【感想・ネタバレ】女人京都のレビュー

あらすじ

あの人もこの人もみんな京都に住んでいた!

京都に恋をした、あなたへ

清少納言、日野富子、淀君、上村松園ほか、京都に生きた四七人の足跡を辿る時空を超えた街歩きガイド&エッセイ!

「京都の魅力に惹かれて通い続けているうちに、京都には
女性に関係した史跡も多いことがわかってきました。美女のような街・京都は、美女達が実際に生きた街でもあるのです」(本文より)。

女人達が生きた地を実際に歩くことによって、時空を越えて
彼女たちの思いに近づいてみたいと思った著者。

古くは平安京ができる前から、明治時代にいたるまで。天皇の妻や娘といった高貴な存在から庶民までを網羅。歴史に名を残してきた女人達を訪ねて京の都を探索する新しい街歩き
ガイド&エッセイです。

(本書に登場する女人達の一部をご紹介)

光明皇后 小野小町 紫式部 皇后定子 清少納言
藤原道綱母 和泉式部菅原孝標女 祇王 小督 大納言佐 建礼門院徳子 阿仏尼 後深草院二条 中宮禧子 日野富子北政所 淀君 出雲阿国 吉野太夫 和宮 大田垣蓮月
松尾多勢子 若江薫子 上村松園 九条武子 モルガンお雪
新島八重

文庫版特別対談も収録!
歴史学者磯田道史×酒井順子

※この作品は過去に単行本として配信されていた『女人京都』 の文庫版となります。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

「そうだ京都、行こう。」そんな気持ちになるエッセイ集。歴女、酒井さんの丁寧なガイドで、歴史に名を残す女性の生き様に思いを馳せながら、京都の旅にいざなってもらえました。

23のエッセイそれぞれの最初に地図が載せられており、場所を確認しながら読めるのも良いところ。途中、酒井さんがランチやお茶に立ち寄るお店が出てきて、臨場感たっぷりで楽しさ倍増でした。

私にとって馴染みのあるのは、平安文学に登場する女性ですが、それ以外に様々な女性の京都との関わりや、生き方の一端を知ることができ良かったです。

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2025年06月15日

Posted by ブクログ

京都はたくさんの優れた女性たちの生きた町。
あちこちに、ゆかりの地や建物、石碑が点在する。
彼女たちの面影をたどりながら、ちょっと甘味で一休み、という旅のエッセイだ。
しかし、途中からコロナ禍でステイホームを余儀なくされ、旅するエッセイの大ピンチ!
ストリートビューと脳内の記憶を駆使しての旅も多くなったが、逆に、自由に表に出ることが許されなかった平安貴族の女性の気持ちに寄り添えることもできた。
自由に会いに行けないからこそ、強くなる思い。それは身のうちから魂が「あくがれいづる」ほどに。

天皇の娘や妻でない限り、女性は系図に名前も残らない。
ここに取り上げられている女性達は、それでも爪痕を残した人たちだ。
平安時代などは有名人も多いが、個人的には近世になるほど名前だけおぼろげに知っている、または聞いたこともないという人たちも増える。
著者の筆は時代が進むに従って、生き生きと冴えてくる気がした。
特に、『21 信念に従って幕末に生きるーー大田垣蓮月、松尾多勢子、若江薫子』の女性たちは印象的だった。
中でも、パワフルおっかさん、松尾多勢子(まつお たせこ)には度肝を抜かれた。
信州の農家の嫁だった多勢子は、10人の子供を育て上げた後、52歳で討幕運動に参加するため京都に上り志士たちの母親的存在となる。
幕末にそんな女性がいたなんて驚きである。
続く、『23 女子教育の礎を築いた女人たちーー九条武子、大谷籌子(かずこ)、新島八重』も素晴らしい女性たちだ。
京都は今でも大学が多く、学生たちの街である。
それは京都が、戦後の教育に力を入れてきた証である。
新しい国を作るためには「学ぶ」ことが何より大切である。それは女性たちも同じ、と京都人は知っていた。
そういえば、平安時代に有名だった女流文学者たちも、男子に憚らず漢文などを貪欲に学んでいた。
知性と勇気にあふれた彼女たちから、生き方を学べたらと思う。

追伸。
「京都」ときたら、女性、女、おんな、より、やっぱり「女人(にょにん)」がしっくりくるし、歴史的なものを感じる。

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2025年08月01日

Posted by ブクログ

 酒井順子さんは「はじめに」の冒頭をこう書きました。

「京都は、誰もが惚れてしまう美女のような街である。」
「それも、「あるがまま」系の天然美女ではありません。」
「それは、メイクもファッションも、そして声の出し方すらコントロールした、人為の結果としての美女。」

