あらすじ
戦後の新憲法で「国政に関する権能を有しない」と規定されたにもかかわらず、天皇が今なお権力の主体であり続けているのは一体なぜか。儒学・国学・超国家主義・民主主義など従来の思想史に加えて、新たに「空間」と「時間」という補助線を取り入れ、これまで言説化されてこなかった日本固有の政治思想の本質を明らかにする。
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Posted by ブクログ
●日本固有の存在である天皇を中心に日本の政治思想を概観した本。
●日本の政治思想を探求して、日本という国家の知見を深める。→天皇という存在を軸とした政治思想を俯瞰できたように思う。
●本書は、記紀神話から現代の象徴天皇制までを貫く「日本固有の思考様式」を、天皇という存在を軸に鮮やかに描き出す。注目すべきは、「空間」に着目した論点で、皇居前広場のような「空地」に天皇という生身の身体が現れることで、一瞬にしてそこが聖なる政治空間へと変貌すると述べている。この「可視的な身体」と「空虚な空間」の相互作用こそが、言説化されない日本的な「国体」を支えてきたという指摘は極めて独創的である。また、儒教(朱子学)が「革命」を是認する論理を持つのに対し、日本はそれを「万世一系」という血統の論理で封じ込めたという比較思想的なアプローチも、日本政治の特殊性を理解する助けとなる。
Posted by ブクログ
日本の政治思想の通底にある政治体制を支える思想は言語化されていないとして、個々の思想家を追うのではなく、天皇制を柱の一つとして政治思想を戦後まで記述する。街道、鉄道、宮城前広場、公園、銭湯等の公共空間、儀礼による視覚化、団地と共産党など面白い視点があるが羅列的・断片的。
・「まつりごと」は、本来奉仕事=政事。儒教の政治構造は、天命を受けた天子が礼楽を主、刑政を従として民をみちびくもの。天皇制の政治構造は、臣民が万歳等により天皇をまつり、天皇はアマテラスをまつる構造。
・「国体」は、万世一系の天皇を統治の主体とする概念ではあっても、言語化されず定義されず、君民一体の空間を通じ視覚化されることで身体ごと実感されるもの。それゆえ、あらゆる思想と両立し無限に抱擁できる可能性。
・輿論public opnion は公共圏で形成され、世論(せいろん)popular opnion は公共空間(銭湯)で形成された。