【感想・ネタバレ】職場の共通言語のつくり方のレビュー

あらすじ

NECソリューションイノベータ株式会社、三井不動産株式会社、株式会社SBI新生銀行、株式会社LegalOn Technologies…一流企業が続々導入! 5000名以上の対話分析から生まれた「東大発 哲学対話メソッド」。

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Posted by ブクログ

はじめに 職場の「言葉の壁」を乗り越える
 なぜ同じ言葉を使っているはずなのに伝わらないのか
 「共通言語」の欠如
 「言語化」よりも大切な「共通言語化」の技術
 「対話と哲学のかけ算」が職場を変える

第1章 なぜ共通言語が重要なのか
共通言語がカギとなる時代
 (1)組織内のコミュニケーションの複雑化
 (2)市場のニーズの変化
 (3) 組織形態の変化
ビジネスの世界で注目を集める哲学対話
 ビジネスと哲学の親和性
 企業における哲学対話の活用
 人材育成・チームビルディングにかかわる事例
 イノベーション促進にかかわる事例
 理念の構築や浸透にかかわる事例
 →人は「何かに積極的に取り組むかどうか」を判断する際に、自分がそこに参加する余地や余白があるかどうかを重視します。パーパスに自分の解釈を入れていい、自分の言葉にしてもいい、疑問があるなら投げかけてもいい。そんな状況を哲学対話でつくっていくことによって、 組織への帰属感や参加意識、パーパスの理解を醸成していくことができるのです。だからこそ、 仮にパーパスがあまりにも一方的で、一切の解釈を挟む余地がないようなものだとしたら、それは機能しないでしょうし、その設計自体を見直す必要があるでしょう。

第2章 共通言語づくりの型
共通言語とは何か
 ナラティヴ・アブローチと哲学対話
 →私は、ナラティヴ・アプローチと、その対話観をとても重視しています。その上で、このような対話観から出発しつつ、本書が追加したい「個々人の解釈の枠組みにもとづいた語りと、哲学的な思考の両方を重視する」という対話のモデルです。
 …ですから、哲学は、「みんな違ってみんなよい」「人それぞれ」と考えるのではなく、程度の差はあれ「いつでもどこでも誰にでも当てはまる知」を求めていく営みだと言えるでしょう。
 …哲学的思考による「意味の発見」と、相手のナラディヴを重視する対話による「イメージの形成」が、ある言葉が共通言語になるための条件なのです。
 いつでもどこでも誰にとっても通用する知は存在するのか
 →…「究極的にはどこかで全員が合意できる部分があるかもしれない」と考え、「人それぞれ」にすることなく対話を続けることで、探究するメンバーのあいだで「暫定的な回答」を構築していこうとする姿勢です。この立場は、「可謬主義」とも呼ばれます。
 …ですから、ここでいう普遍性を求めるとは、具体的な状況や文脈から離れて「いつでもどこでもどんな人にも当てはまる知」を追い求めることではなく、「ある認識がどの範囲であればそれが適応できるのか、他の範囲にも適応できないか」と考えることなのです。普遍性を目指すこととは、この意味で「いったん文脈を取り去ってみて、意見と意見、アイデアとアイデアの共通項を探そうとすること」だと考えてみるとよいかもしれません。

共通言語づくりの型
 共通言語づくりの型
  (1) 似ているイメージを見つける
  (2) 意味が似ている言葉同士の違いを明確にする
  (3)1つの言葉に含まれている意味の違いを識別する
  (4)まだ名前のない現象や感覚に名前をつける

