あらすじ
トランプ ヴァンス 石丸伸二 尹錫悦……
なぜ破壊者は台頭するのか。
「何かが間違っている」。そう主張し、政府やメディアなどを
「既得権益化したエリート」として批判する“カウンターエリート”が
支持を集め、世界中で地殻変動が始まっている。
シリコンバレーで生まれた彼らの思想を手がかりに、
その背景や論理、これから起こる変化を徹底解説。
ニュース解説メディア『The HEADLINE』編集長、初の著書。
■トランプ2.0以後の世界を読み解く必読書■
大統領に再選したドナルド・トランプ大統領、影響力が増すイーロン・マスク、
ゼレンスキー会談で注目を集めた副大統領のJ.D.ヴァンス…
彼らに共通するのは、既存の「リベラルな秩序」に挑戦するカウンターエリートという潮流だった。
彼らは単なる「反エリート」ではなく、自らの「何かが間違っている」という主張を掲げ、
支持を広げている。背景にあるのは、世界的投資家ピーター・ティールや
暗黒啓蒙の思想家カーティス・ヤーヴィンらが支持する「奇妙な右翼サブカルチャー」だ――。
なぜリベラルなシリコンバレーは、保守派に転向しつつあるのか?
なぜ世界で同時多発的に、新たな政治家が台頭し、既存秩序を揺るがしているのか?石丸現象や兵庫県知事選、韓国の戒厳令などに共通する背景とは?
リバタリアンからポッドキャストに台頭するマノスフィア文化、反Wokeまで
広範な思想を読み解く。
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
★エリートの意味が違うんだ★トランプを支えているのは経済的成長から取り残された白人労働者、とのイメージを引きずっていて、なぜ恵まれた環境で育ったエリートであるトランプに熱烈に同調できるのか、と長く不思議に思っていた。エリート臭がさらにきつい民主党よりマシ、という理由なら、そこまで熱狂的にはならないだろうにと。その疑問の設定の仕方が間違っていたことを本書は教えてくれる。
成長においていかれた米国(日本よりかなりマシとは思うが)にはびこるのは、「何かが間違っている」「本当に重要なことが無視されている」という意識。それが、現状の穏やかな変化をめざす(そして成果を得られなかった)リベラル層への不満につながり、破壊主義者であるトランプの支持へと至る。破壊主義者は、民主主義といった当たり前とみなしてきた概念そのものに疑問を突きつけ、ゲームのルールを超えていく。
そこにシリコンバレーの成功者たちの、破壊的な変革の意思が重なる。トランプ1期目は怪しい右翼が支え手となったが、2期目はピーター・ティールやイーロン・マスクの現状に対するいらだちが後押しとなったという。そして1期目は移民排除が全面に出たが、2期目はシリコンバレーを模範とした国家CEOによる君主制を目指すという。
エリートという言葉は「既得権益者」という意味で用いられていて、カウンターエリートはそれを打破する人たち。育ちや経歴とは関係ないことが理解できた。「エリートはグローバリゼーションというコピペをしているだけで、新たなものを生み出していない」というカウンターエリートの認識は、まさにシリコンバレー的だ。
ティールの主張などはよく分かったが、理解しきれなかったのは、若者がトランプを大きく支持した理由だ。カウンターエリートの影響力が高まった背景として、「何かが間違っている」という不満がリベラル・デモクラシーの行き詰まりともに顕在化し、増幅装置としてのSNSがマスメディアに取って代わり、キャラの立ったストーリーテラーが席巻した、分析する。
後者2つが大衆を取り込んだとするようだが、熱狂・分断に至るまでのうねりは増幅装置とキャラだけで広く巻き込めるのだろうか。そのあたりは若者側の思いに則した分析をぜひ読みたい。
アイン・ランド著「肩をすくめるアトラス」は読んでみよう。