厄年行事の意味
六 信仰と俗信
七 厄年受容の基盤
八 結び
第四章 呪的な食べ物ーー味噌の魅力
一 食習研究と味噌
二 葬式と味噌
三 家移りと味噌
四 味噌つき日の吉凶
五 味噌煮の日
六 持ち寄るもの
七 せち味噌
八 山の神と味噌
九 味噌長者
十 呪的な食べ物
第五章 妖怪の地域性
第六章 妖怪と信仰
第七章 死と俗信
一 生と死との境
二 忌の飯
三 死の忌
四 種々のまじない
参考文献
解説 俗信の概念と発生について 廣田龍平
索引
(*本書の原本は、1975年に弘文堂から刊行されました。)
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Posted by ブクログ
「俗信」とは何かというところから、一つの俗信に対して、これがどうして「俗信」になったのか。年代や、何がどう変遷して今の形になったのかの考察をしている。
驚いて印象に残っているのは、俗信ができる過程・姿勢は科学と同じということ。「なぜあそこの家は病人が絶えない?」と結果から原因を探す。原因を求める技術が追いついていなかっただけ。
また、俗信は科学技術が発達すればなくなるのではなく、生活の中に入り込んでくるという。例えば写真が普及すると「3人で写真に写ると真ん中の人が死ぬ」など。これは写真の技術が発達しなければ生まれなかった。
なるほど時代や文化によって形を変えていくものなんだなと思いながら思いだしたのは、コロナが流行っていたころにアマビエという妖怪が流行ったこと(これまでは存在すら知らなかった人がほとんどではないか)を思いだした。
そう聞くと、今の科学では解明できない、自分の意思でコントロールできないことには今も「俗信」や「呪い」「祈祷」といったことはたくさん存在していることも理解しやすい。人はなぜ死ぬ?健康で一生を終える人がいる一方で不治の病にかかったり事故で早世する人がいるのはなぜ?など。
二つ栗を食べると双子が生まれるという感染のような俗信も今でいうと妊娠を望む女性の間で話題になった「妊娠菌」など。(これもお呪い的なカテゴリだろう)
他印象に残ったこと・・霊の奉献の話の中で、「国家は言霊の祝福」ということ、「厄」を分散させるという考え。なるほど。
Posted by ブクログ
民俗学です
巻末の解説によると「全国各地で採集された俗信、すなわち「超人的な力の存在を信じ、それに対処する知識や技術」を、「予兆」「卜占」「禁忌」「呪術」「妖怪」「憑物」に分類し、体系的に捕捉。」ということ
著者は井之口章次さん
あの柳田國男や折口信夫にも師事した超有名な民俗学者です
そして、本書は今から50年前に発表された学術書を今年の6月に文庫化したもの
まず講談社が偉い
それははっきり言っておこう
で、だ
いやー手強い
学術書手強い
でもたまにはいい
そしてたまにでいい
んでね
本書の内容には直接関係ないんだけどさ
調査に行ってるとこの地名がさ、もちろん50年前なのよ
平成の大合併でなくなってしまった町名がそのまんまなのをなんしか懐かしく感じたのと同時に
由緒ある地名が忘れられていくのもなんか悲しいな〜なんて思ったり
そして、古い地名の由来なんかも、立派な民俗学だと思うんよね
ちなみに本書には茨城県十王町なんて地名も出てきた(なくなってはいないけど、そこに住んでいない限りもうほぼ聞かない)
十王町の由来は、昔この地域にあった「十王堂」という建物に安置してあった十王像なんだって!(調べた)
でもって十王像は死者の罪を裁く10人の王なんだそう
なんかかっこいい!
民俗学かっこいい!