あらすじ
西欧の没落は決定的だ。世界の中心はアジアへと回帰する。日本はそこで成熟国らしく生きればいい──。
ヨーロッパは金融と為替は統合したものの、財政危機によって分裂し始め、次第にユーロは減価していく。頼みの綱のアメリカも財政がとても厳しく、不況は新興国にも及んでいる。減速局面にある世界経済の中で、日本経済は相対的に順調であり、ユーロ安・ドル安・円高が続く。
世界経済は、西洋の没落とアジアの台頭(リオリエント)という100年に一度、あるいは数百年に一度の大きな構造変化の最中にある。その変化の中で、国内経済が成熟段階にある日本企業は、東アジア・南アジアに進出することによって高成長を維持することが可能である。
日本にとって必要なのは、アジアの主要なプレーヤーとしてアジア経済統合の重要な役割を担っていくことであり、「日本は成熟国らしく生きればいい」。「ミスター円」が、経済成長や発展に関する考え方を見直し、成熟社会のあり方を提言する。
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Posted by ブクログ
”新たな成長戦略”というが、成熟国家としての日本に成長戦略が必要か。 多くの日本人は成長シンドロームから抜け出られないようだが、いまさら、発展途上国の中国やインドと競争してもはじまらない。必要なのは成長から成熟へのパラダイムシフトだ。成長から成熟に発想を転換して、日本の良さを再認識するべきだ。
他国にない日本らしさ、ユニークな日本の文化は江戸の後期から明治維新までに完成した。元禄時代の17世紀に日本の人口は急増して3000万人に達するが、文禄時代の18世紀から19世紀にかけては3000万人で安定した。江戸後期、貨幣経済が拡大し、浮世絵、文楽、歌舞伎、大相撲などの庶民文化が花開いた。成熟期という点で、江戸時代は現代と二重写しになる。
産業革命で後れをとった日本は、欧米からの植民地化を避けるために、明治以降欧米の先進的な文明を導入し、欧米を目標に近代化を進めてきた。欧米に対するコンプレックスは今でも色濃く残っている。しかし、日本人が日本について悲観的になる理由は全くない。
日本に住んだことのある外国人は、日本は世界で最も住みやすい国だという。 日本は、環境、安全、健康に優れた成熟先進国の一つのモデルだ。 一人当たり名目GDPではフランス、ドイツ、イギリス等のヨーロッパ諸国より豊かになった。相対的貧困率ではアメリカより低く、平均的な日本人は世界で最も豊かになったといえる。これ以上の豊かさを求めるよりも、豊かさの質を高めることが必要ではないか。確かに人口は減少してきているが、江戸時代もその後期には人口は増加していなかったが、その安定のなかで文明を発展させ、成熟を楽しんでいた。」
そんな日本は、これから発展することが明らかなアジアにおいて中心的な役割を果たすことが間違いない。だから対ドル、対ユーロで75円ぐらいになってもおかしくないそうです。
今は短期的に円安方向に動いているが、長期的にみて日本が少子高齢化で停滞して大幅な円安(150円ぐらい?)になるという説よりも、榊原さんの円高説のほうが、明るい日本の未来を描いているように思います。