【感想・ネタバレ】抗争(小学館101新書)のレビュー

あらすじ

暴力団はなぜ殺し合うのか

2011年8月の島田紳助の芸能界引退や、同年10月の「暴力団排除条例」の施行をきっかけに、暴力団への関心はかつてないほど高まっています。

2012年に入っても、指定暴力団のうち、特に凶悪とされる組織を「特定抗争指定暴力団」、「特定危険指定暴力団」に指定するなどの暴対法改正案が通常国会に提出されるなど、依然、国民の関心を引くニュースが続いています。

本書は、ベストセラーにもなった『暴力団』の著者・溝口敦氏が、広島代理戦争や、大阪戦争、山一抗争など、ヤクザの歴史を語る上で欠かせない数々の抗争を、その背景となった事件から、当事者・関係者へのインタビューまで詳細かつ多角的に綴ったものです。

40年超に渡り暴力団を取材し続けてきた著者でなければ書くことのできなかった内容です。

【構成】
「第一部 暴力団の戦後史」
山口組を中心とした戦後の抗争史を体系的にまとめたもの
(大阪戦争、山一抗争、宅見事件など)

「第二部 実録ヤクザ外伝」
地方で起きた一つ一つの抗争を丹念に掘り起こし、その抗争がその後の暴力団や社会へ与えた影響を考察するもの
(広島抗争、沖縄抗争、名古屋抗争など)

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Posted by ブクログ

繁華街で銃撃戦。手榴弾で爆破。警察官に銃乱射―。そんな話が全編にわたっててんこ盛りでつづられている一冊です。「暴力団はなぜ殺しあうのか?」この疑問に余すことなくこの本は答えてくれますが、重いです。

この本は週刊ポストに連載されていた記事をまとめて加筆訂正の上新書として刊行されたものです。僕はこの連載を飛び飛びでしかも斜め読みで読んでいたのであまりじっくりとは読んでいなかったのですが、このたび書籍化されたということで手に入れて読んでみることにしました。

僕よりも『業界』の動向についてお詳しい方はいらっしゃるかと思うのでさらりとしかないようには触れませんがいわゆるヤクザ、暴力団の文字通り血で血を洗うような抗争を広島代理戦争や、大阪戦争、山一抗争など映画にもなっているような有名な抗争事件を、背景や当事者たちのインタビューを通してさまざまな角度から浮き彫りにし、『暴力団はなぜ殺し合うのか』という命題について、40年間以上も彼らを取材してきた筆者にしか書くことのできないものに仕上がっているなと感じました。

読み終えてわかったことは具体的な組織名や彼らの『掟』にまつわることはことはあまりにも複雑なのでここには取り上げませんが、ほとんどの抗争事件がいわゆる『仲間殺し』というもので、『昨日の友は今日の敵』といわんばかりにかつては同じ組織で見知った間柄が袂をわかった瞬間から『敵』として凄惨を極める殺し合いを全国各地で繰り広げていく。その凄まじいまでの世界に慄然としてしまいました。さらに、抗争にまつわる諸経費も事細かに書かれてあってやるほうもやられるほうも経済的なものが最低でも数千万、場合によっては億単位の費用が発生すると知り、暴力はもちろんのこと経済力という指標が表社会以上に場合によっては重要な意味を持つことを知ることができました。

そして俗に「暴力団の抗争は西に行けば行くほど激しさを増す」という言葉を如実なまでに体現する『沖縄抗争』のくだりが書かれている第二部の第三章『凄惨な仲間殺しが繰り返された沖縄抗争』は読んでいてあまりの残忍さにページをめくる手が鈍ってしまったことをここに付け加えておきます。

