あらすじ
ユダヤ教、キリスト教、イスラム教――。何が同じで、何が違うのか?
世界を取り巻く様々な「争いの要因」と言われるユダヤ教、キリスト教、イスラム教の三大一神教。しかし、本当にそうなのか。本書は、3つの宗教における「聖典」「思想」「人物」の基礎知識を選りすぐり、「つながり」の視点でこの上なく分かりやすく解説する。旧約聖書・新約聖書・クルアーン、それぞれの聖典にはどのような共通点があり、その思想にはどんな特徴があるのか。「アブラハム」「イエス・キリスト」を軸に聖典を比較してみると浮かび上がる各宗教の固有性とは。本格的かつ平易な解説で知られる東大教授による、2時間で読める集中講義。
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Posted by ブクログ
山本芳久著『三大一神教のつながりをよむ』の感想です。
キリスト教VSイスラム教という対立で捉えられがちな一神教の解説ですが、論点を絞った非常にわかりやすい本です。
旧約聖書(タナッハ)、新約聖書、クルアーンのそれぞれにおいて(あるいはユダヤ教、キリスト教、イスラム教のそれぞれにとって)、啓示とは何か、アブラハムやイエスはどういう存在かが、やさしく解説されています。
特にイスラム教には馴染みがなかったのですが、イスラム教でもイエス(イーサー)は五大預言者の一人で、優れた預言者だからこそ(十字架の上で)そんな悲惨な死に方をするわけがない、と考えられているというのは初めて知りました。
耳障りがよくてなびいてしまいがちな宗教の多元主義に関する批判も紹介されていて、勉強になりました。
Posted by ブクログ
ユダヤ教・キリスト教・イスラム教を、三大一神教(セム的一神教)として統一的に捉え、それぞれの共通点・相違点を聖典などを読み解くことで分かりやすく解説してくれる良書
啓示・キリスト・アブラハムなどこれらの宗教における重要なファクターがそれぞれの宗教でどのように扱われてきたのか、著者の一般人に寄り添った書き方で要点を掴んで書かれている
さらに、話は宗教間対話にまで及び、対立構造を取られることも多いこれらの宗教について、過去から現代までの学者の文献を引用して、対話に至るまでの必要不可欠な要素を導く。「みんな違ってみんないい」というような「多元主義」は果たして本当に正しいと断言できるのか?
簡潔な文章の中に重要な意味合いがふんだんに込められているため、三大一神教に関心をもつきっかけとして最良の書だと思う。
「もし対話というものがありうるとすれば、それは互いのアイデンティティの濃い部分を捨てておこなうものではなく、お互いに濃い部分を認め合いながら、共通点を見出したり、共通点でなくても通じ合うものを見出したりする、そのような行為ではないかと考えています。」