あらすじ
「群像」連載を書籍化!
全国の数ある中学校のうち、唯一「中」という漢字が付かない中学校「慶應義塾普通部」。福澤諭吉の精神が今も生きる学校で「私」が目にしたものとは? 政治学者にして「鉄学者」のその後を決定づけた普通部の三年間を描いたメモワール。
少年は「真のアカデミア」に出会うことはできるのか?
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Posted by ブクログ
三色旗をモチーフにした表紙とタイトルからして、慶應に関する本であることは
承知して読み始めたが、出だしから強烈に引き込まれた。
著者は1975年、開成中学の受験に失敗し、慶應義塾普通部に入る。
私はその一年前、同じく開成を落ち、中等部に入る。
1年違い、日吉と三田の違いこそあれ、ほぼ同時代に同じ組織内にいたのだ。
石原良純が2年生、とある。私にとっては同学年。
塾歌が、中学の歌よりも印象に残る、ってのも一緒。
あ、原洋服店で制服をあつらえた、ってのも一緒だった!
「早慶戦」にも行っている。同じ試合を応援してたかも。ん?早慶戦?
国鉄の「スト権スト」で休校になる。ロッキード事件発生。
このあたり、自分の経験とオーバーラップする。懐かしい。
しかし途中から変わってくる。普通部には「労作展」というのがあって、
夏休みに何かしら研究して発表するのだそうだ。中等部にあったかな?記憶にない
そこで著者は、国鉄を何度も訪ね取材して、「南武・青梅線及び沿線の都市」を
完成させる。原稿用紙140枚。大作だ。当然賞を取る。
さらに翌年は135枚の「横浜線」を完成させる。
国鉄の社員からダイヤや掃除予定表ももらって。凄い取材力。これぞ勉強。
これがタイトルの「日吉アカデミー」ということだ。
しかし横浜線はマニアック過ぎて?賞は取ったものの先生に評価されず、
3年生の時は先生受けする翻訳にかかるが、1,2年のような興奮はない。
次第に慶應の指導に疑問を感じる。
商学部入試漏洩事件も出る。同級生の父親が逮捕された。
中等部長が辞めたのもそういうことだったっけ。記憶が飛んでいる。
そういうこともあり、著者は大学推薦を辞退し、早稲田に行く。
だから慶早戦と書かず、早慶戦と書いたんだな。
いずれにしても、同時代を生きながら、なんてこんなに鮮明に記憶しているんだろ。
自分は何をしていたんだろ。まだらにしか記憶がない。
日記はあるが、読もうとは思わない。
そういえば一昨年死んだ友人も、なんでも覚えている奴だったな。
文章に起こせばよかったのに。もったいない。学者が向いていたのかもしれない。
著者は学者になっている。
いやいや、刺激のある本だった。
エピグラフ
第一章 受験の朝
第二章 入学
第三章 早慶戦
第四章 南武線・青梅線
第五章 「なぞの転校生」
第六章 春闘の季節
第七章 運用番号と編成番号
第八章 「横浜線電車列車ダイヤ」と「車両運用検査清掃予定表」
第九章 アカデミアの幻想
第十章 「未来からの挑戦」
第十一章 関西私鉄との出会い
第十二章 慶應の「黒い霧」
第十三章 再び第一校舎へ
あとがき