あらすじ
焼鳥店の主人はとみに年齢を感じるようになった。常連客でキャバクラ勤めの女性は、夫からDVの被害に遭っており、それを知った高齢のタクシー運転手は……(表題作)。事業に失敗し、同棲中だった若い女に貯えた金を持ち逃げされ、死に場所を探す男は道の駅で一匹の猫と出会うが……(「旅立ちの空」)ほか、ゾッとする展開で心底イヤになってくるが、その先に一条の光が見出せる、滋味溢れるサスペンス作品を7編収録。
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Posted by ブクログ
ダークな短編7作
・孤老たちの沈黙
・凍えた親子
・渋滞からの脱出
・都市伝説の夜
・虫たちの島
・ノーマネーノーライフ
・旅立ちの空
人間の心の隙間に入り込む悪魔のエピソード。
ホラーではないけど、ちょっと冷っとする感じがたまらくいい。
Posted by ブクログ
孤独な中高年を待ち受ける絶望と希望の物語とは・・・
そして、タイトルの意味を知った時、背筋がゾッとすること・・・
7つの短編集は全てが面白かったです。
本当にタイトルを知った時、ゾッとする怖さがありました。
個人的には「渋滞からの脱走」が良かったです。
あのスピード感と爽快感がたまらなく好きでした。
ただ実際に体験するのは勘弁です。
人の好みが分かれる短編集だと思います。
もっと、福澤徹三さんの「侠飯」以外の作品を読みたくなりました。
Posted by ブクログ
福澤徹三『孤老たちの沈黙』光文社文庫
中高年の絶望と希望を描く7編を収録の短編集。
まだまだ輝かしい未来が待ち受けている若い世代の読者には、本作に描かれるような年寄りたちの苦悩や苦労は理解出来ないであろう。
自分も還暦を迎えているが、50代とは違う体力の衰えや、身体のあちこちの痛みに驚きながら、半ばそんなものかと諦めている。それでも、慎ましくても構わないので、平穏無事な老後を過ごしたいと思っている。
『孤老たちの沈黙』。老いは誰にも訪れるが、20代、30代の頃には自分が還暦を迎える時が来ることなど全く考えていなかった。長く生きていれば、恥ずべき過去の1つや2つはあり、歳を重ねるにつれ、時折思い出しては苦い気持ちになる。
この短編は、様々な客が訪れる焼鳥屋で静かに繰り広げられるサスペンスと人生の機微を描く、味わい深い短編であった。
焼鳥屋の主人である古屋心平は、還暦を迎え、最近はとみに年齢を感じるようになった。常連客のキャバクラに勤める女性は夫からのDVにあっていた。同じ常連客でその女性とたまに同伴するという70歳を過ぎたタクシー運転手は女性の身を案じ、離婚を促していた。やがて明らかになる女性の苦悩と驚きの展開……
『凍えた親子』。非常に恐ろしい現実。結婚しない、或いは結婚出来ない中高年男女が増えているという。その原因の一つに経済的な問題があるのだろう。安定した職業に就けず、非正規労働やアルバイトで糊口を凌ぐ人びとが増えているのだ。
そんな中高年男女の出会いと高齢の親を抱えた苛酷な暮らしを描きつつ、最後は肝が冷えるような恐怖の結末へと読者を誘う。
まともな仕事にありつけず、年老いた父親の年金だけを頼りに生きる50代の息子はその父親の介護に疲れ果てていた。ある日、出会い系アプリで知り合った女性と良い仲になり、男女の関係になるが、その彼女はとんでもない秘密を抱えていた。
『渋滞からの脱出』。ニュースなどでも時折、煽り運転の問題が取り上げられている。ああいう奴らは何故煽って来るのだろう。
意外にも爽快感がを感じる短編。日常味わうことの無い恐怖とスリル。
軽自動車で妻の妹の結婚式に向かう夫婦が高速道路で半グレたちが乗る車に煽り運転をされ、金まで要求される。たじろぐ夫に対して、妻が金蹴りと催涙スプレーで半グレたちに対抗し、高速道路を降りて、下道で逃げる。
『都市伝説の夜』。口裂け女、トイレの花子さん、だるま女、きさらぎ駅とお馴染みの都市伝説が登場する。
然程、恐怖は感じられぬ結末が物足りない。
大学の都市伝説研究会というサークルで学生たちをとキャンプに行った52歳の大学講師。キャンプの夜、都市伝説の話で盛り上がるうちに近くにある廃墟となったラブホテルの開かずの間に行こうという話になる。
『虫たちの島』。今やどこの旅館もホテルも禁煙で、その反面、酒は喜んで提供するのだから納得がいかない。
一見、仲の良さそうな家族にも何かしらの問題が潜んでいる。さて、結末や如何に……
台風が迫る中、40代半ばの夫婦と13歳の息子が離島に旅行に行く。着いた旅館は料理にはオーガニック野菜を使っているとか、敷地内は完全禁煙だとかやたらと五月蝿く、それでいてサービスは良くない。夫は密かに職場の女性社員と浮気を重ねていたが、別れるタイミングを図っていた。
『ノーマネーノーライフ』。世の中、いつ何がどうなるか判らない。また、様々な詐欺や犯罪が身の周りで蠢いており、如何なる時も気が抜けないのだ。
人生の落し穴に地獄を見るのか、それとも……
60歳で迎えた定年後、嘱託として65歳まで勤め上げた主人公は妻と別居し、慎ましく暮らしていた。主人公は行き付けの安いスナックで知り合った不動産会社の代表取締役の誘いで、南国の島でバカンスを楽しむことにした。しかし、それは大きな罠で、主人公は窮地に陥る。
『旅立ちの空』。車中生活にまで堕ちた中年男性の再生の物語。本短編集の最後を飾るに相応しいなかなか良い話であった。
新宿歌舞伎町で2軒のキャバクラを経営していたが、コロナ禍で閉店を余儀なくされ、同棲していた若い女性に金を持ち逃げされ、違法賭博や闇金に手を出し、歌舞伎町から逃げ出した中年男性は死に場所を求めて、西に向かう。
本体価格760円
★★★★