【感想・ネタバレ】戦中派虫けら日記――滅失への青春のレビュー

あらすじ

昭和17年戦時下、20歳の山田風太郎は日記を書いておこうと思い立つ。「日記は魂の赤裸々な記録である。が、暗い魂は自分でも見つめたくない。(略)しかし嘘はつくまい。嘘の日記は全く無意味である」戦争のまっただ中、明日の希望もなく、精神的・肉体的飢餓状態にある1人の青年がここにいる。

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Posted by ブクログ

敗戦日記の金字塔ともいえる『戦中派不戦日記』、本書はそれに先立つ昭和17年から19年までの日記。山田風太郎、20歳から22歳の日々。
上京は昭和17年8月。日記を付け始めるのはその3カ月後。欠かさず付けているわけではない。でもしだいに、日記はほぼ毎日、内容もかなりしっかりしたものになってゆく。「あとがき」では、「自分との対話」をしてみたかったのだろうと書いている。
前半は沖電気の社員、後半は東京医専の医学生。副題「滅失への青春」に示されるように、時代は重く暗く、どうにもならない状況に向かいつつあった。しかしそれにしても、風太郎青年はがつがつとよく食べる。同じく読書についても貪欲。そして五反田、新宿や神田周辺をよく歩き回っている。
「あとがき」には、この日記以前の個人的状況が述べられている。父母の死、義父との不仲、学業不振と素行不良、家出……戦中や敗戦直後よりも、そちらのほうが精神的にきつかったようだ。日記は自立と成長のための補助具だったのかしれない。

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2025年05月05日

Posted by ブクログ

戦後から見た戦前の暗い抑圧された時代とは異なる現代と大きくは変わらない日常。戦争に巻き込まれる庶民、現代にもあり得ることを教えてくれる、戦中の貴重な一次資料。

昭和17年11月25日から昭和19年12月31日まで。筆者20歳から22歳の日記。
家を飛び出した天涯孤独の青年。軍需工場で働きながら大学医科を目指す。

物資が不足して高騰し長距離切符も手に入らないが、さほど庶民感情というか生活は変わらない。戦時中ではあっても熱狂はなく淡々と暮らす。少しづつ戦局は悪化していきついにB 29により東京が空襲される。だがまだ終戦前昭和20年に起こる悲劇を誰も知らない。
もともと出版を考えることのない、作家になる前の装飾のない日記だけに真実が描かれていることだろう。

お金に困り懸賞小説に応募、あっさり入賞してしまうところ、そして空襲下でも毎日の読書歴に後の大作家の片鱗が見られる。

本作は昭和20年の「戦中派不戦日記」に続いていく。空襲下の日記は他にもあるが、日本の逆転勝利を信じる純な若者の目から見た戦時中の生活、貴重な記録であろう。

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2020年02月20日

Posted by ブクログ

再読
『戦中派不戦日記』に先立つ昭和17年から19年の日記
日記は公開を目的としたものでなくとも
読まれることは意識しているのでそのまま本当ではないにせよ
ちょっとしたどうでもよいようなところの集積に
その時代が映し出されて心地良い
いつの時代もひとの変わらなさゆえに
それぞれの時代が価値深い作品

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2018年10月19日

Posted by ブクログ

山田風太郎さんの日記。昭和17年(1942年)11月から昭和19年(1944年)12月までの日記である。大東亜戦争まっただ中の日本がどんな様子だったのかを知ることができる。昭和20年(1945年)~の日記も出版されているようだ。

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2018年10月17日

Posted by ブクログ

一庶民の視点から見た、太平洋戦争中の日本の描写と感慨であり、貴重な史料である。山田が有名にならなければ世にでることはなかっただろう。

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2014年10月06日

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