【感想・ネタバレ】文品 藤沢周平への旅のレビュー

後藤正治

私は長く、藤沢作品の一読者であったが、別段、作品がそのときどきの人生的テーマに解を与えてくれたことはない。教訓的作品として読んだこともない。覚えてきたのは、静謐な物語と文体が体内の深い部分に触れてくる感触である。空洞をふさいでくれるごときものを覚える折もあった。癒されていたのかもしれない。（本文より）

歳月が持つ哀しみ、自分なりの小さな矜持、人生への情熱、権力の抗しがたい美味と虚しさ、喪失感――時代（歴史）小説を舞台に、静謐な文体で人の世の「普遍」を描き続けた作家、藤沢周平。ノンフィクションの名手が、その人と作品の魅力に迫る。

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藤沢周平のお気に入り作品を編年体で解題する。ノンフィクションの名作家だけに読み方とさらに作品に対する理解、表現が素晴らしい。一粒で2度美味しい一冊。
既読の藤沢周平作品については言うことはないが、他に作品に対してはネタバレになってしまうのが難点。
とはいえ、筆者ほどの力量は持てないがあらためて藤沢周平の多くに挑戦してみたくなった。

[ブクログ · ★★★★★]

改めて藤沢周平を想う。30代の頃熱心に読み続けた作家であった。映画化された作品も多くあり、いずれも映画館に足を運んだ覚えがある。
没後28年。作家は亡くなると急速に忘れ去られてしまう。正直、私もここ何年も藤沢作品は読んではいなかった。
この本に私は叱られた気がする。また、作家は亡くなっても作品は今でも生きていて、ひっそりだが輝いている事を教えてくれた。改めて藤沢作品を読み返してみようと思う。まずは「彫師伊之助捕物覚え」辺りから。