彼らの存在がスポットライトを浴びたのは2011年8月の島田紳助の芸能界引退や、同年10月の「暴力団排除条例」の施行がきっかけだと思いますが、今後、彼らに対する風当たりが厳しくなっていく中で、『表向き』大規模な抗争はなくなっていくだろうと思いますが、2012年に入ってさらに指定暴力団のうち特に凶悪とされる組織を「特定抗争指定暴力団」、「特定危険指定暴力団」に指定するなどの暴対法改正案が通常国会に提出されるなどの『追い討ち』が彼らに課せられこういった抗争が『地下』に潜ってしまうのではないか。そんなことを危惧してやみません。この本には筆者の『執念』を感じました。

『彼ら』の内在的論理を知る上でも非常に参考になる文献かと思います。

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2012年04月04日

Posted by ブクログ

本書は2012年に書かれたものだから、既に12年が経過し、暴力団の勢力図も変わっていると思われる。が、しかし抗争=暴力の世界は未だ続いているかもしれない。本書タイトルが表す「抗争」はある意味で動物であるヒトが持つ本能的な要素の一つなのだと思う。縄張りを侵すものがあれば排除する。縄張りの中で生きる為に狩猟する。獲物を探し餌とする。動物的本能剥き出しであるが、そのやり方も社会の変化や法制度の変化に合わせて変わって行く。単なる暴力、腕っぷしの強さだけでなく、頭を使い、法の隙間を隙間をギリギリをすり抜け、町中に死角がない程に設置されたカメラの隙間を縫って、生きるための活動を繰り広げる。勿論私はそうした人々が正しいとも良いとも思わないが、ある意味動物であるヒトのあるがままの姿であり、高度な脳を持つヒトだから、環境に合わせて変化を続ける姿も、またヒトならではの存在なのだと感じる。繰り返し言うが、この様な組織を肯定する意味ではないし、憧れや、カッコ良さを感じているわけでもない。何より10年ほど前は九州に住んでいて、町中を走る各都道府県からの警察の応援部隊に驚くほど、荒れた状況で暮らしていた。知り合いの中にも銃撃を間近で体験した人も居たし、よく通っていた商店街にある飲み屋が銃撃された事もある。そんなニュースを見るたびに何時も心の片隅で、撃たれたら嫌だなと漠然とした恐怖を感じながら生活を送った時期がある。勿論、私自身がそうした危険な組織に狙われる様な人物でもなく、性格的にも争いを積極的に避けていながらも。それでも近くで銃撃があれば、巻き込まれる可能性はあるし、運悪く飲んでる最中に飲み屋ごと爆破される危険が全く無いとは言い切れない。
幸いにもこうして本書を手に取り、読み終わってみると、改めて暴力団組織の凄まじさを感じる。仲間が殺されれば、やり返すのは普通だし、前述した様な縄張り争いを発端とした殺人などは、幾らでも存在している。なぜ人がそうした組織に集まり、集団を形成する組員となるのか。命の危険がありながらも組に入っていく人がいる。そして組長や仲間のために、自分の命や人生を差し出す。任侠映画ならば、スカッとするが、ニュースで流れる逮捕のシーンを見ていると、何故自分を犠牲にして組に貢献するのか、どの様な気持ちで犯罪を犯したのかは気になって仕方ない。恐らく筆者もそれを確かめるべく、こうした書籍を記し、真実に近づこうとしたのでは無いだろうか。
謎だらけの世界を、その中心たる抗争を見て行く事で、少しでもその心理に近づけたら、本書の価値はあるのではないか。命の奪い合い、その瞬間のために人生を賭け続ける人々。そして今なお塀の中で罪を償う人々。様々な理由と想いがあるとは思うが、それに近づく一つの方法、ヒントが本書にあると感じる。

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2024年08月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ヤクザの『抗争』

山一抗争に関する話がやはり興味深い。

 四代目山口組組長 竹中正久
 四代目山口組若頭 中山勝正
 一和会副会長兼理事長 加茂田重正
 一和会会長 山本広

 加茂田重正が山口組に残ってらどうなってたかな?

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2017年11月16日

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