【感想・ネタバレ】ファミリー・バイブル 新装版のレビュー

あらすじ

家事能力のないサラリーマンの長永宏伸が、心優しき隣人・逸木典章に食事の世話をしてもらうようになって三年。宏伸は、典章が妻で彼の娘・茉莉衣が自分の子だったら……という妄想つきの恋心を心にしまっておけなくなっていた。けれど美しい典章が自分のような駄目な年下男を相手にするとは思えず、諦めていた矢先、茉莉衣が「ひろくんがお父さんでパパがお母さんだったらいいのに」と夢のようなことを言い出して……。書き下ろし番外編も収録。

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Posted by ブクログ

父親の転勤で一人マンションに置き去りにされたリーマンの宏伸。26歳のいいオトナなので、一人暮らしくらい大袈裟なと思うのですが、今まで何もかも親任せの一人っ子で家事能力ゼロと聞くと、非現実的な問題じゃないような。
そんな彼の生活に目ざとく気付いたのは、隣に住むバツイチ男典章の娘です。親切なお隣さん親子の好意に甘え、宏伸はおいしい食事と楽しい団欒を味わえることになります。

以前に出ていた新書の新装版。
家族ものラブコメと一言で言ってしまうにはもったいない秀作です。
ファミリーものというと、やはり子供の活躍がキーポイントなのですが、この典章の娘は実におしゃまでアシダ●ナちゃんを彷彿とさせる子。単にかわいいだけじゃなく、典章に『ひろくん捕獲大作戦』なるものを提案する知恵もあり。パパも好きだけど、宏伸にお父さんになって欲しい!という茉莉衣の希望は、一笑にはできない子供ならではの思いが込められてる気がします。
実は宏伸のことを好きな典章。ノンケ同士ですが、一緒に過ごすうちに彼のほうも好意を持っていることに気付いていました。なので「ひろくんからプロポーズしてくれたら、一緒に住もう」と捕獲作戦に同意するのです。

しかし、「ひろくんって、イイ人だけど、ちょっとダメね」と茉莉衣にダメ出しされるくらい、宏伸は見てくれに反してヘタレなのです。そこが良さでもあるのですが、告白になかなか至らない。典章親子がせっかく広げてくれた網に、なかなかひっかかりません。そんな宏伸の、典章好き過ぎてあたふたする人の良さや、オトナの対応ぶりを見せ誘い受けにまで転じて彼を捕獲する典章にうっかり笑ってしまいました。

とても胸が暖かくなるストーリー。癒されると言ってもいいほどです。今のこんな時代だからこその、絆の意味を深く考えさせられました。血の繋がりがなくても、男同士の親でも、家族という深い絆で結ばれた単位を作り上げている彼らの幸せの形に不自然さを感じません。常識や性別に捕らわれることない家族の形態は、現実味すら感じさせるのです。
彼ら3人は幸せでも、周りを取り巻く現実はたやすく受け入れてはくれないだろうけど、宏伸の父母の理解もそう遠い話ではなさそうです。そういうゲイに対する親世代の困惑まで拾い上げて描かれているのがいい。夫夫喧嘩の原因も、年頃の息子を持つ母親のおせっかいがリアルで面白かった。
優しさが優柔不断になってしまいがちな宏伸なのですが、茉莉衣の機転や、典章の愛情が彼をポジティブにしていくのです。三位一体てかんじ。

年上らしく積極性もあって強い心を持った典章と、へタレだけど誠実でやさしさのある宏伸が、互いを思いやり、娘のために温かい家庭を築こうとする姿に心癒されました。
夜の夫夫生活も必見。娘がいるのでそうそうベタベタできませんが、やりくり上手。ちゃんと甘くて羨ましいほどラブラブです。

番外編ペーパーは、「初めてのデート」。二人は30代。茉莉衣は中2になっていて、もう頭は立派な大人です。そんな娘の後押しで、二人きりで甘い時間を過ごすことに。娘が学校行事の旅行で不在だと著しく二人のテンションが下がるところが受けました。年月を経て、ヘタレな宏伸が攻らしいところみせていて、胸が熱くなります。

小椋ムクセンセのイラストがまた心和みます。

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2012年02月13日

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