あらすじ
下町風情あふれる浅草に残った旧作映画を上映する昭和レトロな映画館。じつは所謂「ハッテンバ」だった。しかも警察や消防が時には出動してくるなど場内はカオス状態。多額の借金を背負い、そこに映写係で勤務することになった著者が体験する疾風怒濤の日々。かつては映画館街として栄えた浅草から、ついに映画の光が消える日がやってくる……。文庫オリジナル/解説 鈴木里実
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Posted by ブクログ
映画を愛し、映画館を愛したひとのちょっと変わった映画館での日常を描く。その奇妙な日々の音まで聞こえてくるような生き生きとした文体。筆者の人柄がわかる。
文末の解説は新進気鋭の映画館で働く次世代によって書かれたもの。併せて読むと、映画館の文化が続いていくことを切に願わずにいられなくなる。
Posted by ブクログ
かつて浅草六区に存在した老舗映画館の上映技師によるエッセイ。
タイトルの「魔窟」の意味がわからない人も多いと思うが、場末の映画館というのは、いかがわしい場所でもあって、下町・人情みたいなきれいごとではすまない場だったことを言っている。著者が浅草新劇でフイルムを回していた2000年代後半、私は系列の浅草名画座でやくざ映画に入り浸っていたので、あれからもう20年近く過ぎたことに軽く驚きつつ、当時の浅草六区の雰囲気を思い出す。
だが本書は街エッセイではなくて、映写技師の目から見た映画興行史の証言と読んだ方がよい。フイルムからデジタルへ、映画館からシネコンへ、スクリーンからモニター画面へ、そしてネット配信へと、映画体験の変化は今もなお続いている。浅草の名画座閉館の流れに、東日本大震災が与えた影響も小さくはない。そうした諸々も含めて映画を考える時、本書は必読の本と言えるだろう。