第3章 共通言語をつくる「思考」の技術
哲学的思考とは何か
 (1) 批判的に考えること
 (2) 創造的に考えること
 (3)関心にもとづいて考えること
哲学的思考を体験するエクササイズ
 問いを立てる
 見えてきたものを整理する
問いを立てる方法
 「~について考える」という発想をやめる
 問いを立てるのは悪いことか
「よい問い」を考えるための2つのポイント
思考に役立つフレームワーク
 トマス・ジャクソンの「哲学者の道具箱」
 →「WRAITEC」というかたちで示しています。
 ・What do you mean by・・・? (意味) =意見や考えをしっかりと理解する
 ・Reasons(理由)=意見や考えの理由を明らかにする
 ・Assumptions (前提)=意見や考えがどのような前提にもとづくかを明らかにする
 ・Inferences(推論) 意見や考えに至った推論や含意を明らかにする
 ・True(真実)=本当に真実か、何が真実かを確認する
 ・Examples (例)・Evidences (証拠)=主張を明確にし、真実である証明を得る
 ・Counter-examples (反対例)=主張が真実ではないことを明らかにし、限界を見極める
  問いのかたちにすると、たとえば次のようなものになります。
 ・W「それはどういう意味か?」
 ・R「その理由は何か?」「なぜそうなるのか?」
 ・A「〜と考える前提はどこにあるのか?」「~とすると、その前提は?」
 ・I 「もし~なら……………と考えてもよいか?」
 ・T「本当にそうなのか?」「それが真実だとしたらどうなるか?」
 ・E「~という例は何か?」「その証拠はあるか?」
 ・C「~が成り立たない例はあるか?」
 クエスト・プロセス
 ・(1)具体例やアナロジーを活用する
 ・(2)反例を出す
 ・(3)定義や意味を問う
 ・(4)前提や理由を問う
 ・(5) 思考実験をする
 ・(6)判断基準を問う
 ・(7)比較して関連づける
 ・(8)類型化・一般化する
 クエスチョン・ワンダリング
 バイアスを乗り越えるためのフレームワーク
 ・(1)種族のイドラー「ヒトである」という枠を外す
 ・(2)洞窟のイドラー個人の「ナラティヴ」に目を向ける
 ・(3)市場のイドラー伝聞や流行り言葉に気をつける
 ・(4)劇場のイドラー権威や役割を相対化して考える

