あらすじ
戦争を始めるためにはなにが必要か? それは膨大なペーパー・ワークを伴う「戦争計画」に基づいた動員・集中・開進・作戦という兵力の運用である。では、太平洋戦争はどう準備されたのだろうか。支那事変から真珠湾攻撃までの経過を検証し、「縄張り意識」と「無責任」が支配する官僚国家が引き起こした悲劇の内幕に迫る。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
誰が始めたのか?それを言ってしまうとミステリの落ちをばらしていしまうようで良心が痛むが、あえて言うなら「犯人」自体に目新しさはない。本書の目新しさは、東条英機というリーダーを輩出しその無責任ぶりが戦後も繰り返し批判される陸軍ではなく、主に海軍の責任を、それも太平洋戦争の開戦という点に絞って批判的に検討している点である。ハワイ作戦という手段に縛られ「何のために戦うのか」という戦争の目的や理念が置き去りにされたという指摘は一理あるといえる。
数多くの歴史家の論を袈裟懸けにして断定的に議論を進める反面、論理の飛躍や見過ごせない矛盾も多い。(たとえば著者は緒戦での首都の炎上程度では国民の士気が阻喪することはないというが、現在の常識から見ても当時の情勢からもかなり無理のある議論で、むしろそうした精神主義こそがリベラリストの本来の批判対象であるべきでは。)
このような考え方もある、という程度にとらえるなら有用な本だろう。