あらすじ
近年、インフラの老朽化危機が社会問題となっています。人手や財源の不足で老朽化した全ての施設を更新・補修するのは難しく、不具合が生じてから修繕する「事後保全」に陥るインフラが増えきました。点検、診断、措置、記録に至るメンテナンスサイクルを適切に回し、予防保全型の維持管理に転換することが求められています。2025年1月に埼玉県八潮市で起こった道路陥没は下水道管の老朽化が要因の一つと推測されており、忍び寄る「インフラ危機」への対応は待ったなしといえます。
そういった状況のなか、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期では、新技術を実務に活用する状態を指す社会実装を進めています。特徴は、生産性100倍などの目標に向けて、維持管理サイクルの「超高速化」に向けて様々な新技術を投入する点。さらに、大手企業やスタートアップ、高速道路会社、小規模自治体など、多様な主体が参画し、100社以上の機関の協力を得て各地の実際のインフラで新技術の実証を進めている点も珍しいといえます。
本書籍では、SIPのプロジェクトを取り仕切る東京大学の石田哲也先生と日本大学の岩城一郎先生の協力の下、こうした最新のインフラメンテナンス事例を紹介しています。実務に携わるインフラ管理者や補修・補強の設計に関わる建設コンサルタント会社、それから工事に携わる建設会社はもちろんのこと、老朽化問題に関心を寄せる一般のビジネスパーソンにぜひ読んでいただきたいです。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
走り読み程度
冒頭にある次の言葉は私を、これから土木業界に復帰する私を勇気づけるものだった。
”公共投資は資産を消費するものではなく、蓄積されるものである。資産の収益率が資金調達コストを上回る限り、公共投資は政府のバランスシートを強化する。インフラは整備に伴う雇用の増大など景気刺激としてのフローの効果にとどまらず、ストックとしての役割が本質的である。”
土木工事によるインフラは40年50年と長期にわたって、国民が安心で便利な生活を支えているのだから、その目に見えない経済効果たるや凄まじいものがある。
社会実装へのボトルネックはいくつもあるが、その最たるものは国民の土木やインフラへ無関心だ。みな忙しすぎて、自分たちのことで精一杯なのだ。そして災害が起こったときに初めてインフラ保全の重大さに気付かされる。
気になった新技術:
建設用3Dプリンタ印刷物の貯水施設付帯構造物への利用(ため池の底樋の入口ますと出口ます)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究部門
長耐食鉄筋、鋼材用防食材料、建設用3Dプリンタによる型枠作成など
Posted by ブクログ
これから急速に、道路や橋梁、トンネルなどの老朽化が進む時代が訪れる。特に、高度経済成長期に整備されたインフラの老朽化は、高齢化と人口減少が急速に進む傾向から若干遅れて進行することが分かった。
ゆえに、インフラの補修必要性が顕在化してからは、地域の人口も減り、予算も充てることが出来ない事態が予想される。既に補修対象のインフラとして松竹梅のランク付けがなされていることにショックを受ける。
インフラの劣化は指数関数的に進行するので、早期に発見し補修に取り掛かれば、費用も時間も少なくて済むとのこと。そのために、普段の点検が重要であり、レーザー技術を生かした非破壊検査や、地域住民による清掃活動の意義がある。
自分の住む地域のインフラ整備を自治体任せにせず、普段の会話に取り入れ意識する心がけが大事である。
その昔、篤志家や地域住民が自費を出し合って鉄道を開通させた話がよくあるが、本来地域住民の働きかけでインフラが整備されてきたという原点を時々思い出すようにしたい。