あらすじ
北方を起源とし、覇権主義的な性格を持っていた龍の文明。一方、南の長江流域で発祥し、再生と循環の世界観を基本とした太陽の文明。約七千年前、この全く性質の異なる二つの文明が中国大陸の北と南に存在した。その後、二つの文明は衝突し、結果、漢民族支配の龍型・中華文明が覇権を握ることになった。そして太陽の文明は滅び、一部は少数民族と日本民族へと受け継がれ生き残る。著者は、「環境考古学」という分野を日本で初めて確立した。現在手がけている「長江文明の探求」プロジェクトを通して、「長江文明の担い手は苗族をはじめとする少数民族だった」ことを発見。その成果を本書で発表している。内容、〇龍と王権〇南北構造のルーツ〇なぜ日本人は雲南省に共感するのか〇稲作漁撈文明の系譜――日本文明の源流を問う〇覇権主義から環境主義へ、など。南北文明の壮大な興亡の歴史を読み解きながら、日本と中国の古代史に貴重な1ページを加える一冊。
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Posted by ブクログ
やっと。読んだのだ。
安田喜憲の本としては シンプルになっていていい。
仮説が 仮説でなくなる部分もあって たのしい。
龍が ヘビではなく ブタ、シカ、ウマの龍がある
というのは、なんとなく、間抜けな感じがある。
ブタ龍 って、滑稽すぎる。
それが 母系性から 父権性に変化していく過程で
権力の象徴としての 龍として羽ばたく。
それが 7000年前のこと。
苗族が 長江文明をささえた。
太陽 鳳凰 そして ヘビ。多神教。
鳳凰も想像上の動物である。
太陽を運ぶ 鳥。まさに 手塚治虫の世界である。
寒冷化がおこることで、5000年前に龍の勢力が南下して
太陽と鳳凰は 雲南へ。もしくは日本へ。
しかし、天皇は 龍の紋章ではなく キクの紋章となっている。
なぜ キクの紋章なのだろうか?
大理の三塔から 大鵬金翅鳥が発見される。
この鳥は 大龍を1匹 小龍を8匹食べると言う。
龍を恐れない鳥である。
イザナギとイザナミが 国をつくる。
子孫 アマテラスとスサノオが 高天原神話。
アマテラスの子孫が ニニギノミコトとなっている。
アマテラスは 太陽神。
スサノオは 森の神。
ニニギノミコトは、長江下流から、九州の南端に流れ着いた。
コノハナサクヤヒメと結婚する。ヤマサチとウミサチがうまれる。
ヤマサチと結婚するトヨタマヒメは ワニだった。
ヤマサチとトヨタマヒメの孫が 神武天皇。
天皇神話に ふかく 長江文明がかかわってくるのだ。
Posted by ブクログ
6000年前の遼寧省や内モンゴルで発展した紅山文化の遺跡から猪龍がいくつも発見されており、龍は畑作牧畜民の文化として猪や馬をモデルにして誕生したと考えられる。アジアモンスーンが南へ後退して乾燥したため、紅山文化は5000年前から衰退しはじめ、4000年前に完全に崩壊した。
一方、長江中流域では太陽と鳥が信仰されていた。遺跡は5000年前から城壁が大型化して人口が増加しており、玉や龍の信仰が顕著になってくる。4000年前になると、中原起源の三足土器が出現している。気候の寒冷・乾燥期に、北方の人々が南下したことが推測できる。
日本列島への稲の伝搬は、稲のDNAの研究からは東シナ海を越えて直接九州南部に上陸した可能性が考えられる(佐藤洋一郎)。これは、古事記においてニニギノミコトが薩摩半島西岸の笠沙に天下ったとしていることと呼応する。
気候変動によって文明が崩壊したり、人々の移動を促したことはあっただろう。歴史の大きなダイナミズムとしてはおもしろい。紅山文化の土器と縄文土器との類似性から、紅山文化の人々が日本列島に渡った可能性についても指摘されているが、本書だけでは説得力は感じられない。