第4章 共通言語をつくる「対話」の技術
対話とは何か
 社内で対話することは可能なのか 「対話」という言葉の捉えにくさ
 会話と対話
 →対話とは「互いに問いかけ合いながら、相互の意見を理解・尊重し合いながら探究するコミュニケーション」です。
 討論と対話
 議論と対話
「よい対話」のマインドセット
 (0) 一步立ち止まって考えること
 →ここで重要なことは、過度な感情や欲求をコントロールしようとすることです。ここでは、 「過度なネガティブ感情」だけがその対象なのではありません。「ポジティブな感情」であったそれが「過度な」快や喜びであるとすれば、やはり避けられるべきなのです。なぜなら、それをコントロールすることができなくなってしまい、自分が自分自身の主体ではなく 「感情や欲求の奴隷」になり下がってしまうからです。目前の欲求に過度に駆り立てられて行動することで、その場では大きな快楽や喜びを享受していても、結果を見ればマイナスになってしまうということは、想像に難くありません。
 すぐにできるアパティアの方法は、「一歩引いた問い」を立てることです。冒頭の「どうしてこの人は、こんなにやる気がないんだろう!」と感じた例で考えてみましょう。
 ここでは、2つの方向性を取ることができます。
 1つ目の方向性は「そもそもやる気とは何だろう?」という形式で、第3章で紹介した哲学的によい問いを立てることです。すぐによい問いが思いつかなくても、問いについて考えているうちに、心が落ち着いてくるかもしれません。
 2つ目の方向性は、「私は何に対して怒りを抱いているんだろう?」「自分はそもそも怒る必要があるのだろうか?」と問いかけてみることです。つまり「相手に対して怒りを感じている自分自身について問いを立てる」のです。そうすると「怒りの対象」だと思っていたものが、 実は直接の原因ではないことがわかったり、自分が前提にしていた情報や態度に問題があったりすることに気づくこともあります。
 たとえば、部下に対して期間内に実施するように言ったことがおこなわれておらず、あなたは怒っているとしましょう。そこで、なぜそもそも自分は怒っているのか、自分は何に怒っているのか、そもそも怒る必要があるのかといった問いを、一通り立ててみます。そうすると、 そもそも部下に対して、業務がこなせるようになるための教育ができていない、振っている仕事量が部下のキャパシティを大きく上回っているといった、自分の側の問題点に思い至るかもしれません。
 このように問いを立てて考えてみることで、まずは「自分自身でコントロールできることとできないこと」を区別してみましょう。
 その上で「コントロールできるはずなのにできていないこと」は何か、あるいは、「コントロールできないことなのに、コントロールしようとしていること」はないかと考えてみたいのです。そうしてみると、直接の解決にはならなかったとしても、思ってもみなかったさまざまな気づきに出会うかもしれません。いずれにせよ、そのように考えているうちに、気持ちはおさまっていきます。
 (1)これまでの自分の考えにとらわれないこと
 →また、世の中では「わからなくてモヤモヤすること」よりも「よくわかってスッキリすること」が重視されることが少なくありません。しかし、対話では、むしろ「モヤモヤすること」 が大切です。「わからなくてモヤモヤする」と聞くと、通常「ネガティブなこと」としてとらえられがちなのに、なぜそれが大切だと言えるのでしょうか。
 たとえば、教育系YouTuberの短く編集された動画は、まるでスナック菓子のような気分で気軽に「摂取」でき、簡単に「消化」することもできます。気持ちはスッキリするかもしれませんが、どれくらいみなさんのなかに「実際に根づいている」でしょうか。「根づいている」というのは、記憶や印象に残っているとか、実際に役立てているという意味です。私自身も、こうしたコンテンツをよく利用しますが、その場ではわかった気になったけれど意外と内容を覚えていないとか、気晴らし的に消費するだけで実際に役立てられてはいないことがあるように思います。
 しかし「モヤモヤ」はどうでしょう。たとえば「自分はこれまで組織についてある程度わかっていると思っていたけれど、あの人の意見を聞いて、その認識が覆されてしまった」―――― こうした仕方で「しっかりと考えた結果、わからなくなったこと」は、自分のなかに残り続けます。
 モヤモヤは、この意味で私たちの思考や行動を突き動かす、とても強いパワーを持っています、時に「このポイントでモヤモヤする!」という熱意のこもった疑問は強烈に残り、私たちに考え続ける体力と気力、関心をもたらします。それは「ただわからないこと」「わからないかどうでもいいこと」とは決定的に異なり、自分の関心がどこにあるのかを表す「シグナル」 でもあるからです。
 (2) 相手との関係性にとらわれないこと
 →ここで考えておきたいことは、否定にも2種類の否定があるということです。1つ目は、とにかく「その人を傷つけたい」「自分の不満をぶつけたい」という意図で発揮される否定です。 これは「自分がその感情を処理したい」という結果以外、その先に建設的な目的は何もありません。つまり、否定すること自体が目的化しているのです。これを「目的としての否定」と呼びましょう。
 それに対して、2つ目の否定はこれと明確に異なるもので、何かを達成するためにおこなわれる「手段としての否定」です。それは、否定することによって、建設的に何か別の目的を達成しようとしておこなわれます。たとえば、否定することによって何かを理解する、ある考え方や説明をはっきりさせることだと言えるでしょう。これは「その人自身への人格を否定することと、その人の意見とを区別する」といった仕方で世の中で言われることに近いかもしれません。
 …あるいは、上司がコンプライアンスの点で問題があることを言っているけれど、なかなか自分の立場からは直接指摘できないといった場合があるかもしれません。この場合、次のような言い方はどうでしょうか。文章でニュアンスまで表現するのは難しいですが、「あれ、それってクライアント的にはどうなんでしょうね?」のような問いかけです。
 ここでのポイントは4つあります。まず(A)主語は自分からずらしておくこと。次に、 (B)まるで、その場で偶然思いついたかのように感嘆詞などを挟みながら言ってみること。 そうすることで、(C)あくまで「問題解決に主眼がある」と強調すること。そして、(D)直接否定するのではなく、「あくまで別の考え方があり得る可能性」を指摘する表現にすることです。
 これによって「目的としての否定」だと受け取られるリスクを軽減できます。
 もちろん、それでも相手は変わらないかもしれませんし、ずっと問題に気づくことはないかもしれません。しかし、できる限りのことをやってみることはできますし、自分のなかで対話をあきらめない姿勢は保つことができるでしょう。いずれにしても、まずは「受け入れる」のではなく「受け止めた」上で、直接の判断や否定は保留しつつも「問い」を工夫して投げかけてみることが功を奏するかもしれません。
 上司・部下といった通常の役割から解放された哲学対話では、「あの人がこんなことを言うなんて意外だった」ということが必ず起こります。それは、対話の場に入ることで、普段「こうでないといけない」と思い込んでいる関係性から解放されるからです。すると、特定の関係性のなかでは言えなかったこと、さらには、自分のなかにあるとすら思っていなかったことが、 ふっと湧いて出てくるようなことが起こります。私たちは、従来の役割から外れた新たな関係、対話の磁場によって、思ってもいなかった知を表出することができるのです。
 (3)合意や結論を目指すこと結論を目指すこと
 (4)「話す」よりも「聴く/訊く」を優先すること
 (5)自分の経験にもとづいて自分の言葉で考えること
対話から生まれる人間観にもとづいて組織文化を考える
 確固たる自分自身なんて最初から存在しない
 →つまり、私たち自身やあるいは人の意見や考えなどというものはもともと、そこにあるのではなく、対話を通して、その都度更新・構築されていくという見方のほうが適切です。
 哲学的な問いが持っている「包摂する力」
 社員のエンゲージメントを高めるために大切なこと
「よい対話」の場づくり
 物理的な空間づくり
 ・部屋のセレクト
 ・椅子のレイアウト
 ・人数設定
 ・机を置かないこと
 ・座り方
 ・明るさ
 ・服装
 対話を始める前の準備
 「知的安全性」の確保
 ・哲学的な問いについて特権的に答えられる人はどこにもいないこと
 ・対話では、どんな人でも真理の片鱗を持っている可能性があること
 ・決して結論や収束を急ぐ必要はないということ
 ・意見はいつ変わっても構わないし、むしろ変わっていくものであること
 ・必ずしもまとまったかたちで理路整然と自分の意見を表明しなくてもよいこと
 ・常識や普通から外れるようなことであっても、遠慮せずに話してよいこと
 ・他人の意見や自分の意見をおもしろおかしく脚色したり茶化したりしなくてよいこと
対立を乗り越える方法
 (1) 2種類の対立を識別する
 (2) 経験と言葉を掘り下げる
 (3)両者に共通の目的を見出す

