【感想・ネタバレ】九月が永遠に続けばのレビュー

あらすじ

高校生の一人息子の失踪にはじまり、佐知子の周囲で次々と不幸が起こる。愛人の事故死、別れた夫・雄一郎の娘の自殺。息子の行方を必死に探すうちに見え隠れしてきた、雄一郎とその後妻の忌まわしい過去が、佐知子の恐怖を増幅する。悪夢のような時間の果てに、出口はあるのか――。人の心の底まで続く深い闇、その暗さと異様な美しさをあらわに描いて読書界を震撼させたサスペンス長編。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

始まりは何の変哲もない年下男を巡る愛憎劇かと思いきや、息子失踪から始まる、ドミノ倒しを見ているような、とんでもないすごい話だ。
散りばめられた伏線から次々に登場人物怪しく思えるけど、精神疾患扱う話はどうにもこう、後味悪く…。
でも、不思議と悲観的にならないのはひとえに服部のおかげかと。キモウザオヤジと見せかけて、だんだんチャーミングなキモカワオヤジに見えてくる不思議。
最後、もう一堕ちするかとヒヤヒヤしたけど、悲劇的結末に終わらず、少し光が見えてよかった。

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2022年01月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「女は、あるいは男も、ある年齢になると、醒めた目で相手の実像を見つめながら恋に溺れるということが可能になるらしい」

沼田まほかるさんの小説に出てくる女は、インモラルで変わり者ばっか。
と思ってるけど、実際は人間の汚い内心が包み隠さず書かれているせいで、すごく感傷的で意地汚い人間たちに見えるだけで、自分にも共通する部分があるから目を逸らしているだけなのか。

情景や感情描写が丁寧でリアルだからか、なぜかミステリー要素は薄いだろうと思いながら読んでいて、終わりにかけて1転2転する展開にびっくり!ミスリードも上手いし、伏線回収も確実でわかりやすく、総じてすごく読み応えがあった。

このあと文彦と亜沙実はどうなるんだろう…。なんとなくだけど、文彦は1人立ちするまで亜沙実に会いに行ったり連れ去ろうとしたりして、何度か今回みたいに失踪しそうな気がするなぁ。
その度に佐和子はまた亜沙実を恨むだろうけど、もう雄一郎への執着は無さそうだし、文彦が1人立ちしてしまったらようやく自分の人生を生きられるような気もする。

文彦が激しい暴力的なエロ本を持っていたのは、父と亜沙実の性行為の話を聞いて、自分にも父と同じように亜沙実を犯したいという感情が出てくるのを予想したからかな、、亜沙実にそういう感情を持つ描写はなかったけど。
「どんな性的欲求であろうと、あくまで他人に危害を与えず心に収めておく分には許されるはずだ」という越智の発言と、亜沙実が実際に受けた性暴力の描写の対比が、、、見る者の性的欲求をむしろ溢れさせてしまう亜沙実の肉体が、より得体の知れないもののように感じた。
文彦も結局亜沙実に絡め取られてしまったのかな…。文彦が純愛だと唄う二人の関係が、けして明るくはないことは確実だと思った。

本作では最後亜沙実が会話をする場面があったところがよかった。だいたいこういう女の人って''男を虜にしてしまう恐ろしい女''として終わることが多いから、文彦や佐和子と話す場面があることで亜沙実の人間らしさが感じられた。
亜沙実のような女ってどの小説でも語り手ではなく周りから見て語られることが多いから、こういう女目線の物語あったら読みたいなあ。

感想冒頭のセリフは、主人公佐和子がセフレ相手への恋心を客観視して出てきた言葉だけど、子供の「恋に恋する」感覚とはまた違う、それよりももっとやっかいな大人の恋愛を赤裸々に表しているなあと。
自分もそういう経験あるし、世の中の浮気や不倫に溺れている人たちは結局これなんじゃないかと思う。

兄の立場は辛いなあ…。自分の存在が妹にとって悪であると思いながら、でも妹の幸せな姿がみたい、妹を幸せにしなければならない(幸せ=兄の理想の形だけど)と思い続けて、、それは一種の贖罪なのかもしれないな、妹を救えなかったばかりか一緒に暴力を受けてしまった自分への。

個人的に印象に残ったのは、冬子が生きていた間は佐和子も見ないようにしていた彼女の持ち物を、亡くなったあとはとくに躊躇いもなく、雄一郎と文彦と見ていた場面。
現実でも相手が生きている間は見ないようにしている棚やカバンの中身も、亡くなった瞬間見てもいいもの(整理したり片付けたり)になるから、当たり前のことなんだけど改めて不思議だなあって。
最近生と死に関する本読んて意識しすぎなだけ説あるけど笑

