あらすじ
ナチスドイツ占領下のポーランドでレジスタンス運動に活躍した、勇敢なユダヤ人女性たちがいた。彼女たちは武装蜂起を率い、武器や資金の密輸に尽力し、勇敢にもナチスに抵抗した。これまで男性たちの陰で語られなかった彼女たちの真実を描く、歴史ノンフィクション。
戦争において男性を物語の中心におく伝統的な記述では、女性たちの貢献が軽視されてきた。しかし著者は、第二次世界大戦において重要な、女性たちの経験に関する多くの事実を発見する。
綿密な調査にもとづき生々しく描かれる、ナチスによってゲットーに押し込められたユダヤ人たちの暮らしと、強制収容所での凄惨な日々。そして秘密活動に従事する女性たちの手に汗を握る緊迫した日常。
スティーブン・スピルバーグ監督によりハリウッド映画化権取得済!
「何であろうと彼女たちを止まらせることはできない。その決意を揺るがせるようなものは存在しない……女性たちの物語は、歴史の輝かしい1ページとなるだろう。この娘たちは不屈だ」
(歴史家エマヌエル・リンゲルブルム(1900年-1944年)がワルシャワ・ゲットーで書いた1942年の日記より)
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
独ソ戦で実在した女性だけの狙撃小隊を題材とした『同志少女よ敵を討て』を読んで、そちらはフィクションなのだが、本書の『ゲットーの娘たち』は実話。いずれも女性が戦う話だが、重みと残酷さが全く違う。戦う相手との対等性がないから、被虐的で不利な立場からのレジスタンスである。
ユダヤ人という差別の対象に加え、「女性」という更に弱い立場。女性が真に弱い立場なのかは異論があるかもしれないが、戦争においては腕力の差に加え、女性性自体が欲望の対象とされかねないという事実から、不利である。そして本書ではそのハンデを負いながらも逞しく生きるゲットーの女性を描くと同時に、やはりその対象となる惨さも描くのである。
ー 「たとえ死ぬとしても」とレニャはアッバ・コヴネルのレジスタンスの信念をそっとつぶやいた。「食肉処理場にひきずられていく無知な羊のようには死なない」
彼女の決意は熱い炎のように燃え上がった。それはすでにベンジンの若者のあいだに燃えさかっていた炎だった。
食肉処理場に引きずられていく無知な羊にはならない。ガス室に運ばれる車両で、なすすべくなく諦めざるを得ない絶望に対し、まだ戦っていくという勇気を奮う方が難しい。殺されるくらいなら、最大限の抵抗をしてやると想像では言えるが、いざ銃を目の前にしてその姿勢を貫けるだろうか。
写真も掲載されている。綺麗な女性たちだ。
一皮むけば、人間は悪魔だ。服従の真理やアイヒマン実験などもあるが、悪魔という以外に、この所業を形容できない。どうしてこのような事ができるのか、命令への服従以外に、本質的に人間に悪質なものが眠っているのではないかという気がする。それは日常些細な嫉妬や欲望なのかもしれないが、何かをきっかけに増幅し、暴発するのではないか。それを防ぐための法律や道徳だとしても頼りない気がする。