第5章 共通言語が生まれる文化をつくる
共通言語が生まれる瞬間
 (1)「あ、それって○○ということですね」という発言が生まれる瞬間
 (2) 「いままでモヤモヤしていたことが言語化された」と感じる瞬間
 (3)「あのときの○○みたいな」と語る瞬間
 (4)新しい言葉が生まれる瞬間
「新しい」を共通言語化するワークショップ
 (1) 企業が抱える課題のヒアリング
 (2) 対話の準備
 (3) 似ているイメージを見つける
 (4)意味が似ている言葉との違いを明確化する
 (5)1つの言葉に含まれている意味の違いを識別する
 (6) まだ名前のない現象や感覚に名前をつける
 (7) ワークショップ後におこなうこと

「信頼」を共通言語化するワークショップ
 (1) 企業が抱える課題のヒアリング
 (2) 対話の準備
 (3) 似ているイメージを見つける
 (4)意味が似ている言葉との違いを明確化する
 (5)1つの単語に含まれている意味の違いを識別する
 (6)まだ名前のない現象や感覚に名前をつける
 (7)ワークショップ後におこなうこと

日々の業務のなかで対話を生み出す工夫
 (1)ミーティングを対話の場に変える
 (2)1on1を対話の場に変える
 (3)プロジェクトの振り返りを対話の場に変える
 (4)共通言語を文書化する

おわりに 対話の力で企業は変わる
 「荒れた学校」での日々
 「哲学対話」を通して気づいたこと
 教育現場での手応え
 ビジネスの領域への進出
 会社から社会を変える

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2025年06月22日

Posted by ブクログ

哲学対話は経験していたし、その価値もある程度わかっていたが、企業活動における哲学対話の価値を自分なりに言語化するきっかけになって良かった。
もともと宇田川さんの本をきっかけに、組織が構造的無能に陥らないために対話が必要という考えにとても共感していた。

■メモ
哲学対話の価値は車座になって答えのない問いを囲み議論することで、参加者に対し以下の体験を強制できることにある。
・お互いがフラットに話し合う体験
・答えがないので発言の価値が等価になる体験
・答えがないので誰でも参与する余地がある、自分の発言が取り上げられる体験
・合意形成を図るという共通作業が仲間意識を醸成する体験

結局哲学対話とは
人同士が活動する組織という集合体において、個々人の中に存在する「わかったつもり」になっている細かい認識のズレをお互いにぶちまけて、その認識の違いをすり合わせる共通作業を通してお互いの違いやナラティブを味わう体験。
のこと。

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2025年09月25日

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