【感想・ネタバレ】イメージ、それでもなおのレビュー

あらすじ

監視の目を盗み、ゾンダーコマンドによって撮影された四枚の写真から、アウシュヴィッツの真理に触れることはできるのか。

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Posted by ブクログ

アウシュヴィッツから「もぎ取られた」4枚の写真。「イメージ」はユベルマンの中心的概念なのだが、基本的には言語と同様の構造を取る。それは「イメージ」が「すべて」を表象するわけではないという不可能性を自覚しつつ、想像不可能とも思われるような極限的状況をも想像させる力を持つということだ。ただ、やはりユベルマンにとって「見る」ことを伴うイメージは言語と異なる重要な意味合いを持つことも確かで、「黒い塊」という「視覚的刻印」がガス室の「扉」であることに気がついたのも彼の「見る」ことへの執着ゆえだろう。
異質性や想像不可能性こそが、接近を可能にするー。共通項なき同質性が、対話可能性を開くのであろうか。
モンタージュのイメージ。バタイユやベンヤミンにおける星座的付置とほぼ同義であろうが、ここではやはりたちまち失われてしまうが一定の意味をもつ「閃光」というベンヤミンの表現を採用すべきだろう。そしてそのイメージが映像として動き出すとき、我々はイメージの時間性を意識せずにはいられまい。
「不可能なもの」に対峙したとき、言語やイメージには何が可能なのだろうか。相対主義に立つことの苦しさを知りながら、それでもなお絶えず再考を迫ってくる、そんな一冊である。

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2025年09月26日

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