あらすじ
近代詩の彗星,八木重吉(1898-1927).残された珠玉の詩篇には,生きることへの愛しみと哀しみが満ちている.愛と祈りの詩人を一冊に編む.キリスト教詩人とされる八木は,特定の宗派を超えて受け入れられている.人間の内奥にある普遍的なものが,読む者に働きかけている.霊性と言葉の交響を明らかにする.
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Posted by ブクログ
29歳で亡くなったキリスト者である八木重吉の詩集。
第一詩集の「秋の瞳」は復刻版が手に入りやすいが、第二詩集の「貧しき信徒」は、全集や定本詩集などの古書を探さないと読めないので、岩波文庫で手に入りやすくなったのがすごく嬉しい。
何度も読んだ詩ではあるが、やっぱりすごいなぁと毎回思う。
ただのキリスト信仰でもなく、安易な自然讃歌の詩でもない、ほんとうに人が書いたのだろうかと思うほど純真で、哲学的で神秘的な、もっと深いところにある霊性を感じました。
八木重吉の生い立ちや、創作の背景をより知りたければ、奥さんの吉野登美子が書いた「琴はしずかに」が素晴らしいのでおすすめします。
Posted by ブクログ
八木重吉の詩集ですね。
八木重吉(1898~1927、東京生まれ)二十九歳で亡くなった近代詩の彗星。
編集は、若松英輔さん(1968年、新潟県生まれ)
生前に発表された詩集は『秋の瞳』一冊だけです。
自分で編集した『貧しき信徒』は、亡くなられてから発刊されました。それと、残された多くの『詩稿』とキーツ、ブレイクの『訳詩』から精選された詩集です。
いずれも短い詩は、『生きること、在るへの愛しみとかなしみに満ちている。人間の内奥にある霊性が、読む者にはたらきかけてくる。』と、編者が語り掛けています。
「胡蝶」
へんぽんと ひるがへり かけり
胡蝶は そらに まひのぼる
ゆくてさだめし ゆえならず
ゆくて かがやく ゆえならず
ただひたすらに かけりゆく
ああ ましろき 胡蝶
みずや みずや ああ かけりゆく
ゆくてもしらず とももあらず
ひとすぢに ひとすぢに
あくがれの ほそくふるふ 銀糸をあへぐ
「詩稿」より
宇宙のこころは かんじてゐる、
いまの世はくちた世であると
そして、あたらしい芽がこの世から出ないなら
焙きほろぼすにしくはないと、
為政者やぬすびとだけがいけないのでもない、
純情の人といへどもかなしき不具者である、
ああ、さむげに
ひかるように かんじてゐる宇宙のこころよ、
「詩稿」より
詩をうむこころ
それはおさないこころです、
ただそれはつめたくはない、
うつくしく
あつく しづかに、
たとへ春の花であっても
詩にあっては秋の空のなかに咲きます、
「詩稿」より
なにゆえ
草はうつくしきか
みづからのすべて
みづからによりてつくられしゆえなり
なにゆえ
にんげんはうつくしからぬか
みづからならぬもの
みづからのうちにあるゆえなり
いっぽんのくさのうるわしさは
ひとつのほのほのうるわしさにかよふ
くさの葉の
そのかたちは
つくりぬしの
こころながるる そのすがたなり
底辺にキリスト者の精神を宿し、生命と運命を見つめている。自身の存在を確かめながら、森羅万象を感じながら詩に託されている。
短い命を翔け去った詩人の名残の珠玉は、美しい言葉で綴られていますね(=゚ω゚=)
Posted by ブクログ
「神様の名を呼ばぬ時はお前の名を呼んでいる」という詩に衝撃を受けてから八木重吉を追っていて、ついに岩波から詩集が出ると聞き、ずっと楽しみにしていた。発売日に購入。ストレートで響く詩に沢山出会えた。