あらすじ
あらゆる小説は多かれ少なかれ、他の小説を手本にし、影響を受け、技を盗み、足跡を追いかけることによって書かれている。夏目漱石も谷崎潤一郎も村上春樹も例外ではない。オリジナリティと模倣についてどう考えればいいのか。硬軟かかわらず膨大な現代小説を精緻に読みこなすことで圧倒的に支持される文芸評論家が、まるでDJがさまざまな音楽をリミックスするように、自由自在に過去の名著を模倣し、盗むことによって小説を完成させる技法をはじめて明らかにした!
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Posted by ブクログ
模倣、参考、引用、剽窃があいまいなだけに、作る(提供する)側の意識は重要になる、ということをあらためて考えさせられた。
単なる技法の話ではないですね。
Posted by ブクログ
今までいろいろな小説を読んでいて漠然と感じていたことを、わかりやすく整理してもらったという感じ。村上春樹の初期作や谷崎潤一郎・江戸川乱歩・金井美恵子あたりはけっこう好みなので、彼らが影響を受けた外国の作品や彼らに影響を受けた人々の流れがわかってうれしかった。ライトノベルやケータイ小説の位置づけについても、そんな風に言っちゃっていいのかなぁと思う部分はあるものの、大筋は納得。第1章が一番おもしろく、第3章は自分で何か書いてみる気がない限り読まなくてもよいと思います。
Posted by ブクログ
クリエティブの神話のウソを暴き出す。結局良い作品とは過去の作品の模倣である。
良いものを作りたいならたくさん読むしかない。インプットの量がその質を高める。もちろんたくさんの失敗の中にしか成功はないからである。出来ない人間は言い訳ばかりで為してないからだ。
とは言えこの本の良いのは、模倣にも工夫の余地はいくらでもあるということ。思いもかけないマリアージュは成功のキッカケになり得る。村上春樹の思い付きも、大好きな外国文学の文体で、日本の物語を表現するということ。スキはやはり強みの源泉だ。
話は変わるが、サイコパスなるアニメはフランケンシュタインのオマージュである。テーマソングが「名前のない怪物」である。ちなみに手術痕のあるゴツい登場人物は「怪物」であり名前はない。フランケンシュタインとは作った人の名前であると最近知った。
よく出来た作品は、骨太のテーマを持つが、これもその一例と言えよう。
Posted by ブクログ
ロラン・バルトによって「作者の死」が宣告されて以降、小説のオリジナリティについての神話が解体され、作品は「テクストの宇宙」の中で相互に影響され合って生成するという見方が現われるようになりました。
本書は、こうした立場から、さまざまな小説の相互影響関係を例に取り上げ、そのサンプリングやリミックスの妙技を味わうとともに、既存の作品をうまく模倣することで新たな作品を作り上げるための実践的なトレーニングを示しています。
Posted by ブクログ
対立と変換
<対立>は、たとえば正義と悪、火と水や空と土、若者と老人、出産と死、口と肛門、東の王と西の魔女、わがままな姉とおとなしい妹のような対立要素からなる構造である
神話のバリエーションは、その基本構造をまったく逆のものにしたり、高次のものを低次にしたり、人を動物にしたり、悲劇を喜劇にしたり、さまざまに<変換>した結果生まれる