【感想・ネタバレ】複数の時計のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

 クリスティの長編ミステリー。ポアロシリーズ。ポアロが安楽椅子探偵を演じている作品。(結局は好奇心に敗れ行動してしまうわけだが)
クリスティ作品はある程度学生時代に読んでいたのだが(特に長編は沢山読んだ)今作は未読だったらしい。幸い、ポアロシリーズの目新しい作品を読んだ気分であり得した気持ちだ。作中、驚いた事にポアロがミステリーにのめり込んでいた(オリヴァの作品がお気に召さないのは彼らしい)ポアロのミステリー批評は面白いが、ポアロらしくない印象を受けてしまう。(作家や作品への言及はクリスティ自身を反映しているかもしれないが、クリスティとポアロが同じ批評になるとは思えない。)まただいぶ長いパートになっており少し疲れてしまった。ただし、後半になり、このパートが真相に大きな影響があった事に驚いた。ある意味伏線として作用しており、流石だと感心してしまった。
 とある盲目の女性の家で、全く見ず知らじの紳士が殺害される。発見したのは家に派遣されたタイピストの女性シェイラであり、彼女は驚き家から飛び出した所で青年コリン(今作の主な語り手)に介抱される。警察到着後、捜査の結果、この家のものではない時計が当然のごとくおいてある事に気がつく。
 一見、全く意味がわからない設定であり、この問題がどこに繋がるのか全く想像しなかった。
 盲目のペプマーシュはタイピストの依頼もしていないし亡くなっている男性も知らない、家にある時計は二つのはずで、それ以外は自身が出かける早朝までは無かった。一方、タイピストのシェイラは会社の所長から名指しで電話があったと伝えられ、指示通り到着後死体を発見、死体は知らない人だし、ペプマーシュとも面識がない。
 主な語り手のコリンは情報部員であり、このミステリーではスパイ探しの様な側面も並行して進められている。また、彼はかねてよりポアロの友人で、彼へ刺激を与え、兼ねてより椅子に座ったまま必要な情報だけで事件が解決できるという自尊心に悪戯してやろうという気持ちを秘めながらポアロを訪ねる。
 ポアロ作品の中でもより安楽椅子探偵に近い役回りの作品だが、最後、ポアロの人柄が滲み出る(笑)犯人について、作中でとある事を仄めかしており、時計の謎については納得できる。
 第二、第三の事件がなければ発見は難しいと思われる。完全犯罪たり得るのは、現代の様なセキュリティ社会では無いためであり、今回の様なトリックは不可能に近い。しかし、時計を置いた動機(犯人の一人が過去にとある理由で知り得たミステリーのオマージュ)というのは面白い。

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2023年08月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ポアロシリーズ29作目。
あらすじの内容に惹かれて読みはじめたのだけれど、<死体を囲むあまたの時計の謎に、ポアロが挑む>というほど時計は多くない。笑
そして晩年の作品だけあって、年老いたポアロの登場が少ないのが残念。
ほとんどが情報部員のコリンとハードキャスル警部の捜査でストーリーが進む。

でも、いいとこ取りのポアロの謎解きスピーチはやっぱり引き込まれる。
複雑な人間関係と、こことここが繋がるのか、と読んでいるだけでは想像つかない結末だったけれど、ポアロの謎解きでおおー!と合点がいった。
ポアロが読み耽っていた歴史ミステリーと、その講義のような紹介も大事な構成のひとつだったのだと納得。

ヘイスティングズを想い、回想するシーンは切なくなってしまった。
ポアロシリーズ、やはりポアロとヘイスティングズのバディがいちばん好きだ!

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2020年01月19日

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