あらすじ
「白峯」「菊花の約」などで知られる上田秋成の古典「雨月物語」を下敷きにし、近未来を舞台に人間の業と怪異と家電(?)を描いた不思議で恐ろしい九つの短編集。 ・大企業「シラミネ」の経営者はデジタル遺影を片手に亡き祖母の思い出を語りはじめ……(「シラミネ」) ・オンライン空間「Kikka」の中で出会ったアカナと共に、ゲームの世界大会を目指す祐介だったが……(「キッカの契り」) ・見合いの席で、正太郎はから古めかしい炊飯器を見せられる。その炊飯器には曰くがあるようで……(「キビツの釜」)
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Posted by ブクログ
「雨月物語」‥タイトルは聞いた事ある、コワイ話なんだろうな、ぐらいの認識で、読んだことはない。
でも、これを元にしてるのだったら読んだ方がいいでしょう、と思い、「雨月物語を一編」→それを元にした本書の一編」という感じで読むことにした。
「雨月物語」の話をベースに、時代は現代に置き換え、アレンジして、電化製品を必ず物語にからませる。アレンジはいいとして、何故電化製品を?このキテレツな設定は、普通は考えつかない。発想の勝利だと思う。
元々の話が、うすら怖い感じの怪談で、オール電化でも雰囲気はそのまま、うまく現代風にしてある。電化製品のからませ方も違和感なく、なるほど〜という感じ。だいたい、後味悪く終わる。
私がいいなと思ったのは、「菊花の約(ちぎり)」→「キッカの契り」。元は、友人との約束を守る為に自死を選ぶという、現代人からしたら「そこまでしなくても!」という話なのだが、これを、高校生が主役の甘酸っぱい話に仕上げてある。せつないラストなのは変わらないけど、いい話だった。
後は、「青頭巾」→「アオズキン」と、「貧福論」→「ヒンプク論」が、後味悪くない。
本書だけでも十分面白いのだけど、余裕があれば、「雨月物語」から読むことをお勧めしたい。この話が、こう来るかー、と、楽しめる。
Posted by ブクログ
雨月物語を現代風にアレンジした、ホラーテイスト短編集。
お気に入りは「シラミネ」
主人公目線で読んでいくと、主人公は苦労の末に成功したと思われたけれど、大どんでん返しでしたね。
「アサヂが宿」
なんて自己中な主人公かと思っていましたが、ラストが旦那さんの仕掛けた罠にハマってゾッとしました。大人しいと思っていた旦那さんが一番怖かったです…
Posted by ブクログ
おもしろかったけど、「キッカの契り」(オマージュ元 菊花の約)だけ、元ネタの個人的に一番グッとくる部分が変わってて悲しかった…
(元ネタどおりだと、救いようがなくなるのですが…)
元ネタだと、この日この場所で会おうと固く誓った師弟のうちの師のほうが、幽閉されてしまい、とても約束の日に間に合わないことが分かったときに、『人は一日に千里をゆく事はできないが、魂は一日に千里をもゆく』という言葉を思い出して、自刃して自分の魂だけを約束の地に送るという話です。
能動的に魂だけになるくらい約束を果たす強い想いがあるのと、魂だけになってしまった時に強い想いがあるからサイバー空間に現れることができて約束を果たせたのは、近いようでかなり違う気もする。
Posted by ブクログ
【収録作品】シラミネ/夢応のリギョ/ブッポーソウ/アオズキン/蛇性のイン/キッカの契り/ヒンプク論/キビツの釜/アサヂが宿
古典「雨月物語」を、近未来の怪談として書き換えた物語。
「シラミネ」 原典は「白峰」。化粧品メーカーの跡継ぎ問題。
「夢応のリギョ」 原典は「夢応の鯉魚」。遠隔手術システムの執刀医と患者の不思議な邂逅。
「ブッポーソウ」 原典は「仏法僧」。深夜のコインランドリーに現れる不思議な少女とその従者たち。女性Vtuber2人の友情と嫉妬、別れを描く。
「アオズキン」 原典は「青頭巾」。着用するだけで涼しくなる装置が「アオズキン」。その開発者の失踪事件。
「蛇性のイン」 原典は「蛇性の婬」。廃屋を潰れたラブホテル(inn)に置き換え、執念深い蛇に魅入られる怖さを描く。
「キッカの契り」 原典は「菊花の契り」バーチャル空間の友情。オンライン空間「Kikka」の中で出会ったアカナと共に、ゲームの世界大会を目指す祐介だが、アカナの死を知る。
「ヒンプク論」 原典は「貧福論」無人タクシーにお金の精が現れる。
「キビツの釜」 原典は「吉備津の釜」。鳴釜神事を、音を発する電気釜に変更。見合いの席で、正太郎は曰く付きの古めかしい炊飯器を見せられる。
「アサヂが宿」 原典は「浅茅が宿」。沖ノ鳥島に単身赴任中の妻と彼女を待つ夫の物語。
因果応報ともいうべき結末は納得。
「キッカの契り」はきれいに現代に置き換えられているが、切ない。