【感想・ネタバレ】スウェーデンの優しい学校――FIKAと共生の教育学のレビュー

あらすじ

スウェーデンの教育システムと学校文化を楽しく理解できる一冊。スウェーデンの「共生」教育カリキュラムに焦点を当て、その独自性を著者の20年にわたる現地調査から得られた知見で紐解く。日本の教育との比較を通して教育のあり方について新たな視点を提供。

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Posted by ブクログ

30年もの長きにわたり,スウェーデンの学校を視察してきた著者による,スウェーデンの教育に関する本。

タイトルと冒頭の内容だけ読んだ段階では,もっとFIKA(フィーカ)が学校の中で果たしている役割について書かれている本なのかな?と思っていたのだけれども,いざ実際に読んでみると,わりとがっつり本格的な教育学のお話が中心だった(笑)

スウェーデンを始めとする北欧諸国の文化や,それに基づいた人々の性質といった基礎的な部分は,これまでに何冊か他の書籍を読んだ中で得た知識があったので,さほど目新しい内容では無かったのだが,さすがは現地の学校の視察を長く行ってきた著者が書いた本だけあって,実際の学校生活の様子に関する記述は,かなり具体的かつ詳細に踏み込んだものとなっていて,読み応えがあった。


以下は,いくつかこの本を読んだことで得られた新しい知識や,特に印象に残った部分についてを書き残しておきたい。

まずは,学校で使われている学習材についての話。
学習材というのは,日本で言うならば,教科書と参考書の間にあるような本とでも例えれば良いのだろうか。

スウェーデンの基礎学校(およそ日本における義務教育課程にあたる学校)においては,定まった時間割というものが存在しないらしく,週の中でプランの中に定められている各教科ごとの時間数に到達するならば,日毎に学ぶ教科を自由に組み立てることができるそうで,それはつまり,日本では当たり前になっている,毎日教科書を準備して学校まで持っていくという習慣が成立しないことになるわけだ。

では,どのようにして学習を進めているのかというと,教室内に常に学習材と呼ばれる図書が置かれていて,必要な時にはそれを貸与することで,授業を行っているとのこと。

また,スウェーデンでは,基本的には宿題を出すことがないというのも,教科書の持ち運びが不要であることと密接に関係している要因であるように思われた。

教科書が存在せず,貸与制の学習材を使用するので,必然的に学びを重ねていく上では,ノートが重要になるようで,子どもたちは個人個人で世界にひとつだけの独創的なノートを創作して,学びの友とするので,ノートに対する愛着が強く育まれることにも繋がっているそうだ。


平等意識が強い国であることは,当然知ってはいたが,ジェンダーニュートラルトイレについての話は,本書においても最も心を揺さぶられて,今まで自分が持っていた意識や見解の至らなさを,痛感させられるものがあった。

トイレをジェンダーニュートラルにすることで助かる人は,何もトランスジェンダーの方たちだけではなくて,たとえば小さい男の子を育てている母親とか,逆に小さい女の子を育てている父親,障がいがあるお子さんを育てている親御さん,障がいを抱えていらっしゃる大人やお年寄りに至るまで,幅広い層に及ぶというのは,考えてみれば当然ではあるのだが,思い至らず浅慮であったなと反省した。

ただ,とは言え日本の現状では,性犯罪に対する不安なども考慮すると,ジェンダーニュートラルへの一本化というのは,まだまだ課題が多くて難しいのだろうなとは感じる。
現状では男女別トイレが大多数で,誰でもトイレが一部あるいは少数として利用されているが,この状況が逆転して,ジェンダーニュートラルのものが大半で,男女専用トイレは気になる人向けに配慮して少数になるくらいのところをまずは目指すというのが,現実的な妥協点なのかもしれない。


あらゆる面において,現状の日本と比較すれば,格差が少なく,平等性が高く推進されて保たれているスウェーデンであるとはいえ,やはり時代の流れとともに,そのあり方には,変化や課題も多く感じられるようにはなってきていて,近年では保守傾向が強まり,移民推進政策に対する批判,反対意見も多くなってきてはいるようである。

また,アメリカ的な新自由主義の価値観が,教育面にも波及し始めており,日本ほど露骨ではないものの,教育がビジネス的な側面,お金儲けの手段として利用されるような動きも,一部には見られるようになってきているとのことである。

新自由主義的な価値観が教育に及ぶことについては,著者も強く反対の意を示しているが,そもそも日本がそうであるのだが,過度な競争は,とりわけ教育という観点において,はたして本当に必要なものなのだろうか?

過度な競争を強いられ,自己責任を追及され続ける社会は,周囲の人間全てを敵と見做すことへと繋がっており,絶対的に息苦しくなる。

これこそ,北欧諸国の人間関係のベースが,"信頼"で成り立っているのに対して,現代の日本における人間関係のベースが,"不信"になってしまっている原因の,根幹を成すものではないだろうか?

さらに言えば,競争における序列付けと格差は,間違いなく差別意識を助長させていると思われる。
日本の学校において,いつまで経ってもいじめが社会問題として取り上げられ続けていること,スクールカーストなどという,馬鹿げた階層構造が見受けられることなどは,間違いなく競争による序列付けを是としている大人社会からの反映だろう。


改めて,世界人権宣言が遵守され,すべての人がその人らしく,自由にのびのびと,その個々の好みや特性に応じて,能力を発揮して,楽しく生きていくことができる日が訪れることを願ってやまない。
そのためにも,自分が自分の範囲でできることとして,学びを継続していくことの大切さを,改めて身に沁みて感じさせてもらえた本だったと思う。

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2026年03月24日

Posted by ブクログ

知人に勧められて本書を読みました。スウェーデンの学校については全く事前知識がない中、本書を読んで、なにか正しい意味での「ゆとりのある教育」の姿を垣間見た気がしました。スウェーデンではFIKAというお茶を飲む習慣があるそうですが、特に教員側にとってはこのFIKAの習慣こそがゆとりの源泉になっている印象を受けました。

OECD調査によると、中学校教員の勤務時間について、日本は先進国中最も長く、スウェーデンは短いとのこと。特に日本は部活動を学校が担っているため、先生がその面倒をみなければならないが、スウェーデンでは地域のコミュニティがそれを担っているため、教師の負担は非常に小さいということでした。著者が述べているように、教師のゆとりが教育の質向上につながるとしたら、このあたりの仕組みはそろそろ見直す必要があるのでしょう。

本書の中で印象に残ったのが「学校は子供の仕事場です」とスウェーデンの学習教材で書かれていることでした。スウェーデン人にとって仕事とはお金を稼ぐことではなく、自身の成長、学び、生きることそのもの、という印象を受けました。私自身、「学び、働き、遊び」の境界が近年ますます曖昧になっているのではないかと感じていることもあって、この言葉には強い共感を覚えました。

そのほかにもスウェーデン人の個人観、多様性を非常に重視する教育などについても記述されていましたが、すべて日本の参考にするというよりは、スウェーデンの独自な価値観としてみるべき点もあるのかなと思いながら読みました。いずれにせよ自分の視野が広がった気がしましたし、教育関係者でなくても読みやすい本だと思います。

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2024年12月30日

Posted by ブクログ

スウェーデンでは、KIKAというお茶を飲む習慣がある。教員は職員室でゆったりとした空間でFIKAをする。日本の学習指導要領のようにがちがちのカリキュラムではなく、それぞれの学校の裁量でカリキュラムが編成される。

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2025年01月18日

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