あらすじ
テロリズム、インテリジェンス、サイバーセキュリティ等は、遠い世界のことと思いがちですが、こうした問題は意外にも私たちの日常生活とも密接に結びついています。20世紀の冷戦構造があった時代には、世界情勢の中心は米ソを軸とした二極の対立でしたが、ソ連崩壊後の世界では、民族・宗教・思想の対立が複雑化・混沌とし、テロや紛争が各地で絶え間なく起こっています。
社会の諸課題が複雑化して既存の知識や分析枠組みが通用しにくくなる中、ガバナンス的思考は今後更に重要になるでしょう。こうした領域の一端に触れることによって、ガバナンス的な思考センスを身につけるためにも有効な一冊です。
さて、インテリジェンスとは何を指すのでしょうか?
「インテリジェンスとは、『政策決定者が国家安全保障上の問題に関して判断を行うために政策決定者に提供される、情報から分析・加工された知識のプロダクト、あるいはそうしたプロダクトを生産するプロセス』のことを言う」。
この定義にしたがって、本書では、情報分析の素材となる情報の収集方法、情報の加工の方法、またその過程における有効な方法と陥りやすい誤りなど、実践的な知識を提供しています。
そして、CIAやモサド、MI6や公安などインテリジェンス機関の活動の一端についての紹介やコラムで実際の事件を扱います。インテリジェンス機関と犯罪捜査機関との相違点もあきらかにされます。
得られた情報に、分析という加工を経たプロダクトの優劣の考え方、また、ミラー・イメージング、クロス・チェックといったプロダクト生成時の問題や改善法などについても述べられます。
インテリジェンス入門として、情報収集と情報加工の教科書として、格好の入門書です。
[原本]
『インテリジェンスの基礎理論 第二版』立花書房
学術文庫に収録するにあたり、全面的に改訂した。
【目次より】
学術文庫版はしがき
第一章 インテリジェンスとは何か 定義、機能、特徴
第一章の補論
第二章 インテリジェンス・プロセス
第三章 インテリジェンス・コミュニティ ― 日米の組織
第四章 インフォメーションの収集
第五章 インフォメーションの分析
第六章 その他のインテリジェンス機能
第七章 インテリジェンスの課題 伝統的な課題から新たな課題へ
第八章 インテリジェンス組織に対する民主的統制
【巻末資料】
解説 佐藤優
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Posted by ブクログ
同一著者の同一タイトルの専門書を文庫版としてリニューアルした内容。前者が廃刊となっている為、本書の出版はありがたいが、第二部に相当する部分はカットされており、個別テーマの深掘りには物足りなさがある。
Posted by ブクログ
インテリジェンスの基礎知識が記述された本で、理論と実践ともに充実した内容である。はじめに、著者が本書におけるインテリジェンスの定義を提示して、その定義に沿って、インテリジェンスのプロセス、客観性、短期、中長期的な視点、分析の手法を教授したり、また日本と他国との諜報機関を比較検討する。
Posted by ブクログ
インテリジェンスとは、「政策決定者が国家安全保障上の問題に関して判断を行うために政策決定者に提供される、情報から分析、加工された知識のプロダクト、あるいはそうしたプロダクトを生産するプロセス」のことを言う。
上記の定義は、本書で20回くらい繰り返される。と言うのも、インテリジェンスの理論は政策決定者とインテリジェンスコミュニティとの緊張関係の緩和を軸に発展してきたからだ。
具体的には、インテリジェンスコミュニティが政治家にとって都合のいいプロダクトを生産する、インテリジェンスの政治化が一例だ。客観性が担保されるためには、民主的な統制がいる。
一方で、民主化されすぎるとコミュニティの透明性が過度になり、秘密情報が他国に漏れやすくなる。これは、逆に安全保障上の危機を招く。
さらに、各情報機関(警察、公安、防衛省など)の対立や緊張関係も、真に総合的な分析(オールソースアナリシス)の妨げになるため、よくない。
このように、各機関をうまく統制・統合し、国家安全保障上の問題を正しく解くためのプロダクトを作ることが、情報分析官には求められる。
ここまで書いて思うのは、これはあらゆる企業にも適用できる。安全保障上の問題を、コンプライアンスや競合他社との関係に置き換えても、色々と示唆が得られるかもしれない。
Posted by ブクログ
アメリカがイランの最高指導者であるハメネイ師を殺害した。
CIAがハメネイ師の居場所を追跡調査しており、会議が行われる場所と日時を特定したことからミサイル攻撃に至った。
CIAは、いわゆるスパイ活動に代表される、人的情報に基づくインテリジェンスを中心に行っている組織である。
インテリジェンスは情報の収集から始まる。
情報の種類として、大きく次の4つに分類されている。
公開情報(オシント)…テレビ、新聞、インターネットなど
人的情報(ヒューミント)…スパイ、外交官、海外を訪問した一般人、犯罪捜査の取り調べなど
信号情報(シギント)…電子的な通信の傍受、暗号解読、通信量や頻度、レーダーやミサイルから発せられる電波等の解析
地理空間情報(ジオイント)…衛星やドローンなどによる地形や物体の動きの把握と分析
ハメネイ師の殺害でもCIAの調査だけでなく、上記の各種インテリジェンスの複合で行われたのであろう。
インテリジェンスは国家安全保障に関するものであり、政府の機能であるとされる。
個人的な経験談、思い付き、感情論にならない理論的枠組みの構築が重要になる。
インテリジェンス活動が進んでいる国としてアメリカやイギリスがある。
日本は政府の機能として存在しない。
特定機密保護法の制定にあたっても、政府の乱用が懸念されると感じた国民が多かった。
政治への信頼度が高まらないと、日本ではインテリジェンス活動は進まないように思う。
政府のインテリジェンス活動を監視する組織や、情報公開の仕組みを作る必要がある。
アメリカは2001年9.11テロ事件の未然防止に失敗したことで、インテリジェンス・コミュニティが多くの影響を受けた。
日本でもこの時期からインテリジェンス機能強化の取り組みに力を入れ始めた。
2013年のスノーデンによる米国インテリジェンス組織の活動に関する秘密のリークは、情報共有と秘密保全のバランスが問われることになった。
この本は、タイトル通りインテリジェンスの理論を解説した本で、実践方法や実践する上での注意にも触れている。
インテリジェンスに関わる人が最低限知っておくべきことをまとめた専門的なマニュアルみたいなもの。
面白く読ませるようには書かれていないので「基礎理論」なのだろうが難しい。