あらすじ
いかにユーザを熱中させるか。いかに「楽しい!」を引き出すか。人気ゲーム「釣り★スタ」と「怪盗ロワイヤル」を題材に、人を夢中にして離さないしかけを徹底分析。顧客ロイヤリティを向上させる仕組み「ゲーミフィケーション」の理論と実践を詳細解説!
■刊行に寄せて
「いま大注目のゲーミフィケーションを知らずして、ソーシャルゲーム、Webマーケティングは語れない。本邦初にして、完全なガイドが登場した。怪盗ロワイヤル、フォースクエア、グルーポンに人はなぜハマるのか。その背景にはゲーミフィケーションがある。そして、そのコンセプトが企業マーケティング、教育、社会貢献に使えるのはなぜなのか。本書はその理由を徹底解説する。ITを熟知しながら、あらゆる分野を横断する知見を備えた深田氏こそ、ゲーミフィケーションの語り部としてふさわしい。」――小林弘人(株式会社インフォバーン 代表取締役 CEO、書籍『フリー』『シェア』監修・解説者)
「本書を読んで、いったいいくつのアイデアが浮かんできただろう。もしあなたがゲームの仕事に関わってきた人(あるいは興味を持っている人)で、ソーシャルとかゲーミフィケーションという言葉に興味があるのなら、頭の中をまっさらにして、この本を読めばいい。」――水口哲也(キューエンタテインメント株式会社 取締役)
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Posted by ブクログ
ゲーミフィケーションという考え方を、ソーシャルゲームという観点から掘り下げ、最終的にその概念をまとめあげている本。ソーシャルの現在のトレンドを押さえた上で、ゲーミフィケーションを構成するためのフレームワーク、およびアプローチも体系的に整理されており、リファレンスとしてもわかりやすい。また、概念的な部分はマーケティングや経営・事業戦略などの分野にも応用できるため、一読の価値はありそうです。
以下、要点と解釈の整理です。
○ゲーミフィケーションとは
ゲーミフィケーションについての定義について、本書を読んでいくとそのヒントがダニエル・ピンク著の「モチベーション3.0」にあることがわかってきます。そのポイントは
・目的 : なすべきことが明確であること
・自律性 : 自発的に行う、強制されて行うものではないこと
・有能感 : 自分の能力が活かされること、それを実感できること
の3点に集約できます。
そしてアメリカの心理学者であるミハイ・チクセミントミハイが提唱するフローの理論に従い、以下の要素が具体的に盛り込まれることが必要となってきます。
・達成できる見通しのある課題に取り組んできる
・自分のしていることに集中している
・行われている作業に明瞭な目標がある
・行われている作業から直接的なフィードバックがある
・無理のない没入状態で行為できる
・自分の行為を統制できる感覚がある
・感情移入ができ、行為が終わった後により強く自己を感じる
・時間経過の感覚が変わる
つまり、自発的にものごとに入り込み、集中するための仕掛けがゲーミフィケーションの重要要素であるといえるでしょう。
また、このときに人間の欲求に訴えかけていくことが必要になってきます。これはマズローの5段階の欲求よりもさらにほりさげた、アメリカの心理学者、スティーブン・リースによる16の分類を考えることが必要となります。
・力
・独立
・好奇心
・承認
・秩序
・貯蔵
・誇り
・理想
・交流
・家族
・地位
・競争
・ロマンス
・食
・運動
・安心
こうした欲求は社会活動の中に存在しており、目的の明確的な定義と自律性の誘引には必要不可欠な概念となってきます。また、有能感を感じるときにも、これらの要素を抑えることは必要でしょう。
さらに、人間には感情があります。この感情があるからこそ、ものごとに変化を感じ、あきることなく継続することができるようになります。以下の6つの基本的な人間の感情は、アメリカの心理学者、ポール・エクマンの定義によるものです。
・怒り
・嫌悪
・恐怖
・幸福
・悲しみ
・驚き
こうした要素を統合し、
・目的を達成するために
・ユーザのモチベーションを高め
・継続的に集中してユーザが行動できる環境を作りだす(パフォーマンスが高い状態を作り出す)
仕組みがゲーミフィケーションといえそうです。もっと単純に言えば、ものごとをを「楽しんで」ユーザが取り組める仕組みといってもいいのかもしれません。なぜなら「楽しい」と感じているときに、これらの要素が必ずといっていいほど含まれているからです。
○ゲーミフィケーション・フレームワーク
ゲーミフィケーションを形にするためにはフレームワークが必要です。以下、キーワードで整理しておきます。
・プレイヤーの分類 : ユーザや関係者の整理
- タイプわけ
・アチーバー : とくにかくゴールを目指す
・エクスプローラー : 新しい発見を求める
・ソーシャライザー : コミュニケーションを重視する
・キラー : 他者との競争を好む
- 習熟度別
・初級者
・中級者
・上級者
・離脱者
・目的・コンセプトの明確化 : 最終的に求めるもの、ゴールのデザイン
・目標設定 : プレイヤー分類ごとにモチベーションを与える目標の設定
・可視化とフィードバック : 状況を指標化し、そのレベルに合わせたフィードバック(報酬)の定義
・ソーシャルの導入
- プレイヤー間の関係性 : 継続したくなる、せざるを得なくなる
- ナビゲート : 互いにプレイヤー同士が助け合う
- プレイヤーの呼び込み : プレイヤーが新たなプレイヤーを呼び込む
- 相場の構成 : ものごとに対する共通認識が生まれる
- 自己表現の場 : プレイヤーのパフォーマンスの向上につながる
- 新たなゴール : プレイヤー間の相互作用により、新たな目標が設定される
・プレイサイクルの定義 : 目標設定 ⇒ 行動の選択 ⇒ 達成のサイクルをスパイラル・アップさせながら継続
・運用による介入 : バランス調整、イベント投入、要素追加などによる継続改善
こうした要素をみると、BPMやユーザエクスペリエンスデザインの話とほとんど変わらないことが良くわかります。ゲーム的な要素を組み込むことによって、ユーザが継続的に楽しめる環境をつくる、という点が強調されることがゲーミフィケーションの特徴といえるのかもしれません。そして、現在のソーシャルのトレンドは、ゲーミフィケーションを実現するために活用度の高い要素となっているわけです。
この本の最後の章でまとめられている通り、ゲーミフィケーションは単にゲーム産業にのみ適用する言葉ではありません。マーケティングやビジネスプロセスにも組み込むことによって今までにない価値を生み出す、その可能性には大いに期待できます。
Posted by ブクログ
某センスの課題図書
ゲーム以外のあらゆることにゲームメカニクスを取り入れると,あらゆることが楽しくなる。すると,モチベーションが上がったり,エンゲイジメントが高まったりする。
Posted by ブクログ
ゲーミフィケーション=「顧客が内発的に動機付けられやすい環境うぃ提供することで、サービスの利用を促進する」手法→「顧客に楽しんでもらうことでももっとサービスを使いたいと思ってもらう」
ポイントプログラムがありますが、これは果たして本来の意味での顧客ロイヤリティを高めるのに役立っているのでしょうか。
ポイントが付与され、それが実質的に現金として使えるのであれば、もらった顧客は間違いなく喜ぶでしょう。ただそのポイント収集行為は企業へのロイヤリティから行っていることなのでしょうか。
少なくともそのような施策からは自然にその企業へのロイヤリティが高まるような気持ちになるとは考えにくいでしょう。有り体に言えば「顧客ロイヤリティプログラム」ではなく、「顧客囲い込みプログラム」でしょう。