あと細かいことすぎるけど、女子高生めっちゃ気軽にタクシー使うのね!?ほんで服部が生理のこと「毎月の病気」って言うの、そういう男が持ってそうな感覚すぎて逆に笑っちゃった。
_______________

「そんな妄想を抱いてしまうほど、なぜ肉体のことにはいつも罪の意識が絡むのか」

「あの子たちは多面体」

「清純さこそが最も猥褻なのではないか」

「目を閉じたときの冬子が一番美しかった。だからこの子は自分の最も美しい顔を見ることができない」

「胸に充ちているのは、口では言えない何かだった。それでも必死で言葉を捜した。ひとかけらでも本当のことを言いたかった」

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2025年07月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

多感な年頃の息子に年下の恋人との逢瀬を目撃されて、息子が突発的に失踪する
そして手を尽くして探す、というお話かと思いきや。
別れた元夫の新しい妻、その連れ子、担任、
謎めいた登場人物。
そしてお節介が過ぎる同級生の父親。
どうなってどうなるの?と読み進める。
結果、これからどうするの?と言う終わり方
なかなか現実的には起こらないだろうシュチュエーション。
登場人物の全てが何かしらの思いを残しながら
昨日とは違う今日になるなかで、
いちばんピュアだっただろうナズナが
二度と「少女である楽園」に戻れない
という一節が印象に残る

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2022年12月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

沼田まほかる氏の作品というと、ねっとりとして、人間のいやーな部分をじっくり描くという印象があります。そういう意味ではイヤミスですかね。というかミステリーなのかな?

でも、本作は高校生の息子の失踪とその原因というものがミステリー要素だったのでイヤミスかも。

ちなみに沼田氏は本作がデビュー作(2004)で、第五回ホラー・サスペンス大賞受賞。当時56歳というから、すごいですね。

・・・
で本作。
感想を述べるのはなかなか難しい。

ただ、これだけ複雑に絡み合う登場人物とその背景を少しずつ明らかにするにあたって、そこに混乱が全くなく、自然に内容が頭に入ってくるところは凄いと思います。

主人公佐知子の情事で始まる本作ですが、その相手の犀田、そして佐知子の息子の文彦。佐知子の別れた夫の雄一郎、その現妻の亜沙美、その子どもの冬子。さらに文彦の友人のナズナやカンザキミチコ、ナズナの父の服部、文彦の担任の越智。加えて雄一郎の病院の事務長の大迫や亜沙美の兄の弓男。

登場人物はこれだけに留まりませんが、こうした人物たちを中心に、彼らの過去が少しずつ明らかになり、彼らの隠された関係がはっきりしてきて、物語は進展してゆきます。

・・・
もう一つ感じたのは、表現や文章の滑らかさ。

これまた感覚なのですが、どの作者も良く言えば「くせ」や「特徴」、なんというか一種の「ささくれ」みたいなものがあり、一読者として読んでいて「?」となる文章や表現が一冊に数か所あると感じます。

ところが沼田氏の本作は、そういった引っかかりがなく、なんというか「ツルツル」と読めてしまった感じがします。

際どい性的な描写が大いにも関わらず、大袈裟でもなく、劇的でもなく、しっとりとツルンと読めてしまった感じです。

・・・
ということで久しぶりの沼田作品を鑑賞しました。

表現力が無くて、はからずもネタバレなしの感想になりました。

しかしまあ、なんというか、性・業の深さを見事に描きますね。かつてはやや露悪的なところが鼻をつく印象でしたが、今は結構好きかも、です。

ドロドロな感じが平気な方にはおすすめ出来ますね。

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2025年03月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ミステリーかと思ったらグチャグチャな愛?の物語って感じだった。

文彦がいなくなって佐知子が絶望したり希望を抱いたりして探す姿は状況は違うけど、今の自分と重なる部分があって読んでて辛かったー

服部のおじさんがいい人過ぎてこの人と結婚すればいいのにと思った。

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2025年02月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

なんとなく冒頭から暗さがあり、そこから息子が行方不明…など、読んでいて消耗する感じがして辛かったですが、謎は興味深くてミステリーとしてはしっかり作り込まれていて良かったです。服部さんのキャラは面白かったです。

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2024年10月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

読み終わって解説を見てデビュー作なのを知ってビックリ。
更にお歳を知って二度ビックリ。
凄みがある読感&毒感にちょっと納得。
話題になっているのは薄く知っていて、あと失礼ながら名前が変わってるので、角川ホラー系(例外もあるけれど、どちらかというとライトな感じ)かなぁと読む前は思っていたのでした。
放しで好き、とまではまだ言えないけれど、ほの暗い部分に惹かれるところはあります。
作風は違うけど『猫鳴り』も読んでみよう。

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2025年05月28日

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