【感想・ネタバレ】嘘つきアーニャの真っ赤な真実のレビュー

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年12月08日

主人公マリと、マリが少女時代に通っていたプラハソビエト学校の同級生の物語。マリが歪みに歪んだ社会においてどのように成長していくのか、同級生はどのように成長していったのか、ノンフィクションで共産主義社会の歪みを描く。

最初に在学中の友人との思い出を、その後に30年後の再会を語る。これ一冊でプラハの春...続きを読むや、チャウシェスクの治世、ユーゴスラビア紛争に触れている。あまりにも重たく面白い。そしてそのさなか、同級生がどのような価値観を持っており、それがどう変遷したかを明白に示している。

最初にギリシャ人で勉強のできないリッツァの物語。親がギリシャ共産党の要人だった。レーニンのことを『一度も労働者階級になっていない中そこそこ裕福な暮らしを続けた』と見抜いている。父がプラハの春への軍事鎮圧に反対して放逐され、残された彼女は必死にカレル大学で勉強。医学をおさめてドイツで医師をしていた。

二人目はルーマニアのアーニャ。両親がチャウシェスクの腹心であり、特権を濫用してバカでかい屋敷に住み、およそ労働者階級らしくない生活、何一つ不自由ない暮らしをしていた。鎖国している中海外留学してイギリスに逃れ幸せに暮らす。再会後、マリは(うまく言えないが)アーニャの背景には幾多のルーマニア人の血と汗の臭いを感じ取っているが、彼女は無頓着にイギリス人としてのアイデンティティを持ちながら、コスモポリタン的楽観的主張をしている。アーニャの兄、ミルチャは両親の既得権益を貪るさまを毛嫌いして、学問の世界に生きる。片や特権を最大限活かし国外脱出した組、片や(多少特権にお世話になりながらも)自身の特権を恥ずかしく思い等身大の生き方をしようとする組、その残酷な対比が際立っている。そして、真っ赤な真実には血の赤さも含むように感じる。

三人目はユーゴスラビア人の才媛、ヤスミンカ。母国がソ連と反発し合う中孤独感を募らせていた。同じくソ連と反りが合わない日本共産党員の娘マリと、孤独を軸に仲良くなる。しかし、彼女は新しい校長にいじめられ、ユーゴスラビアに戻ることに。その後、ユーゴスラビアは崩壊。なんとヤースナの父はボスニアの大統領だった。父のいるボスニアと、セルビアの戦争で苦しむ。自分がユーゴスラビア人という自覚はあるが、ボスニア人(ボシュニャク人というべき?)という感覚はない。ムスリムでもない。この戦争が恐ろしく、亡命したい気持ちもあるが、それでもこの国が母国であった。セルビア人の友人もいるしモンテネグロ人の夫もいる。そういう割り切れなさに思い悩んでいた。彼女はその思いをボイボディナの素朴派画家の祖国への思いと重ねているようだった。

読んでいて感じたのは、実に若い(幼い)主人公たちが政治的な主張を何度もすることだ。特にアーニャの場合顕著だが、思春期真っ盛りの学生から『というわけで、ルーマニアの農民が草鞋しか履けないなんて完全なデマ、ルーマニアとソ連両国人民の友好に楔を打ち込もうとする悪質な反共キャンペーンだわ』という発言が出ることが真に幸福なことかと考えてしまう。

思春期くらいの学生が政治的思想に触れることには価値があるだろうが、それは自分で考える主体性を身につけるための過程において価値があるのであり、統治者に取って便利な政治的あるいは国粋主義的な模範解答を作り出すことには価値がないだろう。特に『悪質な反共キャンペーン』というフレーズは相手の名誉を地に落とす、破門にも通ずる恐ろしいものだ。反共というだけで相手に不道徳のレッテルを貼ってしまう。

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Posted by ブクログ 2024年04月13日

1960年~1964年、プラハのソビエト学校(9才~14歳)で学んでいた日本人作者が大人になってソビエト学校時代の友達に会いに行く、というノンフィクション。20世紀後半の東欧の出来事に絡んでいて、(共産主義、ソビエトの崩壊、独立戦争、内戦、等)歴史は詳しくないので読むのに時間がかかりましたが、199...続きを読む0年代の東欧の歴史がわかり面白かったです。

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Posted by ブクログ 2023年11月10日

ラジオ「高橋源一郎の飛ぶ教室」で聴いて。
著者が生きていたら・・・とラジオでも話していたけれど、どんな発信をされるだろう。

30年以上前のノンフィクションだが、今現在、世界は全く変わっていない。まさに今読むべきかもしれない。
古代から、宗教、民族、思想と難しすぎて、ヨーロッパをはじめ、なかなかすべ...続きを読むてを把握できないけれど、とにかく変わらず争いが続いている。

ただ、この当時、3人ともに再会できたことが救いでもある。

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Posted by ブクログ 2023年09月06日

「アーニャの言動や生き方にいちいち抵抗を感じながらも、自分はアーニャが好きなんだと思った」
人と人とのつながりには全てが影響し、そして何も関係しないのか。

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Posted by ブクログ 2022年10月21日

読書会参加二回目、課題図書
いい本を挙げて頂いた
米原真理さんは「犬猫好き」で有名でエッセイも楽しませてもらった
有能なロシア語の同時通訳者だったそうで、ゴルバチャフさんのお気に入りだったとか

プラハの「ソビエト学校」の個性的過ぎる同級生三人
両親の生きざま、時代背景、国家まで背にして生きざるを得...続きを読むなかった彼女たち
三人を探し出し、涙の再会
夫々の過酷な人生を想う
どうぞお幸せでありますように
万理さん、悔しいです

現在のウクライナ情勢も考えずにはいられない。
地図を見つめながら……

≪ 激動の 東欧の点 真実は ≫

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