あらすじ
歴史の修正が始まった。
2025年1月20日夜、第47代アメリカ大統領に返り咲いた共和党のドナルド・トランプは4年ぶりにホワイトハウスの執務室「オーバルオフィス」に席を落ち着けると、その手に握った巨大な権力を無造作に振るった――。
国際経済と安全保障の規律をねじ曲げる「暴君」の帰還は、世界を混乱の渦にたたき落とし、大国としてのアメリカへの信頼を損なっている。
背景にあるのは、アメリカ全体を分断する巨大な遠心力。
一国に2つのアメリカがあるような「冷たい内戦」をもたらすものの正体に、トランプ信者、反トランプ主義者、マイノリティ、不法移民ほか、多数の現場取材から描き出す。
日本には届かない生の声を現地特派員が丹念に拾った渾身のルポルタージュ!
「実際にこの国で暮らす人々の声を集め、彼らが世界をどうとらえ、何を感じ、どう考え、どう行動するか。
その積み重ねの中から、アメリカの全体像に対する理解の解像度を高めようというのが、私がこの本で試みたことだ」
――本文より
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
デマゴーガー ポピュリスト ファシスト
「最近は他人の言葉遣いによって簡単に気分を害する人が多い」
多様性の否定は過度なポリコレへの反動をポピュリストトランプが利用しただけ 思想は無い
等々
今の日本というか世界に当てはまる言葉多数
そして何故そうなっているのか
もちろんそれは原因の一つに過ぎないかもしれないが、ああそうだったのか と腑に落ちる事が多く書かれている
来年 あるいは次の大統領選が終わった時に再読したい
Posted by ブクログ
年明け早々、あの国、というか、あの人物があれこれやらかしている。
まずは、ベネズエラへの侵攻だ。あまりの手際の良さに、むしろ快哉を叫びたくもなるが、これを許していては国際秩序は保たれない。
そして最近は、米国内でのICEと略称される、 移民・関税執行局(Immigration and Customs Enforcement)の暴挙だ。
ミネソタ州ミネアポリスでは、1月7日に続き、2人めの犠牲者が出ている。不法移民に対して発砲しているのかと思ったが、犠牲者は米国人。退役軍人向け病院で働く看護師だった。当局の厳しい取り締まりに対するデモ参加者に実力行使に出た移民取り締まり要員に抵抗し撃たれた。
このICEは同時多発テロ(2001/9)を受け、翌年成立した国土安全保障法に基づく国土安全保障省の捜査機関として2003年3月に設立された、歴史の浅い機関だが(だからと言って、FBI、CIAと言った歴史ある機関だから是という意味ではない)、ここに来てトランプの片棒を担ぐかのように猛威を振るっているとしか思えない。
ミネアポリスというのも意味深で、2020年5月の起こった警察官による黒人射殺事件、その後「Black Life Matters」運動が始まった都市だ。そこを、トランプ政権は聖域都市としてターゲットにしているのは明らかで、移民狩りの『オペレーション・メトロ・サージ』作戦が繰り広げられている。
かの国の内部で、なにかが起こっている? そう思って、1年前の著書だが、現場に一番近いところにいる日経新聞社の元ワシントン支局長、現米州総局長のルポルタージュである本書を手に取ってみた。
全体を俯瞰した大局の解説、分析というより、紙面の大半は著者自身の個別取材による、アメリカの市民の声が拾い上げられているのが特徴だ。故に、恣意的に取材対象が選ばれている可能性、反トランプの世相を際立たせようとコメントや事実が取捨選択はされているとは思うが、他では味わえない生々しさは感じることが出来る。共和党支持でも民主党支持でもない、中間層とも言える一般市民の生の声、肌感覚が伝わってくる。
かの国の現場から見えてくるのは、やはり格差による上下の分断、そして後半に強調される移民の問題、とくに中国移民の存在、トランプ本人の妄想、それに追随する取り巻きどもの存在 etc. etc., どれも一過性 ― 長くてもトランプの任期の間だという楽観 ― の問題と片付けられがちだが、2001年9月以降明確になった、寛容でない国家のあり方、独善的な姿勢が大きな潮流となって、今、うねっているように思えてくる。
共和党の元下院議長のポール・ライアン氏は、今のトランプ現象、すなわちトランプの存在そのものも、
「分断など現在起きていることの原因ではなく促進剤」とある。
もちろん、トランプにより事態は顕在化し、過激さを増してはいるが、大元となる原因は、もっと根深いものだということだろう。
トランプの功罪は、のちの歴史家が判断するのだろうが、原因、問題を看過せず表に露わにしたという点では、実は評価されるべきなのかもしれない。そんな気にもなる。
そんな問題だらけのアメリカの国内の様子を、ミクロな取材を通じて明らかにしている稀有なレポだ。
あとは、ほどほどのところで双方矛を収め、映画『CIVIL WAR』(2024 アレックス・ガーランド監督)が現実のものとならないことを願う。