あらすじ
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鬼才、覚醒。
矢部嵩の前では、すべてが平等だ。
二十五編の物語。
表題作「未来図と蜘蛛の巣」及びそのシリーズ(講談社「tree」で連載)に加え、既発表の掌編と書き下ろしを収録。
矢部嵩の小説に説明は不要。
矢部ワールドに足を踏み入れたが最後、あなたはそこから出られない。
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Posted by ブクログ
10年ぶりの矢部嵩の新刊、うれしすぎて極力何も情報入れずに読んだら短編集だった。めちゃくちゃ面白かった。内容の前に、装幀があまりにもよすぎる。最初はぎょっとしただけだったけれど読んだあとに戻ってみると目次のデザインだけでいくつこだわりがあるんだろうと感動した。殺人野球小説のページ数がうっすら隠されてるのはエンタの長さに気づかせないため? 全てで驚きを与えようって気持ちが伝わってきて読んでいてとにかく楽しかった。日常っぽい淡々とした流れに異質な文が平気な顔で紛れ込んでくるし、『魔女の子供はやってこない』を読んだときの独特の気持ち悪さが感じられて本当にうれしい。
これも未来図と蜘蛛の巣なんじゃ……って思いながらぞわぞわ読んでいって、単体で面白い全く関係ない話にリンクができるのが気持ちよかった。8等分していると明言せず、16人で2個のケーキを同じ数にしている描写で蜘蛛の巣を感じさせ、未来を夢見て蜘蛛の巣にがんじがらめになって、ここにもここにも未来図と蜘蛛の巣があるって思いながら読んだ。蜘蛛巣未来が未来を失う前日でまたね、と終わるラストもいいなと思っていたら、初出欄で「待ち合わせる」の題を知り、「帰る」ってなんだ?となって仕掛けに気づいて次元を超えてくる作りがすごい。背表紙の花散ってるし。「待ち合わせる」の文は、?のあとに空白を入れていない違和感があって、他の作品は全部正しい書き方をしていたから編集の見落とし?と思っていたんだけれどこれ、作品部分とリアルを切り離しているんだ……と伏線にやられていたことに気づいた。
フォントや装幀が大好きなので「エンタ」は内容も作りも好き。次々死んでいくか悲惨な目に遭うのにこの表現はどうかと思うけれど、登場人物が生き生きしていて好き。特にソースの復帰試合とその注釈に今まで読んでいた情景がガラッと変わるのを感じた。小説のぎりぎりを攻めた文字表現に振り回され、レプリカと亡霊たちのことに気づいてまた読み返した。逃げられたはずのメシーの最期が長くて苦しい。
表題作や「未来を予言する才能について」の執着の描き方が好き。同棲を解消したことを"彼女の抉れた部屋"って書くの表現がうますぎる。抉られたようにそこからいなくなっていて、でも傷跡として残ってるんだなって反芻した。「未来の友人たちと」「フォロー」の気味の悪さが好き。父は介錯したのか?残酷なのか?生命に興味がないのか?苛立ったのか?私には?
とにかく面白かったです。