【感想・ネタバレ】「透明」になんかされるものか 鷲田清一 エッセイ集のレビュー

あらすじ

哲学者・鷲田清一、6年ぶりのエッセイ集!
ウクライナや震災、未知のウイルスなど、答えのでない出来事に隠れた問題の本質を、深くやさしい言葉で解き明かす。

日々流れてくるニュースをどう受け止めればよいかわからない人、さらに一歩踏み込んで考えてみたい人に。

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疑いもなくじぶんはここにいる(はず)なのに、それがだれにも見えていない、このことを「透明」というふうに表現している文章に、ここ数日間のあいだに立て続けに出会った。
見えているのにだれも見ていないものを見えるようにするだけでなく、だれかの存在をそのように見えなくしている社会の構造そのものを見えるようにしていかなければならない。社会について考えるということには、少なくともそうした課題が含まれているとおもう。」(プロローグより)
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・ウクライナやガザの地で起こっている戦争を、日本の私たちはどう受け止めればいいのか
・コロナウイルスの経験を人類は今後にどう生かすのか
・戦禍のウクライナから来日した詩人が話したこと
・旧ジャニーズや政治家の会見に見られる「ずるい言葉」
・SDGsという「わかりやすい正しさ」が隠しているもの ……

まぎれもなくそこにあるのに、
だれの眼にも映らないようにされている物事を、見えるようにする60篇。
★考える足がかりとなる、読書リスト付き!

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Posted by ブクログ

鷲田さんの著作は「読むとは、読書とはこういう営みだった」ということをいつも思い出させてくれる。スラスラと、流れるようにページを捲ることなどまあできない。何度も同じ文章を行ったり来たりして、一度顔を上げて頭を休めて、また戻ってくる。そうすると、さっきよりもほんの少しだけ言葉が宙を舞わなくなる。「読む」ということ「分かる」ということ、その手触りを思い出させてくれる。

コロナ禍や戦争があったこの時代、社会が何も変わっていない訳などなく、「変わっているのに何にも気づけない」人、日々の瞬間瞬間のスピードに飲み込まれ、考えることを放棄せざるを得ない人が、自分を含め本当に増えているのだと思う。
そのことに自覚的でありながら、今を生きる1人の人間としての責任と誇りを持ち、読むこと、言葉にすること、伝えることを諦めてはならないのだと、そう思った。

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2025年07月03日

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