あらすじ
東北地方の旧家・不村家では数代に一度、特別な子供が誕生する。人智を超えた才知を授かることから繁栄の兆しと崇められる一方、「あわこさま」と呼ばれる怪異があると畏れられてもいた。異形の奉公人たちの手で守られる平穏な日常が闖入者により瓦解したとき、人々は思い出す。――あわこさまは、不村に仇なすものを赦さない、と。「水憑き」一族の栄枯盛衰を描く、危険すぎるホラーミステリ。(解説・朝宮運河)
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
――東北地方の旧家・不村家では数代に一度、特別な子供が誕生する。
――奇妙なことに、不村家の奉公人は、すべて異形の者だった。
プロローグの舞台は1898年春。
奇譚の定番に思える始まりだけれど。
その後のエピソードの舞台は、
1978年夏、
1977年春、
1978年秋、
1998年春、
2032年初夏、
20**年春、と続く。
地表をコンクリートで覆って、
片手に端末を持って過ごすようになっても、
今は常に過去の上に成り立っている。
確かにあった、業の物語。
Posted by ブクログ
登場人物は誰も彼も、邪悪の権化とまでは言えないにしても、善人とは言い難い手合ばかり。そうした彼らが織りなすエピソードもグロテスクだったり、おぞましかったり。にも関わらず、このお話を端的に形容するならハートウォーミング系になるだろう。そういう意味ではほんとに変な話。グロ耐性があるならぜひ。
Posted by ブクログ
恐ろしくも妖しい幻想的な世界観。旧家に代々とり憑いている水憑き「あわこさま」に身体の一部を持っていかれるのと引き換えにずば抜けた才覚を授かる当主。様々な異形のものたち。揺らめきの世界に浸ってる感覚だった。
Posted by ブクログ
東北地方の旧家・不村家では、数代に一度、特別な子供が誕生する。人知を超えた才知を授かる事から、繁栄の兆しと崇められる一方、「あわこさま」と呼ばれる怪異があると恐れられてもいた。
異形の奉公人たちの手で守られる平穏が瓦解したとき、人々は思い出す。あわこさまは不村に仇なすものを絶対に許さない、と。
異形の血脈を受け継ぎ、異形の奉公人たちに囲まれ暮らす東北地方の旧家・不村家。「あわこさま」と呼ばれる正体不明の存在が憑く、「水憑き」の一族の、100年以上の歴史を様々な人物の視点から追う年代記です。
怪しく、恐ろしく、悍ましく、でもどこか美しく悲しい。
全7章で構成されており、ある語り手で不完全だった部分が他の語り手の情報で補完されたりはしますが、どちらかと言えば余白が多いというか、語り手の心情部分以外は解釈の余地の多いお話しかと思いました。
特に、特定人物への愛や執着の重い複数名の登場人物は、その感情を抱くに至った過程が気になる。好きだから好き、でも別にいいんですけどね、それもまた愛なので。
扱っているテーマ上、割とショッキングなシーンも多いですが、身体的・精神的に欠損や不自由を抱えた人々、家や憑き物筋という柵に捕らわれた人々の悲哀と決意、様々な形の愛情を感じる事の出来る一冊です。
個人的に好きなキャラクターは詠子とコウ。浮世離れしていつつも、人間らしい弱さが好きです。