【感想・ネタバレ】リンカン 「合衆国市民」の創造者のレビュー

あらすじ

「奴隷解放の父」として,史上最も尊敬を集めてきた大統領であるエイブラハム・リンカン(一八〇九―六五).何百万もの黒人奴隷を国内に抱えるなかで迎えた南北戦争という分断の危機において,彼はいかにして「人民の共和国」という統合の理念を構想しえたのか.政治的リーダーシップの源泉を問う評伝.

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Posted by ブクログ

リンカンの生涯とともに、当時の社会状況の変化と、彼の思想・葛藤の変遷を描く。

リンカンは、「連邦の統合」を求め続けたが、始めから奴隷解放を追求したわけではなかった。政治状況や民衆の意識、そして何より南北戦争の動向のなか、かなり考え抜き、戦略的に奴隷解放宣言にたどり着いた。

重要なのは、それが倫理としての問題だけではないということだ。独立宣言という連邦のアイデンティティ、北部を中心とした近代化に向けた労働市場の要請など、ポイントは多岐にわたる。そのなかで、終戦後の社会再統合まで見据えての選択であり、さらには「解放奴隷をどう扱うか」まで具体的政策にも落とし込もうとした議論だったということだ。

本書にはその生々しさと、一筋縄でいかない過程が克明に描かれている。
そして彼の暗殺後、「評価」や「神格化」という形で政治利用されていく様も触れられており、グロテスクさまで感じさせる。

リンカンが暗殺されていなければ、世界はどうだっただろう。
リンカン死後昇格したジョンソン大統領が南部側に恩赦等を連発し奴隷解放宣言すら骨抜きにしようとした姿は批判的に語られるが、リンカンなら果たして。
どうしても我々はリンカンを英雄視してしまい、奴隷解放を推進しただろうと思ってしまいがちだが、ただ連邦統合を最優先するにはやはり南部側への譲歩は一定必要だったと思われるし、リンカンもそうしたかもしれない。
どこまで譲歩し、どこまでは譲らなかったのか。きっと程度問題だと思う。
ただ、リンカンが生きていれば、その後のアフリカ系アメリカ人(を中心とした非白人)の運命はどう変わったのか。どうしても夢想したくなる。

大分本から話は逸れたが、それだけ思考を刺激してくれる良書だった。ぜひ。

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2025年06月29日

Posted by ブクログ

リンカン、リンカーンと思ってましたが、リンカンと伸ばさないのですね。
アメリカの大統領で、「人民の、人民による、人民のための政治」という言葉は知っていましたが、他は知りませんでした。
この本を読んで、リンカンはちゃんとした学校にはほとんど行っていなかったこと、若い頃はレスラーをしていたこともある、独学で弁護士の資格を取得したことなどを知りました。
リンカンが大統領だった時に南北戦争(この本では「内戦」と書いてます)が起きたこと。
この内戦を終結するためには、奴隷制度を廃止する必要があったこと(なぜなら奴隷制度の是非が戦争の根本的な原因)などを知りました。
リンカンは政治キャリアをスタートした時は、奴隷制度については廃止すべし、という考えを持ってはいませんでしたが、アメリカ社会の情勢を素直に受け入れ分析して、奴隷制度の廃止こそがアメリカの国民を、州の市民という州ごとのバラバラの存在からアメリカ合衆国市民へと統合された存在に変えるものだ、と考えたようです。
リンカンの素直な心と現状認識の的確さ、実行力は凄いと思いました。

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2025年03月21日

Posted by ブクログ

「奴隷解放の父」として知られ、南北戦争という分断の危機を乗り越え、アメリカ合衆国の再統合を導いたアメリカ合衆国第16代大統領・エイブラハム・リンカンの生涯を辿り、合衆国の統合の過程を描く。
偉大な大統領の代表のようなリンカンだが、その人生は決して順風満帆なものではなく、苦闘に満ちたものだったということを理解した。奴隷制に対する考え方や方針が人生の中で変化していたということも興味深かった。将来を見据えた想像力・構想力を持ち、見定めた方針に向かって強い意志と覚悟で突き進むリンカンの政治家としての姿は、現代の政治家にも学ぶところが多いと感じた。
ただ、外面的なリンカンの人生の歩みについてはよくわかったが、リンカンの(内面的な)人間像についてはちょっと見えにくかったように思った。また、現職の議員でもなかったリンカンが大統領候補になる過程や大統領選をいかに勝ち抜いたかといった部分も記述が薄く感じた。

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2025年08月17日

Posted by ブクログ

国家という人為的に作られたものに対し、何を根拠におくかをとことん考え抜いた人であったのだと思う。日本はどうなのか

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2025年05月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

最後の部分がリンカンの神話の説明であった。中心は南北戦争での奴隷解放宣言であった。綱渡りの政治であることがよく分かる内容である。

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2025年04月09日

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