あらすじ
スウェーデンの教育システムと学校文化を楽しく理解できる一冊。スウェーデンの「共生」教育カリキュラムに焦点を当て、その独自性を著者の20年にわたる現地調査から得られた知見で紐解く。日本の教育との比較を通して教育のあり方について新たな視点を提供。
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Posted by ブクログ
知人に勧められて本書を読みました。スウェーデンの学校については全く事前知識がない中、本書を読んで、なにか正しい意味での「ゆとりのある教育」の姿を垣間見た気がしました。スウェーデンではFIKAというお茶を飲む習慣があるそうですが、特に教員側にとってはこのFIKAの習慣こそがゆとりの源泉になっている印象を受けました。
OECD調査によると、中学校教員の勤務時間について、日本は先進国中最も長く、スウェーデンは短いとのこと。特に日本は部活動を学校が担っているため、先生がその面倒をみなければならないが、スウェーデンでは地域のコミュニティがそれを担っているため、教師の負担は非常に小さいということでした。著者が述べているように、教師のゆとりが教育の質向上につながるとしたら、このあたりの仕組みはそろそろ見直す必要があるのでしょう。
本書の中で印象に残ったのが「学校は子供の仕事場です」とスウェーデンの学習教材で書かれていることでした。スウェーデン人にとって仕事とはお金を稼ぐことではなく、自身の成長、学び、生きることそのもの、という印象を受けました。私自身、「学び、働き、遊び」の境界が近年ますます曖昧になっているのではないかと感じていることもあって、この言葉には強い共感を覚えました。
そのほかにもスウェーデン人の個人観、多様性を非常に重視する教育などについても記述されていましたが、すべて日本の参考にするというよりは、スウェーデンの独自な価値観としてみるべき点もあるのかなと思いながら読みました。いずれにせよ自分の視野が広がった気がしましたし、教育関係者でなくても読みやすい本だと思います。