そして、こう進めます。
「そんな美女の魅力は、若者にとってわかりやすいものではないようです。」
「たとえば私は高校の修学旅行で初めて京都に行ったのですが、その時の感想は、「茶色いっぽい建物をたくさん見た」というものでした。」

さらに、
「自らの心身が古びると共に、古い都への共感が深まってきたのです。」
「かくして私は京都へ足繫く通うようになったのですが、、、、」

で、
「そんな京都の中でも、京都らしさを最も濃厚に抱いている存在は、名所旧跡でも食べ物でもなく、京都の「人」なのではないかと私は思います。」
「京都には女性に関係した史跡も多いことがわかってきました。」
「歴史の中の女性達に出会うことは、なぜ自分達が「今、ここ」にいるかを知ることでもある。」
と、本書の執筆経緯を語っておられます。

 それぞれに章のはじめには、史跡場所の地図も書かれていて、散策の折の目安にもなります。
なにより、かなり調査をされたであろう内容が、分かりやすく読みやすく書かれていて、理解しやすいのが本書の特徴です。
 読者の理解を優先するために、いろいろな書物で調査したであろううんちくを割愛している配慮を感じます。

 この文庫版では、巻末に「文庫版特別対談 磯田道史(歴史学者)×酒井順子」が載っています。京都在住の歴史家から語られる知見は、本書の女性達や史跡の背景を補ってくれます。

 天皇がおはします都としての京都、徳川幕府が首都を江戸に移してからの京都、天皇不在となってからの京都。
 それぞれの時代に女性たちは活躍し苦悩し時代に翻弄されてきました。
歩いてみるとそれほど大きくはない京都の街ですが、刻まれた歴史はとてつもなく深いです。
 夏はむせかえるほど暑く、冬は身体の芯から冷える京都。その風土にも文化を形作った歴史がありました。
 
 いにしへからの先輩女性たちの足跡をたどり、彼女たちの気持ちに寄り添ってみませんか。
 わたし(みのり)は、「13 『平家物語』哀しみの舞台へ ― 祇王、小督、大納言佐、建礼門院徳子」の章が特に好きでした。時の為政者との間で女性同士の関係が切なく語られる『平家物語』の祇王の章は何度読んでも涙してしまいます。
 彼女たちを受け入れる嵯峨野の地は旅情満点で、一度は訪れたい場所ですね♡ 本書でぜひお読みください♡

《目 次》
1 古代のお后達、アウェイとしての京都 ― 光明皇后、高野新笠
2 神に仕えた皇女「斎王」達のドラマ ― 有智子内親王、選子内親王、済子女王
3 美女の信仰、美女への復讐 ― 檀林皇后、小野小町
4 平安初期の悪と愛 ― 藤原薬子、藤原高子、伊勢
5 『源氏物語』誕生の背景は ― 中宮彰子、紫式部
6 『枕草子』の裏にある悲劇 ― 皇后定子、清少納言
7 受領の娘達は、なぜ書くのか ― 藤原道綱母、和泉式部、菅原孝標女
8 院政期に揺れる女人達 ― 讃岐典侍、待賢門院璋子、美福門院得子
9 平安と現代、「伝染病が蔓延する世」を生きる
10 自粛の日々で知った「憧れる」想い
11 女人にとって「籠る」とは
12 日記は何を受けとめたのか
13 『平家物語』哀しみの舞台へ ― 祇王、小督、大納言佐、建礼門院徳子
14 鎌倉時代の旅する女達 ― 阿仏尼、後深草院二条
15 鎌倉時代に、夫を想う ― おかめ、中宮禧子
16 室町時代の、できすぎる女 ― 日野富子
17 秀吉の女達の連帯 ― 北政所、淀君
18 芸の花を京に咲かせる ― 出雲阿国、吉野太夫
19 江戸時代、庶民の女人達 ― 桂昌院、祇園梶子、おさん
20 アズマ男に恋した幕末の京女 ― 豚姫、お龍、和宮〔ほか〕
21 信念に従って幕末を生きる ― 大田垣蓮月、松尾多勢子、若江薫子
22 天皇不在、明治の京都は ― 上村松園、九条武子、モルガンお雪
23 女子教育の礎を築いた女人達 ― 九条武子、大谷籌子、新島八重
旅を終えて
文庫版特別対談 磯田道史(歴史学者)×酒井順子

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2025年06月22日

Posted by ブクログ

これを読みながら実際に京都を散策してみた。
京都の隠し扉を開けるように、ワクワクしながら。
京都の街を一歩踏み込んで知れた気がした。

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2025年06月05日

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