あらすじ
第23回『このミステリーがすごい!』大賞・隠し玉作品
台風が過ぎ去った日のコインランドリー。無人のそこには、一本の傘が置き忘れられていた。持ち主は嵐の中、傘を持たずに店を後にしたというのか? 死者の署名がなされた創部届、アイスクリームを咥えた泥棒、学生寮に残されたタイムカプセル。好奇心旺盛でお人好しな同級生・二ノ瀬と共に、高校生の古川はさまざまな謎に遭遇する。そしてやがて、自身の過去と向き合うことに……。
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
チャラい美男美女高校生カップルがイチャイチャしながら日常の謎を解いていくのか、ケッ、
…と思って読み進めたら、意外にも落ち着いた筆致で、なにより性格のよさにひかれていくことになって、学校が舞台のミステリーとしてはなかなか出色の出来なのでは。
このふたりにまた会いたい。
Posted by ブクログ
著者初読。パイセン本。
入夏紫音著『古川くんと二ノ瀬さん』は、派手な演出や過剰な感情表現とは一線を画した、静かで繊細な青春小説だ。不器用で言葉少なな古川くんと、どこか距離を保ちながらも確かな優しさを持つ二ノ瀬さん。2人の関係は、いわゆる「恋愛」という枠に収まりきらない、どこか曖昧で、それゆえにリアルな温度感をまとっている。物語は大きな出来事に頼らず、日常の中にあるわずかな心の揺れを丹念に描いており、その静けさが読者の心に深く染み渡る。互いに無理をせず、ただ隣にいるという関係の尊さを、改めて思い出させてくれる一冊だ。感情を説明しすぎず、行間に託された思いが余韻となって残る本作は、日々の喧騒に疲れた大人の心に、やさしく寄り添ってくれるような読後感をもたらしてくれる。